波乱の予感
私はセインフォード殿下とフレイヤ公爵邸に居た。
私の体が入れ変わってから、もうすぐ半年になる。
殿下から思いを告げられた日は、まるで夢の様で夜も良く眠れなかった。
だから、喜んでくれたノアールと色々と話して夜更かししてしまったし、次の日もドキドキして、殿下と会ったら何を話せば良いかばかり考えていた。
そんな事を考えながら朝は一緒に朝食を共にする約束をしていたので私は食堂へと向かう。
その廊下で殿下と鉢合わせしてしまった。
いつもは、どちらかと言えば殿下の方が、先に来て私を待っている事が多いので、私は、ここで会うとは思っていなかった。
取り敢えず挨拶をしようと声を出すが、緊張で上手く話せない。
「「あっ!……あの…」」
でも、それは殿下も同じだった様で2人の声が重なった。
そう思うと、私は可笑しくて少し緊張が解けた。
そして殿下の方が先に少し照れたような笑顔で挨拶をしてくれた。
「おはよう//マリア」
「おはようございます///殿下」
「ふふっ」
「わ、笑ないでくれ」
「申し訳ありません。でも緊張していたのは、私だけじゃなかったって思ったら…」
「当たり前だろう。昨日も凄くて緊張していた。君に断われたらとか嫌われたらとか色々と悪い方に考えてしまって。今日だって、その私には、女性を喜ばせる様な会話は分からないから、何を話せ良い正直分からなくて、魔獣と対峙した時よりも緊張していた」
「まぁ。そんなにですか?」
「そんなに…だ//」
そう気恥ずかしそうに言う殿下を私は可愛いと思った。
そんな話をしながら廊下を歩き食堂に入る。
食堂の窓からは暖かい陽射しを感じ日が多くなった。
もうすぐ冬が終って、そして春になれば私達は王都に戻る。
春からは社交シーズンの初まるからだ。
私は春には正式にフレイヤ公爵家の養女として社交デビューする。
クリーガァでは、15歳で成人なので本来なら15歳が社交デビューの年齢だ。
少しだけ適齢期を過ぎてしまったけど、家の経済事情等で少し遅れてデビューする令嬢もいるので、私は今年デビューする令嬢に混ざって謁見式に参加する。
その後はクリーガァの建国祭で正式にセインフォード殿下との婚約発表。
そして婚約パティーが控えている。
セインフォード殿下が、フレイヤ公爵家に婿入りして爵位を継承する。
クリーガァでもアルティミでも爵位の継承が出来るのは男子だけ。
だだし、もし跡取りとなる男子がが居ない場合は、傍系から養子を取って継承させるか、娘の場合は婿養子を迎えての爵位の継承は許される。
本来は、私の様な血の繋がりが無い人間を養女にして、婿を迎えて爵位を継承なんてあり得ない。
フレイヤ公爵と血の繋がる家門は良い顔をしないと思う。
それに私が将来公爵夫人なんて、まだ実感が湧かないし、これから社交に勉強に、きっと忙しくなる。
それでもセインフォード殿下と一緒に入られるなら私は、どんな事だって頑張れると思う。
(今直ぐには認めて貰えなくても、いつかは皆に認めて貰えれば…)
そう思うとアルティミに居た頃とは随分と変わった自分に気が付いた。
あの頃は全てを諦めて、だだ周囲の言われるままにやっていて、自分から何かをする事なんて考え無かった。
そんな事を思いながら朝食を取っていた。
その食事の最中に王都から急ぎだという手紙が殿下の元に届けられた。
そして手紙を読んだ殿下の顔色が険しいものに変わっていったので、私は不安になった。
そして手紙を読み終わると私に話掛けてきた。
「マリア。この後、少し時間を取って欲しい。大事な話がある。後ノアールにも関係がある事だから、ノアールも連れて来て欲しい。」
「分かりました」
そうして私達は食後、応接室で話す事になった。
◇◇◇
セインフォード殿下に言われた通り、私はノアールを連れて応接室へやって来た。
私やノアールがソファーに座ると先程の手紙を私に見せながらセインフォード殿下は話す。
「シオン聖国から異端審問官がクリーガァに入国した」
その手紙は王家の紋章が入っており確かに王宮から差し出された手紙だった。
そして内容はシオン聖国の審問官が、フレイヤ公爵領に数日で着く事と、その目的が書かれていた。
ただし私やノアールを疑って来た訳では無くセインフォード殿下が疑われていると書かれていた。
「この手紙ではセインフォード殿下が疑われている様ですね」
「ああ。シオン聖国側も『王家な病』に付いては把握している。今まで治る事の無かった不治の病が突然、完治したんだ。地底の魔王との取り引きを疑うのも仕方が無い」
「そうですね」
実際に地底の魔王と取り引きをしたのはノアールと、この体の持ち主のロザリアさんだ。
だから、ノアールは色々と気になるのだと思う。
自ら進んでセインフォード殿下に質問をする。
「それで、あたくし達はどうしたら良いんですの?審問官が居なくなるまで身を隠したら良いのかしら?」
「いや。シオン聖国側もクリーガァに密偵を出しているだろうから、マリア達の存在は事前に把握していると思う。ここでマリアが身隠せば、疑いの目はマリアに向く。だから私と一緒に審問官を出迎えて欲しい」
「分かりました」
「そして恐らく審問官は、私達に聖石に触れる様に言ってくる筈だ」
「聖石にですか??」
私が疑問に思っていると、セインフォード殿下は、更に詳しく説明してくれた。
「そうだ。私も聞いた話だから、本当かどうかは分からないが、地底の魔王と取り引きをした者は、聖石に触れると左手の甲に魔王の紋章である黒百合が現れるらしい。それを魔王との取り引きの証拠として審問官達は、その者を逮捕し拘束するそうだ」
「まぁ。そんな事が…」
「マリアは黒魔術の被害者だから聖石に触れても手の甲に黒百合は現れないと思う。だけどノアールは、もしかしたら体の何処かに黒百合の紋が現れかも知れない。そうなると色々と面倒だから、ノアールは絶対に聖石に触れない様にして欲しい」
「そう言うお話でしたら、あたくし注意いたしますわ」
「うん。気を付けてね。ノアール」
私も心配になりノアールに念を押したら逆にノアールは私の方を心配する。
「まぁ!あたくしはマリアの方が心配ですわよ」
「え?私?」
「貴女。絶対に嘘や演技が下手そうですもの…。それに審問官に厳しく詰問されたりしたら何でも正直に話たりしそうですわ…」
「うっ。大丈夫よ。どんなに脅されたって絶対に言わないわ!」
私が、そう答えるとセインフォード殿下も優しくフォローしてくれる。
「大丈夫だ。私も出来るだけマリアと一緒に居るから審問官と2人きりになる様な事は無い。それに、もし審問官の態度に問題があるようならクリーガァ王国として正式にシオン聖国に抗議するつもりだ。だから安心して欲しい」
「それなら安心ですわ」
「ありがとうございます。殿下」
こうして私達は数日後にやって来るシオン聖国の審問官に会う事になった。
お読み頂きありがとうございます。
『体を入れ替えられて』の物語は、これが今年最後の更新です。
また来年も頑張って更新していきたいと思いますので、来年もどうぞ、よろしくお願いします。
広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援いただけると書くモチベーションに繋がります。




