絶望の始まり 2
「アムラウル様。お呼びですか」
「お呼びだ。呪術使いのアス。やつを石化の呪いにかけてくれ」
魔王は杖を持ち尻尾が細く長い特徴的な魔族に言う。
杖持ちの魔族はため息をつきながら
「また娯楽でございますか。アムラウル様。私の呪いは遊びで使うものではないのですよ」
「ふ。頼りはアス、お前しかいないのだよ。下手に魔法で石化したところで私の魔力の負荷が大きい。だがアス。お前の呪いならば貴様の負担もないだろう。呪いは勝手に残り続けるからな」
「そうですが私があまり気持ちの良い使い方ではありません。このような使い方のために魔王様から頂いたものではありません」
魔族とアムラウルはいいあいをしている。今の間にこの魔法がとければ・・・俺は
「魔法が解けると、いや私のかけた能力がとけるとおもうな。そんな柔なものではないからな。その前に」
アムラウルは俺の武器をとって地面に投げ捨てる。
「念には念をだな。私の能力とて完璧ではないからな。人間、特に貴様を舐めてかかるのはやめるよ。あれだけ我が部下を倒したのだからな」
く、くそ、くそぉぉぉぉ!
俺は声に出さず心の中で叫ぶ。こんなの、あまりにも、惨めじゃないか。仲間達とも合流もできず、自けつしようとも魔王の魔法か能力か知らないものによって動けない。こんなの、こんなの!
「分かりました。分かりましたよ。でもこれで最後ですからね。後アムラウル様、外に出た2人ともう1人の始末が終わりました」
な、なんだと
「ありえない!あいつらが!他の3人がお前ら如きにやられるわけがない!俺たちは魔王を倒したんだぞ!」
俺が叫ぶと尻尾の長い魔族は杖で俺の腹を殴る。
「ぐ、ふ!」
「口を慎め人間。魔王様は貴様らにわざと負けたのだ。でなければあのお方が敗れるはずがない。我が魔族で唯一無二の最強の魔王と呼ばれたお方だ。歳をくっていたとしても人間如きには遅れはとらぬ。全てはアムラウル様の為、でなければ貴様らになど!」
何度も何度も尻尾の魔族は俺の腹を杖で殴り続ける。
「おい。それぐらいにしろアス。そいつは殺すことは許さない。貴様は何年後、何百年、何千年後まで石化してもらい変わり果てた世界で生きてもらうぞ」
「はぁはぁはぁ、ふ、ふざけるな。3人を殺したなら、私も、殺せ。なぜ、私だけ、殺さない!」
俺がアムラウルに叫ぶとアムラウルは笑いながら
「貴様が気に入ったと言ったろ。それではまた会おう」
尻尾の魔族は詠唱を始め、尻尾の魔族が詠唱していくごとに俺の体は足から石になっていく。
「ぐ、お。ぜ、絶対、目覚めることが、石化がとけたら、お前を!」
「ふ、そうだな。殺せるものなら殺すといい。あ、貴様らの子孫は残しておいてやる。大臣がうるさいからな」
「な、ふ、ふざけるな!アメリアに手を出すのだけは許さんぞ!」
アメリアとは俺の嫁だ。魔王を倒した後必ず帰ると約束したのに、それも守れず・・・。アメリアのお腹には子供もいてそれも利用されるなんて。
「はっはっは!絶望して石になれー!」
「アムラウル!てめぇだけは絶対に俺が殺してやるー!」
そこで俺の意識は途絶えた。