再び王都へ
結局、私が『聖水晶』の『聖女』だった事や、ノアールが魔王と取り引きした事まで、全部シオン聖国にバレてしまった…。
でも、私は希望通り、このままクリーガァで自由に暮らせる様なので安心した。
そして、ラインベルト審問官は『黒い森』の家で黒魔術の捜索の協力を要請して来た。
あの家には、沢山のマリーンさんの残した遺品があり、黒魔術に関連している可能性があるからだ。
150年前も、シオン聖国の審問官はマリーンさんの死後、魔王の取り引きの可能性を感じ、捜査協力の依頼をクリーガァに打診したけど、魔王との取り引きの証明が出来なくて、結局捜査は出来なかったと聞かされた。
今回の事で魔王との取り引きが明らかになったので、今度こそは、あの家で、しっかりと魔道具や黒魔術関連の書物の押収をしたいと話があった。
だけど、それは私一人では決められない。
「えっと、私は捜査に協力しても良いと思うのだけど…。殿下とノアールは、どう思いますか?」
だから2人に相談する。
「今後、ピラカンザ家から、再び魔王と関わる人間が出ても色々と問題になるだろう。魔王と関わりを絶つ為にも調査に協力した方がいいと私は思う」
「マリアが協力したいなら、あたくしは構いませんわ」
2人の答えを聞いて、私は『黒い森』の家の鍵をラインベルト審問官に渡した。
そんなやり取りをしている内に私と殿下の左手の甲に現れた紋章とノアールの額の紋章は、いつの間にか消えていた。
これで、漸く私達は取り調べから解放されたのだった。
審問官一行は、フレイヤ公爵邸に一泊して、翌日には『黒い森』の家へと調査に向かって行った。
そして数日後、今度は私達が王都へ向かう日になった。
◇◇◇
ー王都の駅ー
私はセインフォード殿下とノアールやカロリーナ、他、公爵家の使用人を数人伴って王都にやって来た。
セインフォード殿下は、このまま王宮に戻るので、王都の駅で分かれ、私とノアールとカロリーナで王都の公爵邸へと向かった。
これから王都では本格的な社交のシーズンに入る。
それに合わせて、私のフレイヤ公爵家の養女として社交デビューや、その後は、セインフォード殿下との婚約発表が行われる事になっている。
(これから忙しくなりそうね)
フレイヤ公爵邸に着けば前回、王都に来た時と同じ部屋に案内された。
だけど前回とは違い寝室に隣接する衣装部屋には沢山のアクセサリーやドレスで溢れていたので、私はそれを見て、とても驚いた。
「…カロリーナ。これは一体どうしたのかしら?」
「ふふ。マリア様。全てセインフォード殿下からの贈り物ですわ」
「え??これ全部!?」
「はい」
「でも私、セインフォード殿下からは何も聞いてないわ…」
「まぁ。それはマリア様を驚かせたかったからですわ。これからマリア様は、フレイヤ公爵令嬢。そしていずれは、セインフォード殿下と、ご結婚されてフレイヤ公爵夫人になられるのですから、色々とドレスやアクセサリーが必要になります。折角の殿下からの贈り物ですから、ここは笑顔で受け取って置けば良いと思います」
「で、でも…」
「あたくしも、それが良いと思いますわ。もしお礼をって考えてるなら、マリアの手作りのお菓子をプレゼントしたらいかがです?殿下は、貴女が作ったお菓子が大好きですものね。きっと喜びますわよ。それにマリアも殿下にお料理を作って差し上げのが楽しって、この間審問官にも言ってましたし…」
そう言ってノアールは冗談を言ってくるし、カロリーナもノアールの意見に乗って楽しんでいる。
「マリア様。それでしたら、いっそ、マリア様のお菓子で殿下と2人きりのティータイムも良いと思いますわ。私、心を込めて精一杯準備をさせて頂きます」
「カロリーナ。それは名案ですわね!」
「もう2人共//」
結局、何を言っても2人に誂われるだけなのを悟った、私は話を変える事にした。
「ところで、カロリーナ。謁見式で着るドレスは大丈夫かしら?」
「はい。ただいまお持ちいたします」
そうして、カロリーナは沢山のドレスの中から一着とドレスを出してくれた。
「こちらが謁見式で着るドレスですわ」
帝国時代から社交デビューの日に着るドレスは白を基調とした淡い色のドレスと決まっている。
現在、クリーガァでは華やかな刺繍を施したリボンやレースに宝石やビーズを縫い付けたりするドレスが令嬢達に人気たけど、私は、コテコテに飾りを付けたドレスは苦手なので、デザイナーさんと相談して繊細なレースと宝石を飾る様な部分には、リボンで作った白バラを付けた比較的シンプルなデザインのドレスを仕立てて貰った。
「素敵。謁見式が楽しみだわ」
ちょっと流行とは違うけど、素敵なドレスの仕上がりに私は安心した。




