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遺言  作者: 縷々
3/8

最初の傷

話は戻すが中学生の頃私は人間の心の移り変わりの目の当たりにした。

小学校の頃から仲良くしていた親友のような存在が私の元を立ち去ったのだ。

中学になって転入してきた女の方に行ったわけなのだが、私はそれがずっと気に入らなかった。

何故ならその女が転入してきた初日に親友はその女が話しかけてきたのを無視した上で私にあの女と関わらないでおこうと言ってきたのだ。

それなのに数日後にはその女の隣に親友がいた。私は数日前の自分の耳を疑ったがまぁこれまでも何度がふらふらと誰かの隣に行くことはあったからまたそのうち戻ってくるだろうと思っていた。

しかし私の予想は外れ、親友が私の隣に戻ってきてまた笑い合うという日々は二度と訪れなかった。

今思えば彼女はギャルだ。それに比べ私は男勝りでファッションやコスメには疎い。最初から釣り合っていなかったのだろう。けれど当時の私には大きなショックを与えた。恥ずかしい話だが私には彼女しか友人はいなかった。というより彼女がいたから他に親しい人がいらなかった。クラスメイトと話をしないわけではないがあからさまに嫌われているのを感じるし話も合わない。無理して話して疲れるくらいなら別に友人は一人でいいと思っていたのだ。そうして私は晴れてひとりぼっちになったわけだがメンツが変わっていない以上悪口は終わらないわけでこの時も変わらずに私は悪口を言われ続けていた。

この時は最高潮に荒れていて色々としでかしたし喧嘩で怪我をして足がパンパンに腫れて歩けなくなったこともあった。今では笑い話だが当時はどうやって親に隠すかだけしか頭になかった。

そんな日々の中でなかなかに堪えたのは帰り道だった。学区の端っこの方だった私の家は登下校にはそれなりの時間がかかった。そんな彼女も私とそれなりに家が近くいつも一緒に帰っていたのだが彼女が転入生と帰るようになってからその帰り道は普段より何倍も遠く感じた。

楽しい話をしていればあっという間だというのに何もない見慣れた道はあまりにも単調でつまらなかった。そして帰り道の途中、たまに見かける親友と転入生の姿にまた胸が痛んだものだ。

今でもそれは鮮明に思い出せた。光景も痛みも。

そうして私は人の心はいつか変わる。永遠なんて無いという事を身をもって知り人を信じる事をやめた。

中学三年にもなればその親友とはもう何の関わりもなく、別の人と話をするようになったわけだがその子の事を周りが何と言おうと友達だと思ったことはないしただの暇つぶし程度の相手だとしか認識していない。現に卒業してからは連絡を全くとならくなった。今はスマホが着信を知らせることは全くなく、電話というよりゲーム機のようなものだ。

中学最後の卒業式の日、私は旅立ちの日にを歌いながら泣くクラスメイトを鼻で笑った。

転入生の泣き声がよく聞こえた。私の少し後ろにいたからなのか、一番耳障りだったからかは知らないが。式の後の最後の集まりも興味はなく早々に家へと帰ったのは今でも覚えている。

そうして毎日悪口を投げかけられ旧親友と転入生の仲良しごっこを見せつけられる日々は終わった。

実に長かった九年間だった。高校は「ヤバい噂」しかないところに行った。そこには私の学校から誰も入学する人はいなかったのだ。これで私は悪口の日々から、暴力女というイメージから解放されることになったのだ。



この時の私はまだ未来に希望を抱いていた。

抱けていたのだ。

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