神との契約者
『聖石』に触れた途端に、私の左手の甲に紋章が現れた。
あり得ない事象に正直驚いた。
だが現れたのは『黒百合』では無く『樹木』の紋章だった。
その紋章には見覚えがある。
私達クリーガァ王家の始祖である初代皇帝に青い瞳と強魔力を与えこの世界を治める様に命じた創世の神の紋章『世界樹』だった。
「何故、私の手に創世の神の紋章が…?」
私の戸惑う姿を見て審問官は冷静に答えた。
「殿下は、創生の神との契約を結んだ初代皇帝の直系の子孫だからではありませんか?失礼ながら、殿下の皇帝の青瞳は、直系の子孫のみに現れる特徴と聞いております。つまり神との契約者のお一人と言う事です。この聖石は『地底の魔王』との契約者と説明しましたが、実際には『神との契約者』のに反応するのです」
「なるほど」
「まぁ。そうだったんですね」
その話を聞いてマリアも安心したのだろう。
ようやく笑顔を浮かべた。
「それでは次はマリア公女。貴女にもお願いします」
「はい」
次に審問官はマリアにも『聖石』を触れる様に勧める。
だが、ここで私は一つの推測が頭に浮かんだ。
創世の神と王家との間に、未だに契約が存在しているなら、マリアは『聖水晶』に選ばれた『聖女』だ。
もしかしたら『聖水晶』の主になると同時に光の女神アルティミとの契約状態にあるのでは無いだろか?
だから、マリアが『聖石』に触れれば左手の甲には光の女神アルティミの紋章である『白百合』が浮かぶかも知れない。
この世界で女神アルティミと契約が出来る者が居るとしたら、それは『聖水晶』に選ばれた『聖女』しかいないからだ。
『聖石』に触れれば必然的にマリアの左手の甲には紋章が浮かび『聖女』である事がバレてしまう。
だから私は慌ててマリアを止めようとした。
「マリア。待て『聖石』に触れては…」
だが私の行動で審問官は、マリアが『地底の魔王』との関わっていると思ったのだろう。
マリアの左手を掴み強引に『聖石』に触れさせた。
そして私の予想通りマリアの左手の甲に『白百合』の紋章が現れた。
◇◇◇◇
私の左手に百合の紋章が浮かんでしまった…。
私は『地底の魔王』と取り引きはして無い筈なのに…。
契約者である、ロザリアさんの体だから紋章が出てしまったのか?
それとも魔王城に行ってしまった時に『魔王』は取り引き無しで、セインフォード殿下の病を治す方法を教えてくれたけど、それは実は嘘で騙されて契約してしまったのか…。
心当たりがあり過ぎて私は狼狽した。
そして頭に浮かんだのは昔アルティミで見た歴史の本の聖女の処刑の挿絵だ。
鎖に繋がれ馬に引きずられ、そして公衆の面前で火あぶり!!
その場面が走馬灯の様に頭の中でグルグル浮かぶ。
もう百合の紋章が手に現れた以上、言い訳も出来ない。
せめて、セインフォード殿下だけでも巻き込まない様にしないと…。
私は、そう思い口を開く。
「あ、あの殿下は何にも関係ないの!火あぶりにするなら私だけを…」
そう言った時、突然ノアールの声が響いた。
どうやら、私達を心配して隠れて様子を伺っていた見たい。
「はぁー。マリア、ご安心なさい。アルティミは分かりませんが、クリーガァもシオン聖国も確か極刑は人道的観点から今は絞首刑一本の筈です」
だけど、ノアールの言っている事は全然フォローになって無かった。
「こ、絞首刑?!」
「それにマリア。貴女は被害者です。例えシオン聖国の審問官と言えど被害者を捕まえるなんて許されません。誤認もいいとこです。魔王と取り引きしたのは、あたくしです。捕まえるなら、あたくしを捕まえなさい!」
そう言って、ノアールは私を庇う様に審問官の前に立つ。
「ノアール。そんなのダメよ」
そんな私達の様子を見てセインフォード殿下は落ち着く様に促す。
「ノアールもマリアも落ち着いて。マリア。君の手に浮かんでいる紋章は『黒百合』では無いから」
「え?でも私の手の甲には、百合の紋章がはっきりと…」
「その紋は『白百合』光の女神アルティミの紋章だろう?」
そう殿下に言われて、私は改めて左手に浮かんだ紋章を確認する。
すると確かに女神アルティミの紋章の『白百合』だった。
女神アルティミと魔王は姉弟なので紋章が、よく似ているので間違えてしまったみたい。
「え?あ?!確かに『白百合』の紋章ですわ」
そして、私の手を見た審問官も、その事実に気が付いていて、私達に事情の説明を求めて来た。




