第31話 噛む度に増す無意味
「か、かかってこい……なのだ……きっ、貴様らなどよ、余裕なのだよ」
あっしの口は、思ってもないことを話し出す。
ゴロックはそれを理解しているのか、三体同時にあっしに向けて転がってきた。
あっしはどうすればいいか分からず、自分の足元に視線を下す。
足が、震えて……動けない……動け……動かないと……
──────ゴゴゴガタガタ…………
そうしている間にも、だんだんと轟音が近づいてきて……あっしは顔を上げる。
「ングっ!?」
その瞬間、鼻っ柱に痺れるような衝撃が走った。
あっしは弧を描くように吹っ飛び、背面から着地して地面を滑る。
熱い、熱い、熱い……自分の身体が背中から削られるのを感じる……気色悪いのだ……
「チュウリンッ……!!」
仰向けで、前足を投げ出して空を見上げたまま。
サクラの声が耳に入る。
あっしはアイテムボックスを握り念じ、リンガの実を取り出した。
どうやら、これが最後のようなのだ。
ガリッ。
今日、何度目か分からない。
自分の口より大きなリンガの実を血だらけの前歯で齧った。
不味い。
血のせいで、美味いもクソもない。
それでも、傷はじわじわ言えていく。
「ゴロゴロゴロ!」
「ゴロ?」
「ゴロッ、ゴロ……!」
ゴロックは、そんなあっしの様子を見て目を細めてぴょんぴょん飛び跳ねる。
あっしを、笑っているのだ。
あっしも、自分を笑ってやりたい。
こんな、意味もない行動を引き継いだあっしのことを。
ガルタは、言っていたのだ。
ラビリンスのモンスターなら、戦えると。
何を言っているのだ?
あっしは、何一つ分からない、戦いなんて。
ガリッ。
よく覚えていない……ここで、起きる前のことは。
あっしがどんなモンスターだったのか、どこで産まれたのか、どんなモン生を歩んできたのか。
ぽっかり、空いているのだ。
けど……苦しかったことだけは、覚えているのだ。
ガリッ。
ガルタが今戦っている、オニとかいうヤツ。
あっしはあいつに回復されては殴られ、回復されては潰され、回復されては噛まれ、回復されては……──────
ガリガリッ。
一体どれほど、それを繰り返したのかは分からない。
けど、あっしの残った記憶はそれだけなのだ。
そんな中で起きて、周りの奴らは鳴くだけで、やっと会えた話の通じるものは意味ないことばかりするバカの集まり。
散々、なんてものではないのだよ。
ガリッ……。
……甘くて、美味しい。
あっしはリンガの実を食べ終わり、完全に再生が完了した。
お尻に力を込め、跳ねるように起き上がった。
起き上がると、まだゴロックが笑っていた。
「……」
このまま、逃げてしまおう。
そうすれば、生き延びることができる。
「……笑うな」
その思いとは裏腹に、全身が熱くなる。
あっしの中に、真っ赤に燃える何かが宿る。
体温が上がって、力が入る。
無意味……無意味なのだ。こんなものは。
あっしまで無意味になる必要はない。
あのサクラが、勝手に突っ走った結果なのだ。……このまま逃げれば、そうなるのだ。
あっしが、サクラがどうとか、構う必要なんて……ない……ないのに…………
「笑うなぁっ!!」
なぜあっしはこんなにも……怒っているのだ……。




