表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

~帰宅~

仲間がいた嬉しさから緩んだままの顔で

玄関のドアを開けて大きな声で叫ぶ




「ただいまー!」




……しーんと静まった我が家

いつもならTVの音が聞こえてるのに




「あ!」

靴を脱ごうと下を向くと黒いランドセルが視界に映る。抱えたままだったようだ。




返しに行こうと踵を返すと

玄関に女物のベージュのパンプスと男物の黒い皮靴が並んでいるのが見えた





「…お母さん?……お父さん?いるのー?」




二人分のランドセルを玄関に下ろすと

靴を脱いで、きちんと揃えた




専業主婦の母はともかく、こんな時間に父がいるなんて珍しいことだった。





ワクワクしながらリビングへと向かった





「あれ?いないや」

キッチンにお風呂場にトイレに客間に…1階を全て探し終える2階へと続く階段へと向かう






ドクドクと心臓が大きく脈を打つ

1段づつゆっくりと階段を上がって行く





「…誰かいるのー?」

2階へ到着すると何やら変な匂いを感じた

窓から差し込む夕陽で茜色に染まる景色が印象的で窓へ視線を向ければ眩しくて目が眩む




「……あかねいろ…あか…ね…いろって…」





ピーンポーン♪




チャイムの音がして階段を駆け降りる

「…あっ」

目が眩んでいたせいか足を滑らせてしまい、景色がスローモーションのように感じた




ドッダダッドンッ




尻餅をつきそのまま3段くらい落ちただけだったのだが、それでも衝撃が体に走り、立ち上がれずにいた




ピーンポーン♪





「あー!もう!入るぞ!」

こちらの返事も待たずにバンッと乱暴に扉が開いた





「…あっくん」




玄関に置きっぱなしのランドセルに手を掛ける彼と目が合う


「だからあっくんじゃねーって…おい!」




ドサッ




ランドセルを投げて土足のまま上がり込んできた






「ちょっ、靴!靴!脱いで!」

私の訴えも虚しく、そのまま近づいてきて

「大丈夫か!?」

私の体を確認しだした





「お、おい!?とりあえず血が凄いな…」

私の両足を見て彼はゴクリと唾を飲んだ




「足は痛くないよ?お尻しか打ってないから」

そう言って首を傾げると

彼は目を見開いて「じゃあこれは?」と指差した





茜色に染まった靴下を





「それは…夕陽が……っ」




「はぁ!?それより親は!?」



その言葉を聞いてビクリと体が跳ねて震え出す




「おい!とりあえず俺の親呼んでくるから」




私の頭を優しく撫でて立ち上がろうとした体にしがみついた




「待って!い、いかないで!私は平気だから!」



震える体で見上げると

「そんなこと言われても…」

と困ったように座り直してくれた。






「本当に大丈夫なの?」

いつもより優しそうにだけどぶっきらぼうに問いかけられてコクコクと首を縦に振る




「もう、どこも痛くない!から!」

立ち上がってピョンピョンと跳ねて見せる

事実もう大した痛みはさほど感じなかった。




「…そうは見えないんだけど?」

つんつんと私の足先をつついては私の顔を見上げて反応を見ているようだ。





「も、もう!大丈夫だから!ランドセル!ランドセル持って帰って…」

先程投げ捨てられたランドセルまで駆け寄ると

ベチャベチャと深いな音が響く




「ねぇ、じゃあこれ何?」

その声に振り向くと床には赤い足跡が…

引きつった顔で指差す彼と目が合うとまた震えが始まって、ガクンとその場に崩れ落ちた






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ