【幕間】たくのみ!源ちゃん
>>いつもの廃雀荘
__ガチャッ
海野「ふぅ…今日もスッちまった。……あれ?なんだ、居たのかお前。」
十文「んだよ。いちゃ悪いか?路上で飲めっつーのかよ。」
海野「そこまじゃ言わねえけど、塩で焼酎ってお前いつの時代の酔っぱらいだよ。」
十文「べ、別にいーだろ!デカいつまみなんざカロリーの塊だし、かと言って安い酒なんてそのまま飲めたもんじゃねえし!」
佐渡「おい、あまり酒の話ばかりするな。ヤツが来るぞ。」
海野「うわっ!びっくりした!お前も居たのかよ!誰だよ、ヤツって。」
佐渡「…聴こえてくるだろう。ヤツの奏でる哀愁のメロディが。」
__ガチャッ
根鎌「“東京”。男と女が迷う街。今宵も街に呑み込まれ、彷徨う男がここに三匹。」
佐渡「やはり、来たか。」
十文「しかもなんか変なモード入ってる!めんどくさ!」
海野「つか、ここ東京じゃねえよ。」
根鎌「マスター、一杯くださる?」
__トントン(人差し指で机叩く音)
十文「ハァ?」
__トントントントトントンン(人差し指で机叩く音)
佐渡「おい、何か出さんと永遠にアレ続くぞ。」
海野「えぇ…しょうがないな。」
__冷蔵庫物色中
海野「お待たせしました。コーラとカル◯スとミ◯ッツメイド、アイスティー、メロンソーダのカクテルでございます。」
十文「馬鹿のドリンクバーじゃねえか!」
根鎌「ゴクッゴッ…ふぅ、あんたたちゲポォ。」
海野「一気に飲むから…。」
根鎌「…ふぅ、お前らさぁこんな昼間から酒の呑み方で揉めてるなんて淋しかねえのかよ。ええ〜?」
十文「言い直すついでにキャラまで変えてきた…!」
海野「まだ言うほど“揉めてる”って段階でもなかったけどな。」
根鎌「まったくだらしねえ奴らだよ、しょうがねえな。俺が教えてやるよ。本当の__」
十文「いや、いいです。間に合ってます。」
海野「うん、ああは言ったけどいいと思うよ。塩で焼酎も。」
根鎌「俺が教えてやるよ!本当の“宅飲み”ってやつをよ!!」
十文「うわっ!ゴリ押してきた!だるっ!!」
根鎌「いいか、宅飲みの基本ってえのは安い酒を濃い肴で大量に流し込むことだ。」
海野「それ基本にしてんの源ちゃんくらいじゃない?」
根鎌「…そこで、お前ら!今から思い思いのつまみを持ってきな!俺が品評してやんよ!!!」
十文「ええ何でそうなるの!?」
海野「教えてやるよの流れでこっちにパス来るのエクストリーム過ぎない!?」
根鎌「おおん!?授業料だろうが!ガタガタ吐かすな!」
海野「チンピラとか山賊の理論かな?」
十文「結局タダ飯せびりに来ただけじゃねえか。ふざけんな、付き合ってられっか。」
佐渡「…GEN。その話、乗らせてもらう。」
(※佐渡は何故か源ちゃんのことを“GEN”と呼びます。)
十文「ハァ?」
海野「乗らなくていいって、こいつ構うたびにどこまでもつけ上がるぞ。」
佐渡「何他人事のように言っている。お前も参加しろ、海野。」
海野「なんで??」
佐渡「前々から思っていたがお前はいつも俺が昼飯を振る舞ってやろうという時に横からスッと現れ簡単な料理を作り始める。」
海野「それは、お前の作ろうとした昼飯だいたい時間かけすぎて晩飯になっちゃうからでしょうが。」
佐渡「それだけではない、包丁の持ち方にいちいち口を出すなどして俺の調理をあの手この手で邪魔してくる。貴様…俺から料理キャラを奪うつもりだろ!!」
海野「なにいってんの??」
十文「こいつ今までキャラ付けのために飯作ってたのかよ。」
佐渡「…ちょうどいい機会だ。俺と貴様、どっちが料理キャラとしてふさわしいか白黒つけてやる。」
海野「やめろ巻き込むな!なんか俺までキャラのために料理作ってるみたいになるでしょうが!」
根鎌「…ケケケ。面白いことになってきたぜ。」
十文「…お前、何出てきてもちゃんと食えよ。」
__酒のつまみ一番勝負・佐渡VS海野!
海野「…しょうがねえな。言い出しっぺなんだからお前先に出せよ。どうせまた時間かかるんだから。」
佐渡「いや、料理対決において先攻は負けフラグ__」
根鎌「いいからさっさと作れよ。制限時間30分な。」
佐渡「クッ…!」
__約30分…というより1時間弱後
佐渡「できたぞ。」
十文「しっかり時間オーバーしてきやがったな。」
根鎌「で、なにこれ。盛り塩?」
佐渡「フッ…そのスプーンで軽く叩いてみろ。」
根鎌「あっ!なんか魚おる!」
海野「“塩釜焼き”か…!」
佐渡「そう、“アジの塩釜焼き”だ。そこの塩から着想を得た。魚特有の生臭さはハーブで消してある。さあ酒と共に流し込め。」
根鎌「へへ…いただきまーす。」
__実食
佐渡「どうだ?」
根鎌「これ____しょっぺえ!!」
__飲酒
根鎌「あっ!酒飲んでもまだしょっぺえ!!なんだこれ!?普通に生臭せえし!!」
佐渡「なん…だと…!?」
海野「…いや、当たり前だろ。そのアジ元から塩味ついてるし。」
佐渡「貴様…なぜそれを…!?」
海野「俺が晩飯用に買っといたんだよ!ちゃんとパック見ろ!勝手に使いやがって!」
根鎌「うえぇ…舌がもげる…!」
海野「…もうこれ俺の不戦勝で良くない?」
佐渡「駄目だ!お前が作るまで決着は認めん!」
十文「まだ続けるのかよ…。」
海野「だぁ、わあったよ!よし……じゃあこの残飯もらってっていい?」
佐渡「残飯って言うな!」
根鎌「ええ…これ以上どうするつもりだよ…。」
海野「料理だけが酒のつまみじゃないってこと、教えてやるよ。」
__10分後
海野「よっしゃ、立て源ちゃん。下に降りるぞ。」
根鎌「ええ?外出んの?」
>>そと
佐渡「これは…水を張ったビニールプールと扇風機だと?おい、料理はどうした。」
海野「まぁ待てって。…どうぞ、源ちゃん。そちらのリゾートチェアでお寛ぎください。ついでにサングラスも。」
根鎌「えぇ…うん。」
__ピッ…ブロロロロ
根鎌「…ま、今日暑いから助かるっちゃ助かるけど。」
海野「そして、はい。こちら“さっきのアジをちょっと塩抜きして食パンで挟んで焼いたやつ”でございます。」
根鎌「またこれかぁ…。」
海野「ほら、酒も氷で冷やしといたから。クイっと一緒に。」
根鎌「へーい…いただきます。」
__実食&飲酒
根鎌「あ……!?う、“海”だ!海が見える!!」
佐渡「なっ…なにっ!?」
十文「ハァ?」
根鎌「ほんとだって!九十九里浜見える!!行ったことないけど!」
佐渡「貴様盛ったか!?」
十文「調理の過程でなんかよくないもの混入してない?」
海野「ばか、パンで挟んで焼いただけだっつってんだろ。俺が手を加えたのはシチュエーションの方だ。」
佐渡「つまり、演出したというのか…“海岸”を…!?」
海野「ああ、安酒を一番旨くするのはつまみでも割材でもなく“自分への嘘”だ。このクソ暑い中にでも水辺と風を用意する事で涼しさを作り出し、そこに塩アジサンドの塩辛さと生臭さが相まって海辺の磯の香りを演出したってことだ。」
根鎌「すげえ…かなり海だよ、コレ!」
十文「ええ、いいなぁ。俺もやろうかな。」
海野「これが独りよがりの料理と真心のこもった料理ってやつの違いだ。上達したけりゃまず“オモテナシ”ってやつを学ぶんだな。」
佐渡「ぐっ…元は俺が作った料理だぞ…!」
__モッキュモッキュ
根鎌「……あ、あの。すいません。」
海野「なんでしょう。」
根鎌「二口目食ったら…“魔法”、解けました。」
海野「…あ、そうですか。」
佐渡「どういうことだ?」
根鎌「いや、これパンで挟んでも普通にしょっぱいし、よくよく考えたら磯の香りでもねえなって…。」
海野「ま、嘘にも限度ってもんがあるよね。お疲れさんした。」
十文「帰って飲み直そ。」
佐渡「お、おい!勝敗は!?これはどっちの勝ちだ!?」
根鎌「ええ?どっちの勝ちかっていうと……うん、最後まで魔法を信じきれなかった俺の負けだな。」
佐渡「いや、そうじゃなくて!…そもそも、まともに料理を作ったのは俺の方だぞ!そこを加味してどっちだ!?」
根鎌「どっちと言われると…俺の完敗だなぁ。乾杯。なんつって。」
佐渡「おい!!!」
-終-