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8.月曜日、お留守番しました。【クロ】

8.お留守番しました。



月曜日。どうやらハルは仕事があるみたいだ。

手早く朝食を作り、同時に簡単なおにぎり二つとタッパに惣菜を詰めた。

お弁当ぐらい、居候の身だ。作らせてもらおう。


朝のゴミだしをしてくれるハルを見送ろうと玄関まで行くと、ハルは心配そうにこちらをみつめている。


「戸締りはしっかりしてね」

『問題ない』

「冷蔵庫に食材とか色々入っているから、お昼ごはんたべてね」

『問題ない』

「最近下着泥棒とか出回っているって回覧板に載ってたから気をつけてね」

『問題ない』

「それから、それから」

くいくいと押す。さっさと行ったらどうだ。


「しっかり眠ってるんだよー!」


ハルは本当に心配そうに出かけて行った。


まぁ、普通に考えて留守を見ず知らずの男に任せるのは不安だろうな。


これだけ眠っていると体力が落ちそうだ。

だが、どの運動をおこなっても腹に力を込めることになる。

まだ傷口が塞がっていないのだ。しばらくは安静にするしかないか…。


ハルを見送ると、ベッドに横になりながらテレビをつける。


どうやら、俺が始末した会社の社長が自殺したと報じられていた。

無事仕事が上手くいったことを確認できてよかった。

どうやら、俺が海に沈めた護衛の話は出ていないようだ。


死ぬかもしれないということでディバイスを海に沈めたのは痛かった…。

今俺が持っているのは家の鍵ぐらいなものだ。

大体の買い物はディバイス頼りだったのだから、どうにかしないといけないな。

家に帰れば仕事用のパソコンもあるし、あれを通じて仕事のやりとりもしなければならない。

短時間の移動なら問題はないが、まだ体が完全ではない。少々動いただけでふらつく。

まだ、彼女の世話にならないといけないのがもどかしいが、この借りは必ず返す。


さて、今できることをしよう。

俺に今できるのは家事を手伝うことぐらいか。

昨日干しておいた洗濯物を取り込んで畳んでいく。

女性の服といえど、構造は同じ、畳むのは問題なかった。


………あと残ったのは彼女の下着か。

どうやって畳めばいいのだろう。


そうか、彼女の洋服箪笥を見ればどうやって畳んであるのかわか……。

立ち上がろうとして気づいた。

女性の下着を盗み見ようとする俺の構図。


完璧に変態じゃないか。


俺は彼女の下着は触れないようにした。


洗濯物が片付いたら、次は夕食の準備だ。

あらかた準備をすると、俺は再びベッドに倒れこんだ。

再び、眠気が襲ってきているようだ。


「ただいま!」

ハルの声で起きた。

のそりと起き上がると『お帰り』と書いた。


「あ、洗濯物取り込んで、畳んでくれたの?ありがとう!」

『下着は各自で』

俺は触ってないからな。


彼女が自分の下着を畳んでいる間に、夕食の支度をする。


魚の照り焼きにほうれん草のおしたし、あと卵焼き。そのぐらいな簡素な食事だ。


「いただきます」

ハルは嬉しそうに食べている。


食事が終わると、彼女はお風呂に入るようだ。

しばらくしてさっぱりとしてきたようだ。

正直、汗でべたつく。俺も入りたい。

彼女はその意をくんでくれたようだ。


「クロ、赤いボトルがシャンプーで、青いボトルがリンスね」

『問題ない』

「やっぱり洗ってあげようか?」

『問題ない』

この問題ない、という文章重宝しすぎるな。


久方ぶりのお湯は気持ちがよかった。

水が少々傷にしみたが、何よりもさっぱりできるのはありがたい。


扉の前でそわそわしていたハルが「やっぱり洗おうか?」と声をかけてきたが、万が一の時のために準備していたスケッチブックの『問題ない』を差し出した。



さっぱりとして外に出ると、ハルがタオルとドライヤーを準備していた。


「髪の毛、乾かしてあげる!」

『問題ない』

と書いたスケッチブックを横に置かれた。聞いてくれる様子はない。

俺はしぶしぶ髪を任せた。


風呂に入ってさっぱりすると、再び眠気が襲ってきた。

ここは素直にそれに従おう。


今日も一日何事もなくすんでよかった。



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