黒魔術師と闇契約
私の名前はプロディ。
占い師と云うのは世を忍ぶ借りの姿。
実際の私は帝国時代に人を騙し大金を稼いだ詐欺師。
生前に地底の魔王と契約して、死後に『地底の魔王』の従僕となりシオン聖国の神官や審問官からは『黒魔術師』と呼ばれる存在。。
『地底の魔王』ヴラド様は、人間達の負の感情や生命力を材料に魔獣を作る。
私は、その材料を集める為に存在している。
私の最初の獲物は、ロザリアお嬢様だった。
ロザリアお嬢様は、マーリン・ピラカンザの生まれ変わりで、ヴラド様は優秀な人間が、お好きだ。
だからマーリンも気に入っていた。
マーリンの研究に力を貸す変わりに残りの寿命を対価に貰い死後は従僕にする予定だった。
遺体は葬儀が終わるまでは神殿に置かれ、その神殿は『聖石』によって結界が張られてヴラド様と言えども用意に手が出せない。
だから、ヴラド様がマリーンを従僕に出来るのは墓に埋葬後だった。
だが神殿の神官達は秘密裏にマーリンの遺体を埋葬前にすり替えマーリンの遺体は火葬してしまった。
その為、ヴラド様の望みは潰えた。
それから150年。
マーリン・ピラカンザはロザリアお嬢様に生まれ変わった。
そのロザリアお嬢様はイザベルお嬢様や伯爵夫人に虐げられ、私から見ても未来に希望が持てる様な環境では無かった。
そんなロザリアお嬢様を巧み言い含め洗脳し利用するのは簡単だった。
そして、こちらの思惑通り、ロザリアお嬢様はヴラド様の力を借りて黒魔術をお起こなった。
ロザリアお嬢様は、誰からも愛され大切にされる特別な人間になる事を望んだ。
だからアルティミの聖女と自分の魂を交換したのだ。
そして、それはヴラド様に取っても一石二鳥だった。
聖女にクリーガァの王子の命を助けさせ、シオン聖国の力が及ばないアルティミ王国で、ロザリアお嬢様は死を迎える。
そうすれば、ロザリアお嬢様の遺体は普通に埋葬され、今度こそ従僕として蘇らせられらる。
でも、そこでイレギュラーな事が起きたとすれば聖獣の猫がロザリアお嬢様の変わりに、魔力を差し出した事だ。
そのせいで本来は、ロザリアお嬢様とヴラド様の契約が、ヴラド様と聖獣の猫の契約に変化した。
ヴラド様は気まぐれな方だから聖獣の魔力が手に入るならと喜んで契約の変更に応じた。
そして聖獣の魔力を材料に生み出したのが異常な生命力を持った『ガルム』だった。
その『ガルム』と、クリーガァの王子の闘いを、ご覧になってヴラド様は大いに喜んだ。
そしてヴラド様は新たな強力な魔獣を作るべく、私に材料の仕入れを命じた。
そこで私が目付けたのは、イザベル・ピラカンザだ。
ロザリアお嬢様に接触した時から、イザベルお嬢様の事は知っていた。
そして、その性格は短絡的で、わがままな性格だということも。
ヴラド様との契約を結び易い人間は二種類いる。
それはプライドが高く強欲な人間と、虐げられて追い詰められた人間だ。
前者はイザベルお嬢様、後者はロザリアお嬢様だ。
ロザリアお嬢様の時は同級生の女学生に化けて、親身に悩みを聞き、そして心が軽くなるハーブティーだと言って洗脳効果のあるお茶を飲ま続け契約者に仕立てた。
今回の獲物であるイザベルお嬢様には占い師として近づき洗脳効果のある、お香を焚き続けた。
そして、今日、イザベルお嬢様の精神状態は、いい具合に怒りに満ちて冷静な判断が出来なくなっている。
ヴラド様との契約を結ばせるチャンスがやって来た。
私はロザリアお嬢様の占い結果を伝えてから、続けてイザベルお嬢様に言う。
「お二人の事も、色々と良くない結果が出てますが、イザベルお嬢様、貴女も、このままロザリアお嬢様とセインフォード殿下が結ばれればお嬢様の将来も惨めで悲惨な事になります」
「なんですって?!それはどう言う事なの?プロディ」
「はい。ロザリアお嬢様には被害妄想があり、イザベルお嬢様に酷く虐げられたと思っています。この間の歌劇場での無視は、イザベルお嬢様への復讐のはじまりに過ぎ無いのです。最終的な目的は、イザベルお嬢様の社交会での立場を無くて、社交会から追放する事なのです。
私には未来が見えます。セインフォード殿下と結婚した途端に、ロザリアお嬢様は、その本性を現します。手に入れた権力を使って貴女に有りとあらゆる嫌がらせをして復讐をしてきます。そして社交会を追われた貴女は、不幸なまま短い人生を閉じる事になる」
「そんなの嫌よ!どうすればいいの?」
「簡単です。ロザリアお嬢様が本格的に動きだす前にロザリアお嬢様を、この世から消すのです。
そして悲しむセインフォード殿下を、貴女が優しく慰める。そうすれば、セインフォード殿下も優しい貴女に心を寄せます。
そうして貴女は不幸を回避して幸せな人生が送れます。
この私がイザベルお嬢様にお力をお貸しします。
さぁ、この『魔道具』を手に取り使えば、お嬢様の望みが叶いますよ」
そう言って、私はヴラド様が作られた『闇の魔道具』をイザベルお嬢様に差し出す。
「そんなロザリアを殺すなんて…。それに、これは、まさか『闇の魔道具』?!」
イザベルお嬢様には、まだ少し理性が残っていた様で、私が言った事に戸惑い、『闇の魔道具』を手に取る事を躊躇った。
だけど、お嬢様の側にソッと香炉を近づけて香りを嗅がせ、もう一押しすれば、イザベルお嬢様は落ちるだろう。
「ロザリアお嬢様なんかよりも、ずっと美しい貴女こそセインフォード殿下の婚約者に相応しい。
貴女は高貴な身分を持つに相応しい選ばれた特別な人なのです。
ご決断下さい。私と私の主が貴女の力になります。そうすれば貴女には誰もが羨まむ輝かしい人生が待っています」
私が、そう囁くとイザベルお嬢様は『闇の魔道具』を手に取って呟く。
「そうよね。私は特別な存在なのよ…。私こそセインフォード殿下の婚約者に相応しいわ」
こうして新たな闇の契約者が誕生した。




