王宮へ②
久しぶりに、王宮へ戻る事が出来た。
私が『王家の病』を発症したのは、フレイア公爵領の『黒い森』で魔獣を討伐している最中だった。
その日は朝から体が少し怠くて体調が悪かった。
だが多少の体調不良で休む訳にはいかない。
そう思い出陣したものの、次第に体調は悪化して戦いの最中に倒れ、そのまま高熱出して意識を失なっい目覚めたのは3日後だった。
意識が戻っても体調は悪く微熱は続き、体は重く寝ていても起きて居ても体中に痛みが走った。
その後、熱が引きベッドから起き上がり歩いたら、今度は足から激痛が走り、普通に歩く事すらままなら無くなった。
その後は杖を使って体を支えながら、ゆっくりとしか歩け無くなった。
そんな日が数日間も続き、そして医師や叔父から私の病名が告げられた。
『王家の病』
それは我がクリーヴァの直系の王族が、約50年に一度、誰か1人が必ず発症する病だ。
50年前には、私の祖父にあたる方が24歳の若さで亡くなったと聞いている。
その時、父は、まだ幼子2歳のであり叔父は生まれたばかりの赤子だった。
それから約50年。
この王家の病は若い直系の王子に発症する。だから私か、もしくは兄や弟に発症する可能性が高かった。
そして病を発症したのは私だった。
それだけの事だ。
私の体は酷く弱り再び王宮に戻れる程の体力は無かった。
だからフレイア公爵領で療養する事になった。
発症の当初こそ、ベットから起き上がることすら苦痛だったが時が立つと多少は出歩ける様になった。
もう自分の命が長く無いと知った時せめて私に出来る事は何かと考えた…。
そして思い付いたのが『黒い森』の調査だった。
この危険な森には手つかずの天然資源が豊富に眠っている。
実際に危険を冒して、この森に入った研究者達は優れた薬効を最も薬草を発見したり、強い魔力宿した魔石の発掘等、皆、国の発展に貢献するような発見をして功績を上げている。
黒い森は魔獣と云う災いをもたらす反面、大きな恩恵のある森だ。
だから私も国の為に何か新しい発見が出来ないかと、なんとか体調の良い日に森へ入った。
15歳から騎士として魔獣の討伐隊に加わり戦ってきたから魔獣の事も、森の事も分かっていると私自身にも慢心があった。
そしてある日、私は最悪な事に森で魔獣に遭遇してしまった。
魔獣に襲われ、私の命も、ここまでだと覚悟した時、私の前に1人の女性が現れた。
その女性が、私に回復魔術をかければ、今まで受けた事が無い程の急速な速さで傷が治り、そして一番驚いたのは魔獣を見たことも無い魔術で追い払った事だ。
その魔術を目にした時から『神聖力』を持つ者だけが使える『光魔術』直ぐに分かった。
だが、我が国には、この150年程、『神聖力』を持つ者は生まれて居ない。
この国で今『神聖力』を持つ者はシオン聖国から、クリーヴァに派遣された神官だ。
その神官は医術の神との契約を交わし『神聖力』を持っているが、その彼等すら到底太刀打ち出来ない回復力の速さ、その力の強さを考えれば、それは大帝国時代の聖女と同等だ。
クリーヴァでは『神聖力』は特別な力、例え平民でもその力を持つ者は親族も含めて優遇される。
私は助けてくれた彼女の素性が気になった…。
名前を聞けばマリアと名乗った。
そして、その名前には心当たりがあった。
それはアルティミの現聖女と同じ名前だった。
更に驚いたのは半信半疑で聖女なのか?と聞けば、本人があっさりと認めた事だ。
はっきり言ってマリアは素直と云うか純粋で人を疑う事を知らないのかもしれない。
聖女ともなれば、アルティミでも特別な存在。
きっと普段から大切にされ、人を疑ったり、嘘をついてする必要が無い環境だったのだろう。
更に詳しく事情を聞けば驚いた事に、我が国の者が魔術を使い体を入れ替えてマリアは無理矢理クリーヴァに来た事が分かった。
更に驚いたのはマリアがアルティミに帰る事を希望するのか確かめたら、このままクリーヴァで暮らす事を希望した。
マリアは、どうもクリーガァの平民として暮らしたい様だが、こんな簡単に神聖力を人前で使い、それも強力な神聖力を持つ者の放置すれば、その力を悪用する者が現れる可能性が高い。
この事を知ってしまった以上、私はマリアを保護する事にした。
そうして公爵邸に着けば、私は休む暇も無く、叔父上に事情を話、そして父上に手紙を書いた。
正直、叔父上も最初は私の話に半信半疑だったが、私が魔獣に襲われて怪我した際に、シャツに、べったりと付いた大量の血と私の体に傷跡1つ残って無いのを確認して、その強力な治癒力で納得してくれた様だった。
そしてマリアを公爵家で守る事を約束してくれた。
それからは私に取っては毎日が奇跡の様な日々が続いた。
マリアに回復を掛けて貰うだけで私の体調は随分と回復したし、そして何よりも一番驚いたのは、私が『黒い森』を、どんなに調査しても発見が出来なかった珍しい木の実や新たな薬草等が、いとも簡単に発見された事だ。
更にマリアは、その薬草を使って新たな薬まで作ってしまった。
その薬と回復効果の、お陰で私は再び王都に戻るだけの体力が回復した。
そしてマリアを伴って王都へと戻り私は再び両親や兄弟達事が出来た。
王宮のお茶会が用意されたの場所は母上、お気に入りのバラ園の庭。
王宮の中でも、ここは王族しか入れない特別な場所だ。
両親が、どれだけマリアに会うの心待ちにしているが分かる。
クリーヴァに取っても聖水晶に選ばた聖女は特別な存在だ。
もし再びクリーヴァの地に聖女が戻って来る日が来たら大切に扱い敬う様にと、クリーヴァの王族は教育されてきた。
だけどその肝心のマリアは王宮に入った時から酷く緊張している。
アルティミとクリーヴァは隣国だがはっきり言って敵対に近い関係だ。
だからマリアに取っては、クリーヴァの王族は怖い存在なのだろうと思った。
取り得ず緊張を解そうと声を掛ける。
「大丈夫。ちょと、私の家族と一緒にお茶を飲むだけだから」
「…はい」
そう言ってもマリアの硬い動きに、私は心配なりマリアを安心させる積りで、いつもの様に私は手を差し伸べた。
そしてマリアをエスコートしながらバラ園へと足を進める。
既にガゼボには、両親と兄弟達が待っていた。
私は家族に向かって声を掛けた。
「お久です。父上」
そしてお茶会がはじまった。




