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遺言  作者: 縷々
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まだ普通だった頃

私は今白紙の紙を睨んでいる。

何を書けばいいのか、何から始めればいいのか。考えれば考えるほど書き残したいこの世への不満と心の傷が浮かび上がった。けれどその傷は深すぎて思い出せずにいる部分もある。

どうせこの後死ぬのだ。時間はいくらでもある。今から物思いにふけても問題はないだろう。

最期に昔を懐かしむのも悪くはない。そう思い持っていた筆を置いた。


幼稚園の頃の記憶はほぼない。今の私に影響を与えるような大事が起きたこともないはずだからその頃を思い出すは恐らく無意味だろう。

小学生の頃の記憶は鮮明に残っている。忘れもしない。私が初めていじめられた時の事だから。

「おい、×××!!」

どのような悪口を言われていたのか、今はもう覚えていない。

何度思い出そうとしてもその言葉は出てこなかった。容姿を馬鹿にされた記憶はあるが、その他にもよくわからない言葉を言われていたような気がする。

毎日のように悪口を言われ、私は小学二年生という幼い頭で初めて死を考えた。死という存在を強くイメージした。そしてそれをかき消した。あの頃の私は自殺なんて弱いやつがすることだと本気で思っていた。いじめに関しての自殺の話だが。学校でのいじめは「学校」という狭い世界でしか威張れない弱者だと思っている。それは今も変わらずに。だからと言ってその弱者からの攻撃に耐えられなくなり苦しみから逃げた人を私は決して弱いとも思わないし愚かだとも思わない。寧ろとても強い人間だと思う。その弱い人間というのは結局自分にしか当てはまらないのだ。私はどうしても私が許せなかった。

それから私は絶対に負けないという思いを強く抱き、毎日のように暴力を振るった。これは決して胸を張れることではないし自慢するような話でも何でもない。けれど幼い私は親には言えない、教師に言うなんてことはそもそも頭になんかない状態でたどり着いた答えは「やり返す」ことだった。

最初のうちは「うるさい」「黙ってろ」なんて言葉で言い返していた。けれどもちろん相手が黙ることはなかった。それから私は物理的に黙らせるという行動に走ったのだった。今でも何でそんな考えしかできなかったのかよくわからない。そもそも何がきっかけで悪口を言われ始めたのかもよくわかっていないが……

そうして私は時に教師に呼び出され説教されたり、親と話し合う羽目になったりしながらも卒業した。

かといって中学でも全くメンツは変わらなかった。小中一貫校だからだ。他の学校はどうかわからないが私の通う学校は数人出て行き、数人入ってくる程度の変化しかない。

まぁ、そんな多少の変化で私は人生最大の傷を負う羽目になったのだが……

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