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体を入れ替えられて聖女では無くなったけど何も問題ありません  作者: アイ氏
1章『病』の王子と『冷遇』聖女

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【番外編】王家の病が治った真相は?②


問題は2つ。


それはマリア嬢にはアルティミの王太子と言う既に決まった相手がいる。


だがアルティミは、マリア嬢を冷遇し、マリア嬢もアルティミに帰国を望まない事からもマリア嬢は、アルティミの王太子に心を寄せている事は無いのだろう。

ならばセインとの結婚も承諾してくれる筈だ。


そして、もう一つの問題は帝国時代の聖女様は皇帝となる皇太子に嫁ぎ、いずれ皇后となるのが慣例だった事だ。


だからこそ第二王子である、セインとマリア嬢との結婚は父上とて簡単に許可は出来ないし、セインもマリア嬢と結婚させて欲しいとは言えないのだろう。


だが、その障害は私が王太子の座から退き、セインが王太子となり、そしていずれはクリーガァの国王となれば何の問題も無い。


だから、その問題を解決すべく私から進んで口にした。


「そう言う話しでしたら父上。私は王太子の座を退きましょう。次の王にはセインフォードを、そしてマリア嬢を妃に迎えれば良いかと思います」


私がそう言えば、セインは戸惑う。


「兄上。それでは」


「セイン。大切なのは王家の存続と国民を守る事だよ。その為なら私は喜んで身を引くさ。それにお前が王になっても、私達の関係は何も変わらない。今後は王兄としてお前を支えるつもりだ」



だが父上は難しい表情をする。


「アーク。そう簡単な話では無い。クリーガァでは男系男子の長子の存続が基本だ。帝国時代は、生まれ順では無く強力な魔力を持つ皇子が帝位を継承し、確かに帝国は多いに発展したが、同時に側近達を巻き込んで熾烈な権力争いを呼んだのだ。それ故、クリーガァ王国では法律に長子相続を定め、どんな時も長幼の序を重んじて来た。そう簡単に法を破る事は出来ぬ」


その事は、私も承知していた。


それでも私は父上の説得を試みる。


「確かに原則はそうですが、私にはセインが病になったのも、マリア嬢と出会ったのも全て神が我々に与えたチャンスに思えるのです。

帝国時代、恋仲だった、第二皇子と聖女様の仲を引き裂き、二人に無実の罪を着せて処刑した事で帝国は滅び、その子孫たる我々は神の怒りを買って王家の病が発症するようになりました。

そして神はセインとマリア嬢を引き合わせ。再び我々を試しているのかもしれません。お前達は過去の過ちを繰り返すのか?それとも反省して2人を祝福するのかと。私にはそう思えるのです。そして私は帝国の第一皇子の様に2人を引き裂き国を滅ぼす愚か者にはなりたくありません」



そう言って父上を説得したが直に答えを出せないのか考え込んで黙ったままだ。


だが、これまで黙って話を聞いていた叔父上が口を開いた。


「兄上。お忘れですか?、マリアが聖水晶の聖女様である事は秘密にすると決めた筈です。ですから今回の話はクリーガァの第二王子のセインフォードと同じくクリーガァの公爵令嬢マリアの結婚の話です。この2人ならば何も問題はないではありませんか?そして、これは私、フレイヤ公爵としてのお願いなのですが、次期フレイヤ公爵の座にはセインフォードを、マリアは私達の養女ですし、セインを婿として迎えたく思います」



確かにマリア嬢の事は秘密だった。

  

その圧倒的な奇跡の力の前に、私もすっかり失念していた。


そして、あの時マリア嬢の奇跡を目撃した者達にも口止しなければなるまい。


(口止めは、後で叔父上にも協力願おう)


そして叔父上の言葉に父上も漸く納得したのか二人の結婚を認めた。


「ああ。そうだな。確かにクライブの言う通りだ。良かろう。それならば、王太子はアークレインのまま、そして二人の結婚も認めよう。クライブ、お前の望みもな」


「良かったな。セイン」


「ありがとうございます。ですが、その、まだマリアは、私の気持ちも知らないので…。その結婚が出来るかどうか…」


そうセインから言われて、再び私達は驚いた。


「何?もしかして、まだマリア嬢に思いも告げて無いのか?」


私がそう尋ねれば、セインは困った様に答えた。


「はい。その私はいずれ死ぬと思ってましたので、そんな私が思いを告げてもマリアを困らせるだけだと思って…」


「言われてみれば確かにそうだな。ならば今からでもしっかりとマリア嬢のお前の気持ちを告げて心を掴み、そして結婚を承諾して貰いなさい」


私はそう言ってセインを励ました。



セインがマリア嬢を思っていた事は、私だけでは無く両親や弟のリーンも何となく察していたし、当然、キスをする様な関係なのだから両思いで関係が進んでいるのかと思っていたが…。どうやら違った様だ。


そうして話し合いが終わり母上も少しお元気になられた様子なので、私達は再び『転移魔術』で帰る事になった。



部屋で休んでいた母上も、父上から事情を聞かされている。


だから別れ際に母上も色々と心配になったのかセインにアドバイスをしはじめた。


「良いですか?セイン。結婚の申し込みは雰囲気が大事ですよ。美しい庭にでも誘ってからプロポーズをなさい。他にも日頃から、贈り物等をして、二人の仲を深める様に努力なさい。それから……」

と長々と続く。


「……母上。ご助言ありがとうございます。ご期待に答えられる様に善処致します…」


話を聞き終わり、セインが、そう答えるも、その様子は余りにも頼りない。


父上も、それがをもどかしく思ったのだろう。


「頼りないな。勇敢な騎士ともあろう者が、か弱いレディを相手に尻込みか?勇気を出して結婚を申し込め!これは王命だ!」


とセインを叱咤する。



いきなり結婚の申し込みは話が飛躍し過ぎると思うが、最終的には二人に結婚してもらわないと困るので、両親からの強い圧力に、セインには同情するも頑張ってもらうより他はない。



こうして私達はセインからの良い報告に期待して『転移魔術』で再び王都に戻った。

次回から新章はじまります。


よろしくお願いします。

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