短編ギャグ小説 「ハッピーバースデー”つゆ”」
♪ハッピーバースデー“つーゆー”
ハッピーバースデー“つーゆー”
ハッピーバースデー“ディアめんつゆー”
ハッピバースデーーーー“つーーゆーーー”♪
僕は疲れ過ぎていた。
眠くて眠くてたまらなくて、
頭の思考回路が、、、
変になってしまっていたのだ!
「冷ややっこを食べたい」
妻が言った。
「しょうゆがいい?めんつゆがいい?」
と僕は答えた。
僕は眠くてたまらなかった。
「めんつゆがいいー」
妻が答えた。と、その瞬間!
頭の中で、
♪ハッピーバースデー“つーゆー”
ハッピーバースデー“つーゆー”
ハッピーバースデー“ディアめんつゆー”
ハッピバースデーーーー“つーーゆーー”♪
が、【エンドレスでリピート】した。
「♪ハッピーバースデー“つーゆー”♪」
と歌いながら、僕は妻の元へ“めんつゆ”を届けた。
何も言わない、
何も反応しない、
そんな妻が、彼女の疲労度を物語っていた。
一刻も早く眠ろう
僕はそう思っていた。
なのに、
それなのに!?
どうしたことだ!
“めんつゆ”の歌が頭から離れないのだ。
やがて、ハッピーバースデー“つーゆー”は、オペラ調になり、リピートの回を増すごとに、
バリトンからテノールになり、
テノールからソプラノになり、
また、ソプラノからバリトンになり、
パーカッションが増え、太鼓を叩く音が聞こえ、
シンバルが「パーーン」となり、
バイオリンの数が増えていき、
トランペットが、「ぱっぱっぱっぱーー」と鳴り、
トロンボーンが、「ぷぉっぷぉぷぉっぽー」と吹かし、
管楽器、、、どんどんどんどん増えていく!
更にそこへ、
バリトンにテノールが加わり、
そこに、ソプラノが加わり、、
3つの歌声が美しいハーモニーを織り成していく…
♪ハッピバ〜スデ〜〜”つ〜ゆ〜〜”
ハッピ〜バ〜スデ〜〜”つ〜ゆ〜〜”
ハッピ〜バ〜スデ〜“ディアめんつゆ〜〜”
ハッピバ〜スデ〜〜〜〜“つ〜〜〜ゆ〜〜〜”♪
…グランドフィナーレは、壮大だった。
素晴らしいオペラを観た時のように、
鳥肌が立ち、
感動で目には涙が潤み、
スクッと観客席から立ち上がり、
「ブラボーーーーーーーー!!!!!!」
と叫ばずにはいられない!
“めんつゆの歌”は、もはや、ただのハッピーバースデーソングではなくなったのだ。
何も言わなくたって、
何も話さなくたって、
わかってくれる。
それはまるで赤ちゃんの時に、
お母さんが、
お父さんが、
ああかなこうかな
おしっこ漏らしてないかな
うんち漏らしてないかな
お腹を空かせているのかな
といつもいつも、
気にかけてくれていた時のように。
何も言わなくても、気付いてくれて。
何も言わなくても、わかってくれて、
抱きしめてくれる。
そんなお母さんのような、
お父さんのような、
素敵な人に出逢えたなら、
幸せだ。
出逢えてなくても、
出逢えなくても、
あなたはきっと、幸せになれるはずだ。
可能性に賭けよう
可能性を信じよう
生まれてきてくれてありがとう
一緒に居てくれて
ありがとう
誕生日じゃなくても誕生日を祝おう。
あなたが生まれてきてくれたことを祝おう。
あなたが生まれた日を、僕は祝おう。
ハッピーバースデー“つゆ”を歌いながら、、、
♪ハッピバ〜スデ〜〜”つ〜ゆ〜〜”
ハッピ〜バ〜スデ〜〜”つ〜ゆ〜〜”
ハッピ〜バ〜スデ〜“ディアめんつゆ〜〜”
ハッピバ〜スデ〜〜〜〜“つ〜〜〜ゆ〜〜〜”♪
ハッピバ〜スデ〜〜〜〜“つ〜〜〜ゆ〜〜〜”♪
※過去の創作シリーズも、ぜひお楽しみください。