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体を入れ替えられて聖女では無くなったけど何も問題ありません  作者: アイ氏
2章シオン聖国の異端審問官

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つかの間の平穏

馬車の中で私は行き先を聞く。


「殿下。市街地に向かっている様ですが…。どこに行くのですか?」


「中央通公園だ。この時期は大同芸や移動式の動物園や遊園地があって賑わっているからね」


「まぁ。そうなんでね。それは、とても楽しみです」



「それよりもマリア。公園では、僕の事はセイと呼んで欲しい。間違っても殿下と呼ばないように、ね?」


「あ!そうですよね。申し訳ありません」


そう言われて私は改めてお忍びで遊びに来ていることを思い出した。


何気に、セインフォード殿下は一人称も『私』から『僕』に変えて、別人の様に見せていて、お忍びで出歩くのに慣れている。


殿下が名前を変えたなら、私も変えた方が良いかも知れない。


そう思い私は殿下に聞いた。


「あの私の名前はどうしましょうか?」


「う〜ん。そうだな。マリアの名前はマリーにしよう」


「マリーですか?余り元の名前と変わらない気がしますが…。それで大丈夫なのでしょうか?」


「問題ないさ。それに余りにも本名からかけ放れていると、緊急時に慌てて本名を言ってしまったら大変だ」


「あ、確かにそうですね」



そして話いる内に公園への近くで馬車が止まった。


この中央通りは徒歩でのみ入る事が許される場所なので、辻馬車は中央の通りまで行く事が出来なかった。


私は殿下と2人で手を繋いで公園まで歩く。


そして公園に入って最初に目に入ったのは珍しい乗り物の数々だった。


私は初め見る乗り物を見て尋ねる。


「まぁ!セイ。あれはなんですか?」


「メリーゴーランド。それからあっちにはジェットコースターもある。この2つが遊園地の目玉乗り物だね。マリーこれらに乗ったことは?」


「いいえ。ありません。私、遊園地に行った事がありませんもの」


「良し。それなら、早速、乗って見ようか?」


「はい」


そうして私達は乗り物に乗る為に並んだ。


メリーゴールドは、まだ良かった。


問題はジェットコースターだった。


木製のトロッコが猛スピードで二度、三度と一気に駆け上がったり、駆け下りたしたので、私は少し気持ちが悪くなってしまった。


ジェットコースターを降りた時には足元がフラフラの状態だった。


「ううっ」


私の体を支えながら殿下が心配そうに聞いてくる。


「マリー。大丈夫か?」


「どうも猛スピードで下に落ちたり上がったりするのがダメだったみたいです。びっくりし過ぎて足がフラフラですわ」


「そこのベンチに座って休もう」


「…はい」


そうに言って優しく私をベンチまで案内してくれた。


「僕は飲み物を買ってくる。マリーは、ここで座って休んでいて」


そう言って私の背中に着ていたジャケットを掛けてから飲み物を買いに行ってくれた。



殿下が買って来てくれたのはレモンスカッシュで、炭酸と甘酸っぱい清涼感のお陰で気分も少し回復した。


「ありがとうございます。さっぱりして、とても美味しいです」


「マリーがジェットコースター弱いとは思わなかった。遊園地は終わりにして、少し休んだら露店や動物園の方を見に行ってみようか?」


「はい。もう乗り物は十分楽しみました」


そうして、少し休んでから私達は再び歩きだす。


動物園には主に大人しい草食動物達がいた。


動物園には、専用のエサが売られていて、それを購入して、動物達との触れ合いが楽しめた。


そして更に公園の奥に進めば大同芸や雑貨、食べ物が売っている露店が沢山ある。


どれもただ見ているだけで十分楽しめた。


そして私は途中で射的をやっている店に飾れていた景品が気になった。


それは、手乗りサイズの真っ黒な可愛い猫のぬいぐるみだった。


蝶ネクタイの首輪をしていて、ちょっと凛々しい顔をしていた。


私は、その、ぬいぐるみが欲しくなって立ち止まった。


私が立ち止まったので、殿下も気になったのか尋ねくる。


「マリー。どうした?」


「はい。あの黒猫の、ぬいぐるみが可愛いなって思って。ノアールのお土産したかったのですが、どうやら、おもちゃの銃で、ぬいぐるみを落とさないと手に入らない様なので残念です」


「成程。それなら僕が射的に挑戦してみよう」


「え?セイは射的の経験があるんですか?」


「流石におもちゃの銃を撃った経験は無いけど、本物の銃ならあるよ。それに近年、開発された魔力を弾丸に変えて撃つ魔弾銃(まだんじゅう)が開発されて、いずれは、この魔弾銃が魔獣討伐の主力になると僕は思っている。だから最近では、射撃にも力を入れて討伐隊も訓練に取り組んでいる」


「そうだったんですか。でしたらお願いします」


そうして殿下は露店の店主にお金を払いおもちゃ銃と3発のコルク玉を受け取る。


コルクを銃に詰めて構え、腕を伸ばしなるべく至近距離で玉を発射すれば見事に黒猫の頭に当たり、ぬいぐるみはバランスを崩して下に落ちた。


「わぁ。ありがとうございます」


「マリーに喜んで貰えて良かった。玉がまだ2発ある他にも撃ち落とそう」


そう言って、更に2個のぬいぐるみを落とした。


殿下は、簡単にぬいぐるみが取れた事に気を良くしたのか再び玉を買おうとする。


このまま射的を続ければ、沢山のおもちゃを持ち帰る事になるし、露店の店主も『お客さんもう勘弁してください』泣きそうな顔になっているので、私は殿下を止めた。


「セイ。もう欲しかったぬいぐるみが手に入ったので十分です。それに、そろそろお茶の時間ですわ。お茶にいきませんか?」


「マリーがそう言うなら。ここから少し歩くけど、ケーキの美味しいカフェがあるんだ」


「わぁ。本当ですか?」


「ああ」


そうして、殿下の案内で素敵なカフェでお茶とケーキを楽しんだ頃には日が傾き初めていた。


お茶の後に私達は再び辻馬車に乗って公爵邸へ帰る。


公爵邸の裏口に着くと殿下が話し掛けてくる。


「今日は楽しんでもらえたかな?」


「はい」


「良かった。次は観劇に誘いたいんだけど、誘いを受けて貰えるだろうか?」


「勿論です。楽しみです」


そうして私達は何事もなく無事に公爵邸に帰宅した。


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