エピローグ
私が目覚めたのは、2日後のお昼過ぎの頃だった。
私は自分の部屋のベット眠っていた…。
意識がはっきりとしてベットから、ゆっくり体を起こすと、ノアールが話し掛けてきた。
「マリア良かった。目覚めましたのね!ご気分はいかがかしら?!」
「ん?ノアール。おはよう。私なら大丈夫よ。それよりセインフォード殿下は?!どんなご様子?!」
私は、その事が気がかりで直ぐにノアールに確かめた。
「セインフォード殿下ならお元気ですわ。あれから直ぐに意識も戻って医師の診察を受けて、どこも体に異常は無く、健康との話でした。寧ろ貴女の方が、とても心配な状態でしたのよ!」
「え?私?!」
「当然でしょう!貴女ったら床に倒れる様に眠ってしまって、そのまま、ずっと目覚め無いんなんですもの。一日が過ぎても目覚め無いから、あたくしマリアが、ずっと眠ったままだったら、どうしましょうって!どれ程、心配したか!」
そうノアールが涙目で訴える。
一応、眠りに付く前に簡単に説明した筈だけど、2日も眠っていたからノアールに心配させてしまったみたい。
私は、ノアールに謝ってから詳しく事情を話した。
「ごめんね。ノアール。私が行った蘇生魔術は光魔術の最上級魔術で、一度に消費する神聖力の量は、とても膨大で…。だから、この魔術をおこなった後は必ず神聖力欠乏症になってしまうのよ。
魔力でも、一度に沢山の量を使うと体が疲労して、だるくなったり眠くなったりするでしょう?それと同じことよ。だから、神聖力がある程度、回復するまで深く眠ってしまうの」
「要するに欠乏症でしたのね。まぁ、あれだけの凄い魔術を使ったら当然ですわね。では本当に、もう大丈夫なんですの?」
「ええ。2日も、ぐっすり寝てたんだもの」
そう言って、私は元気な笑顔を見せた。
「それを聞いて安心しましたわ」
「それでね。ノアールその2日も眠っていたでしょう?お腹もペコペコなの。申し訳無いけど、食事を用意をして欲しいって厨房の人に頼んで来て貰えない?」
「分かりましたわ。今なら昼食が残っているかも知れません。もし無くても直に食べられる物を、お願いしてきますわ。少しお待ちになって」
そう言ってから、ノアールは部屋を出ていった。
私はノアールが帰ってくる前に、着替え様とベットから立ち上り、クローゼットに向かう。
そこに今度は公爵夫人やカロリーナが私が目覚めた事をノアールから聞いて心配しながら部屋に入って来た。
「マリア様。お目覚になられたんですね!お体は大丈夫ですか?どこか辛かったり苦しいところはございませんか?」
「そうです。マリア体の方は大丈夫ですか?」
2人は部屋に入って直ぐに私の様子を確かめてくる。
「はい。ご心配お掛けてし申し訳ありません」
そして私はノアールにした話を、また2人に説明した。
その話を聞いて二人も安心した様だった。
「本当に良かったわ。それからね。マリア。目覚めて直ぐで、申し訳無いんだけれどセインが貴女に会いたいって言っているの。
大丈夫かしら?まだ疲れていて無理なら断ってくれても良いのよ?」
「いえ。私ならこの通り大丈夫です。それに私も殿下の体調を心配しておりました。直ぐにドレスに着替えてお伺いしますわ」
そう答えれば、公爵夫人も笑顔で殿下の居る場所を教えてくれた。
「そう?良かったわ。セインは、テラスで待っています。食事もそちらに用意させて置きますからね」
「はい。テラスですね。分かりました」
カロリーナに急いで身支度をして貰って、私はテラスに急いだ。
公爵家のテラスは美しい庭が一望出来る場所にあり眺めが素晴らしい。
天気の良い日には、何度かセインフォード殿下とテラスでお茶を共にした事がある。
そうして、テラスに行けば既に殿下は座って待っていた。
私の姿を見ると立ち上がって笑顔で出迎えてくれた。
近くで見れば顔色も良く杖が無くても問題無く歩ける様子に安心した。
「マリア」
「殿下。お待たせして申し訳ありません。」
「いや。私も今来た所だ」
そうして、私は殿下にエスコートさて椅子に座ってから念の為に体調を聞いた。
「殿下?お体の調子はいかがです?もし何か不調があれば言って下さい。直ぐにヒールを掛けますから」
「何も問題ない。この通り元気だ。それに正直、言って、自分が死んだなんて未だに信じられないんだ。でも目覚める前に見ていた夢は、もしかしたら臨死体験だったかも知れないと考えていた」
「まぁ!どんな夢をご覧になったのですか?」
そんな話をしていると食事が運ばれて来た。
食事はサンドイッチやキッシュ。他にも小さく切ったミニケーキやゼリーが数種と食事がしたい私とティータイムにも対応したメニューで殿下と一緒に食事を楽しめた。
そして殿下は、先程の話を続ける。
「気が付けば、私は白い空間を1人歩いていた。そこへ眩しい光と共に突然、女性が現れて勝利の女神ティーと名乗った。そして私を迎えに来たと言っていた。だが私は現世にやり残した事があって、会いたい人が居るから、まだ天国に行きたくないと連れて行かないで欲しいと必死で頼みこんだ」
「まぁ」
勝利の女神ティーは、勇敢な騎士だけに姿を現し加護を与えるとされる勝利の女神だ。
そして騎士の死後は、彼女に導かれて天国に逝く事は騎士にとって最大の名誉とされる。
「そうして抵抗している内に、今度は遠くから、マリアの声が聞こえた。
だから私は、女神の手を振り払って、その声の方へと逃げた。そんな夢だ」
これが臨死体験でも夢でも、私の思いが彼に届いて天国へ逝かずに再び戻って来てくれた事がうれしかった。
「あの時、私が死ぬ間際に思っのは、また君に会いたい。そして、私の気持ちをちゃんと言葉にしてマリアに伝えたかったという事だ」
そう言うと、セインフォード殿下は、私の前に跪く。
「マリア、私は君が好きだ。愛している。私の妻になって欲しい。勿論、これは私の一方的な気持ちだから、正式な申し込みをする前に君の気持ちを聞かせて欲しい」
そして突然告白されて私の思考は、ほぼ停止してしまった。
セインフォード殿下の顔を見れば、少し赤いけど真剣に私を見ている。
その視線に気まずさを感じ私は俯きながら返事をした。
「あ、あの大変光栄なお話ですが…。私は殿下に相応しくありません。私は、アルティミで聖女としても出来損ないで、次期王太子妃としてマナーも未熟と言われて社交の場にも呼ばれた事はありません。
そんな私を妻にしたら殿下が公の場で恥をかいてしまいます。それに私は孤児なんです。きっと産みの親だって、私の事を必要としないから捨てたんです…」
全て真実とは言え、自分で言っていても悲しくなってくる。
そうすると殿下は更に側に寄って来て、私の顔を覗き込みながら、突然、違う話をして来た。
「マリア。もし酷い怪我した犬を見つけたら君は、どうする?」
「え?それは勿論、怪我を治して助けます」
「その助けた犬が君に懐いてしまったら?」
「その時は責任を取って最期まで面倒をみます。当然です」
「そう。それなら当然マリアは、私の面倒も最期まで責任を取って見てくれるるよね?」
「え?えぇ??」
「酷い怪我や病で苦しんでいた、私を助けたのは君だ」
「確かに殿下と出会った時も酷い怪我をした殿下を助けましたけど、それは話が違いますわ」
「マリア。怪我をした犬はマリアと一緒に居られれば、きっと、それでだけで満足で幸せなんだよ」
そう言うと、私を引き寄せて抱きしめた。
「セインフォード殿下」
「だから私と一緒にいて幸せかどうか、その気持ちだけで答えて欲しい」
耳元でそう囁かれ、私は正直な気持ちを答えた。
「…つ…私も殿下と一緒に居る時が一番幸せです」
ずっと抑えていた気持ちだった。
「答えてくれてありがとう。マリア…」
そう言われ、私はセインフォード殿下に強く抱きしめられた。
お読み頂きありがとうございます。
こちらエピローグとなっていますが、第1章完結でのエピローグで、この物語自体は、まだ続きます。
ですので引き続き読んで頂ければ嬉しいです。
今後ともよろしくお願いします。




