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フレイヤ公爵邸

セインフォード殿下の手を取り馬車を下りる。


これでエスコートは終りだと思ったけど、セインフォード殿下は私の手を取ったまま屋敷の玄関に向かって歩き出してしまったので、その手を振り払う訳にもいか無いので、私は、そのまま歩くしか無く心の中では『ドキドキ』が未だに収まらない。


そして玄関に辿り着けば、沢山の使用人と壮年の夫婦が私達を出迎えてくれた。


ここで漸く、私はセインフォード殿下のエスコートから解放される。


「マリア紹介するね。こちらはフレイア公爵夫妻だ。フレイヤ公爵は、私の叔父でね。幼い頃から可愛がって貰っている。今、私はちょっと体調が悪くて、フレイア公爵領で静養させて貰ってるんだ」


セインフォード殿下に紹介されて私は公爵夫妻に挨拶をする。


「初めまして、私はマリアと申します。この子は聖獣のノアールです。今日は、お世話になります。よろしくお願いします」 


私はそう挨拶をしてから、ノアールを抱っこて紹介をする。

  

ノアールは大人しく、私に抱っこされたまま挨拶をする。


「よろしくお願いしますわね」


そうして挨拶が終れば公爵夫妻は私を暖かく歓迎してくれた。


「マリア嬢の事は先程、知らせに来た騎士から聞いている。セインを助けてくれてありがとう。礼を言う。セインの命の恩人でもあるし、いつまでもこの屋敷で我が家と思って滞在くれて構わないよ」


「ええ。いつまで滞在して下さいな」


そう言ってくださるが、この城を自分の家と思い暮らすのは、はっきり言って私には無理がある。


だから私はお礼だけ言って話を流す事にした。


「ありがとうございます」


今日は本来なら討伐隊の隊長さんが手配してくれた宿にに泊まる予定だが、彼らは、私と私の荷物を公爵家の使用人に預けて馬車と共に既に引き上げてしまった。


街に戻ったら手配してくれた宿はキャセルの手続きがされているに違いない。


私1人では残念ながら手持ちのお金も少なく、宿に泊まる事も家に帰る事も出来ない。


私は覚悟を決めてセインフォード殿下の気が済むまで公爵家の、お世話になる事にした。


そしてセインフォード殿下や公爵夫妻と分かれてメイドさんが客室(ゲストルーム)に案内してくれる。


「マリア様のお世話をさせて頂きます。カロリーナと申します」


「ありがとうございます。よろしくお願いします。カロリーナさん」


「私の事はカロリーナとお呼び下さい」


そう指摘が有ったので、私は改めて言い直した。


一応、私はセインフォード殿下や公爵夫妻のお客様(ゲスト)という扱いだ。

主人のお客様である私が使用人に『さん』付けで呼ぶのは、きっと違和感を感じるのだと思う。


公爵邸に招かれて、緊張もすれば萎縮してしまう気持もあるが卑屈になる事は違う。

だから、私は改めて言い直した。


「分かりました。よろしくお願いしますね。カロリーナ」


そして、私の為に用意された部屋に入った。


そこはとても広くて落ち着いたブラウンの色合いの上品な家具が置かれていて、素敵な部屋だった。


「わぁ。素敵な部屋ですね。本当に私が使って良いんですか?」


「もちろんでございます。お気に召して頂いて良かったです。ではマリア様。先に旅のお疲れを癒されては以下がでしょう?入浴の準備が出来てございます」


 

「本当ですか?ありがとうございます」


森の中を駆け回って汗もかいたし、馬車の移動も疲れたので入浴が出来るのはありがたい。


私は抱っこしたままのノアールに声を掛けた。


「ノアールはどうするの?私と一緒にお風呂入る?」


「あたくし疲れましたの。だからちょっと足を拭いて頂いて、お部屋でゆっくりさせて頂きますわ。あたしの事は気にせず。マリアもゆっくりお湯に浸かってらして…」


(今日は色々あったから、ノアールも疲れたのね)


「分かったわ。ノアール」


そうしてノアールの事は他のメイドさんに任せて、私は部屋に備えられたバスルームへとやってきた。


(客室に専用のバスルームまであるなんて流石は公爵様の屋敷だわ)


私は脱衣室に置かれたドレッサーの鏡に写った姿を見て驚いた。


森の中を歩いた為か髪には枯れ葉や小さな木の枝が付いていたり、スカートには泥が跳ねて汚れが付いていた。


はっきり言って淑女にあるまじき姿だった。


(これは先に入浴を勧められる分けよね…)


セインフォード殿下や公爵夫妻の前で、とんでも無い姿を晒してしまって、今更ながら恥ずかしい。


お風呂に入ってさっぱりして鞄の中に持参して来たドレスをカロリーナに手伝って貰いながら着替えた。


このドレスは、私が、この体に入れ替わった時に最初に着たドレスで、現在、私が持っているドレスの中で一番上等なドレスだ。


最初は他の派手なドレスと一緒に売ってしまう予定だったが、ノアールが『上等なドレスを一着は持って置いた方が良いですわよ。貴女もレディの端くれなんですから」と忠告されて考え直し売らなかったドレスだ。



あの時ノアールの忠告は本当に助かったと思う。


ドレスの支度が終れば、私は大きな鏡の付いたドレッサーの前に案内される。


「マリア様。髪型はどうなさいますか?何かご希望はありますか?」


そう聞かれたが、私には三つ編みヘアしか分からない。


でも、あの、ちょッと、いびつな三つ編みのヘアスタイルで、セインフォード殿下や公爵夫妻の前に出るのは恥ずかしいと思い、カロリーナにお任せする事にした。


「えっと。私、その流行りのヘアスタイルとか良く分からないので、カロリーナに任せしてもいいかしら?」


「もちろんです。お任せぐださい。最近の流行りですと、ハーフアップのヘアスタイルが人気ですよ」


そう勧めてくれたので、私はハーフアップのヘアスタイルをお願いした。


「では、それでお願いします」


そう言うと、カロリーナは『お任せ下ださい』と返事をして、私の髪を梳きだした。


そして手早く綺麗にハーフアップに結い、仕上げにドレスと同じ淡いクリーム色のリボンを後ろで結んでくれた。


(流石は公爵家に使えるメイドさん凄い腕前だわ)


「いかがですか?」


「とても可愛いです。ありがとう」


私は笑顔でお礼を述べる。


その後、部屋で少し休んでからカロリーナに案内されて、セインフォード殿下や公爵夫妻が待っている食堂へと向う。


セインフォード殿下の話では、事前に私の事を公爵夫妻に説明するという事になっていた。


私は確かにアルティミの聖女だったが、本当に体と魂が入れ変わったなんて話を信じてもらえるか心配だ。


下手をしたら詐欺師、扱いされて追い出されるかも知れない。


私は少し不安を抱えながら晩餐の部屋に向かった。

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