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~昼休み~

今日は朝から疲れてしまったせいで

給食を残さずに平らげた後校舎の裏庭へと走った



ここは掃除の後にゴミを捨てる生徒が来るだけで

その時以外にはどの休み時間であっても誰とも会ったことはない



一本道の突き当たりにゴミ捨て場と、焼却炉がある

皆ゴミを捨てたらすぐにUターンしていくので気づいてないみたいだけど、塀のように植えられた木々の1箇所に隙間がある



ある日ゴミ捨て当番を押し付けられた私が一人でゴミ捨てに来たときに見つけた隙間



小学2年生の私は大発見!とばかりにそこを覗いた

そしてガッカリした

その先には何か庭のような空間が広がっていると思っていたからである




実際にはそこには木が塀のように横一列に植えられていた




「なぁんだ」

戻ろうと思ったときカサカサと木々が揺れる音がして、私は隙間の中に首をつっこんだまま左右を見渡した



「にゃあ」

黒ぶちの大人の猫が急に見ていた方の奥から現れてこちらを、見ていた



「あ、ねこさん」

思わず隙間に体を入れると木々が隙間なく埋められてるのではなく、1人分のスペースくらいはあるようでまるで迷路のように感じた



私が隙間に入ると猫は現れた所へさっと姿を消した



「あ!待って!」

夢中で追いかけるとそこにも隙間があり、木々の間を通るとまた木々の壁…

「にゃあ」

また現れた猫を追いかけて迷路のような木々を抜けると




「わぁ!」

先程思い描いたのよりは狭いが少し広い空間がそこにはあった。



ベンチが1つと、小さな池のようなものがあるだけの狭い空間。

池を覗くとどこからか水も流れ込んできているが、お世辞にも綺麗な池というよりは誰かが掘った手作り感のあるものだ。



でも水は透き通っていてとっても綺麗で

日の光を反射してキラキラと揺れていた



「にゃあ」

振り返ると先程の猫がベンチに座っていた




近づいても先程までのように逃げたりせずに

大人しく座っている

そっと手を近づけてみると頭をスリ寄せてきた




優しく頭を撫でてあげる

「よしよし」

そのまま背中の方まで撫でてハッとした



「…痩せてるね」



友達の家の猫ちゃんを触ったときは

もっと柔らかくてふわふわだったのに

このこは毛並みも悪く触るとすぐに骨の感触がした



「これ、食べられるのかな?」

給食の残したパンを鞄に隠していたのを思い出して取り出してみる



給食を残すと先生に怒られてしまうので隠していたのだ。持ち帰って母の苺ジャムをつけてこっそり食べようと思っていたのだけど…晩御飯があまり食べられなくなるし…




小さくちぎって差し出してみると

くんくんと匂いを嗅いで口にいれた

すぐに飲み込んで私のパンに小さな手を伸ばす



「ふふ…明日はちゃんと猫ちゃんの食べ物持ってくるからね?」



.

.

.



それ以来

昼休みか放課後はここに来るのが日課になったのだ。




「はい、どうぞ?」




お手伝いをして貯めていたお金で

キャットフードをこっそり買って部屋に隠してる

一日分づつお菓子を食べた後の缶いっぱいに入れて持っていっている

缶詰めは高くて買えなかったので一番安いキャットフード…それでもすごく重かった。




「これで缶詰めだもんね」




その日ははじめて置き勉をして

ランドセルを空にして初めて学校帰りに寄り道までしてしまった。




それでもこうやって美味しそうに食べるのを見ると良かったと心から思う。

「飼ってあげられなくてごめんね?」

そっと背中を撫でると前よりも柔らかい肌触りにほっと胸を撫で下ろす。




「ニヤ」

わたしがつけてあげた名前を呼ぶと

食べ終わって満足そうに顔を舐めるのをやめて

私の膝にのぼってお昼寝タイム




アパートでペットが飼えない事実を知った時には本当に悲しかったけれど、この時間が本当に幸せ




今日はポカポカと温かく

朝の疲れと満腹感でついつい私もウトウトと目をつぶってしまったのだった

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