旅立ち
私は、討伐隊の皆さんに頼まれてノアールと一緒にフレイヤ公爵の領事館がある街に行く事になった。
目的は、病に倒れて領事館で静養中の第二王子セインフォード殿下を治療するため。
数日の宿泊にも耐えられる位の荷物を纏めて朝、家を出た。
約束した待ち合わせの場所に行くと討伐隊の騎士が2人が馬車を用意して待っていてくれた。
私は彼等に笑顔で挨拶をする。
「おはようございます」
彼らも笑顔で答えてくれる。
「おはようございます。朝、早くからご足労頂きありがとうございます。街までは馬車の移動です。街まで、少し時間が掛かかるので疲れたたら、休みますから御者の者に声を掛けてください」
「はい。分かりました。よろしくお願いします」
私は馬車に乗り、騎士の2人は馬に乗る。
こうして私は旅だった。
『黒い森』は、三国に又がり、とても広大な面積でフレイヤ公爵領は、森の中の国境までが領内なので、自然豊かな領地の様だ。
街に繋がる街道は、黒い森、沿いに作られていた。
かなり進んだ所で、そして『黒い森』から強い瘴気を、私は感じた。
このまま放置して通れば、私達が魔獣に襲われる可能性もあるし、今後、この道を通る人にも危害が及ぶかも知れない。
出来れば、その瘴気の状況を確認して場合によっては、魔獣の討伐をした方が良いと、考え私は御者の人に声を掛けた。
そうして馬車を止めもらう。
そして馬で左右から、着いて来てくれた討伐隊の騎士達に、私は森で感じた瘴気の事を話した。
「あの森で凄く邪気が溜まっている感じがするんです。もしかしたら近くに魔獣が居るかも知れません」
私の話を聞いた討伐隊の人達は、少し難しい表情になった。
「本当ですか?しかし我々二人では魔獣の退治は厳しい…」
アルティミでは、魔獣が居ないので、分からなかったが、魔獣の討伐は少人数では厳しいらしい。
ノアールも彼らに同意する様に口を開いた。
「そうですわね。マリアの身体強化魔術が有っても、やはり魔獣討伐は最低でも10人以上の人が居ないと危険ですわ!街に着いてから討伐隊に知らせて魔獣を退治した方が良いと思いますわ」
だけど、私はこの瘴気の強さがやはり気掛かりだ。
「う~ん。それなら私が行ってちょっと様子を見て来ます」
「は?いや!それは、しかし」
ノアールも騎士達も、私がそう言うと慌ててた。
だから、私は彼等を説得する。
「街に居る討伐隊に知らせるにしても、どんな魔獣が何匹居るとか詳しい情報があった方が良いますし…」
「それは、そうですが…」
「大丈夫です。私自身に魔獣が近付け無い結界や身体強化魔術を掛けますし、絶対に無理はしませんから。ちょっと、ここで皆さん待って居て下さい」
私はそう言うと、自分自身に結界や身体強化魔術を掛けた。
「はぁ~。マリア貴女1人では心配です。仕方ありません。あたくしも、ご一緒致しますわ」
そう言って、ノアールは、私の肩と飛び乗った。
こうしてノアールと一緒に瘴気の発生している森へと向かった。
身体強化魔術のお陰で足の速さは、普通の何倍にもなり、そう時間が掛からずに、森の中への瘴気が漂う場所に辿り着いた。
すると魔獣の唸り声が聞こえた。
恐る恐る近づいて様子を確かめると魔獣に襲われて倒れている人の姿が見えた。
その事に気が付いた、私は、つい大きな声を出してしまった。
「大変、人が襲われているわ!!」
すると、魔獣が動きを止めて、私達の方を見た。
その魔獣の禍々しい姿に私の足はすくむ…。
「バジリスクですわ!!!マリア。あれは、とても危険な魔獣ですわ!」
そして私達に魔獣は、襲い掛かって来た!
だけど事前に張った結界のお陰で魔獣は、私達に近づけない。
そして急いで倒れて居る人にも私は結界を張り、私はその人に近付き様子を確かめる。
倒れていた人は男の人で背中にかなりの深手を怪我わ負ってい事が分かった。
(直ぐに治療しないと命に関わるわね)
私は、そう判断して回復魔術を掛けた。
『回復』
結界の外では、魔獣が結界を破ろうと絶えず攻撃している。
ノアールの言う通り、かなり凶暴な魔獣のようだ。
結界が敗れるのが、先か、この人の治療が終わるのが先きか、そんな不安を抱えながら、私は、回復魔法を掛け続けた。
そして、無事に怪我が治り倒れて居た人が意識を取り戻した。
「うっ…。私は?」
「良かった。もう大丈夫です!」
「君が助けるてくれたのか?」
「はい」
「ありがとう。助かった」
そう笑顔でお礼を言われたが、直ぐに険しい表情になった。
「はっ!そうだ。魔獣が居るんだ!私が魔獣を引きつけてるから、君は、その間に早く逃げろ!」
そう言って、手に持っていた杖を使い私を背に庇う様に立ち上がった。
だから、私は彼を安心させる様に言う。
「私なら大丈夫です。今の、この魔獣を追い払いますから…」
「何を言ってる?!」
私の言動に不信を持ったみたいなので、私は、実際に魔術を見せた方が早いと思い、光攻撃魔術を使う。
『悪しきものを払いまえ。フレア!』
光攻撃魔術は、弱いから魔獣を倒す事は出来なかったが、それでも追い払う事は出来る。
「これは何の魔術だ?!」
こうして魔獣を追い払う事が出来た。
「流石、マリアですわ」
「君、凄いな。バジリスクに襲われ背中に深手を負った時は終わったと死を覚悟したてたけど…。それに君が掛けてくれた治療魔術にはとても驚いた!私も治療魔術を受けた事はあるが、治療速度や回復力が全然違う。これほど短時間で、あの怪我が跡形もなく治るなんて…。正直、信じられない」
「いえ。そんな事は!貴方が無事で良かった」
だけど杖を使い彼が足を引き摺りながら歩くのを見て、私は愕然とした。
「あ!すみません!私の回復で足を完全に治せなかった見たいで…」
私が最も得意とするヒールで、初めて人を治せなかった。
私はに、それがショックだった。
「ああ。これはバジリスクにやられた怪我じゃ無い。元々、私は足が悪いんだ。だから君が気にしなくても良いんだよ。それよりも、この森を早く離れた方が良い。ここは魔獣が出る危険な森なんだ」
「あの貴方は?」
「私は…。この足だからね。後からゆっくり行くつもりだ」
そう答えたけど、こんな危険な場所で彼を1人残して去るのは、とても心配だ。
「あの、失礼ですが、どこから来たんですか?」
「ああ。私はフレイア公爵領の街から」
「それなら私達と向う先は同じですね。街まで送ります。私と一緒に行きましょう」
「さっき言ったけど、私の、この足では時間が…。だから君は先に行ってくれ」
「それなら大丈夫です。私が強化魔術で、馬車まで、お連れします。街までは馬車でお送りしますわ」
そう言い終わってから、私は自分に再び身体強化魔術を掛ける。
「ちょっと失礼しますね」
そう言って、私は彼を抱きかた。
「え?は?ちょ!!!」
そして私は馬車まで彼を抱えて走るのだった。
身体強化魔術のお陰であっという間に馬車までたどり着いた。
「いやー。君みたいな、か弱い女性に抱き抱えられた時は、とてもびっくりしたよ!君の魔術は驚く事ばかりだ」
「ふふふ。足を早くする魔術と体の筋肉を増強させる魔術なんですよ」
私がそう話していると、騎士2人が慌てた様子で、こちらに駆け寄ってきた。
「セ、セインフォード殿下!!」
そう言うと、皆が跪いて騎士の礼をとる。
騎士達の言葉に私は驚いた。
「え??で、殿下?!」
私が、困惑していると、セインフォード殿下は、笑顔で名乗る。
「名乗るのが遅れて失礼した。私は、セインフォード クリーヴァ。このクリーヴァの第二王子だ」
「第二王子殿下とは、知らず大変、無礼を致しました!申し訳ありません!」
そう、私は慌てて謝罪するのだった。




