盗賊捕縛計画中(2)
「ささっミラ様に挨拶しなさい」
ファートに促されフリルの女の子が少し前に来た。よく見ると青髪のショートカットの頭には折り畳まれて隠れていた猫のような耳があり女の子のお尻から垂れ下がったしっぽがチラチラ。猫で言えば警戒して怯えている状態だが、それでも女の子はニコリと可愛らしくスカートの裾を持って自己紹介をした。
「ユーリと申します、以後お見知りおきを」
可愛らしい見た目とは裏腹に中性的な声で名前を告げたユーリと言った奴隷、丁寧な挨拶を済ませるとファートがさっさと下がれと手でしっしっとユーリを後ろに追いやりおずおずとファートの後ろに下がる。
「どうでしょう?ここは友好の証として今回はお安く提供しますよ!もう夜な夜な怯えて寝る事もないでしょう。とても優秀な奴隷です、如何でしょうか?」
ニタニタと作った嫌らしい顔したファートにミラは悩む事無く言い放つ。
「結構です、私個人奴隷を好みませんので。それに先ほどお話した通り優秀なお二人方を雇いました、私の護衛ならば執事もいますから心配には及びません。どうぞお引き取りを」
そう言ってメイドを呼び帰りを促した、メイドは待ち構えていたらしく素早く反応し何かブツブツ言いたげなファートを部屋から無理矢理追い出そうとする。
「……せっかくのチャンスでしたのに後悔しても知りませんよ」
ファートはそう言って踵を返すとドカドカと部屋を後にした、ユーリはペコリと頭を下げてファートのあとをついていく。
五月蝿かった足跡が聞こえなくなった後、俺とリアは深いため息を同時に吐いた。俺はため息が被ったリアにファートに対する苛立ちを吐き出す。
「何アイツ?犯罪スレスレどころかアウトな臭いプンプンなんだけど」
すかさずリアも同意する。
「うん、グレーどころか真っ黒。あれが敵大将ってわけね」
一方じいちゃんとミラは動じた様子もなくただ互いに一言。
「良いのですか?お嬢様」「あぁ問題はない、駒は揃った」と。
―――――――――――――――
思わぬ乱入があったが作戦再開、ミラが広げた地図から盗賊が隠れているであろう場所を指差した。それは他国と領地の境目に位置しており、それでいてメイヤー領とベテルブルグ領が半々に所有している山であった。盗賊はこの山から侵入し街道を渡るミラ一家を襲ったのだ、そして今も街道を渡る商人や村人達を脅かしている。
この被害は国としての被害としては少なく、決まってメイヤー領にだけ関連される者達が必要以上に狙われている事が判っているらしい。
現状山から来るだろう盗賊を村に向かわせないように出せる全ての兵を使う事で警戒しているが村人も兵も困憊している状態だった。
俺達がやることは至極簡単だった、盗賊がいる場所を調べあげて盗賊を縛り上げ誰が指示してるのか吐かせる事だ。
俺はミラに、はっきりとした場所が分からないのが難点だがそれさえ解れば何て事はない、『時間を止める』事で抵抗出来ずに敵は陥落するだろうと伝えた。
ミラは俺達にあらかた説明し俺の返答を聞いて満足げにふむそうかと言った後、しばらく沈黙するとふと何か気付いたようでキョトンとした表情でこう一言。
「あれ?これ、レージなら簡単な仕事なのか?」
ミラの顔はキョトン顔から何故か悲しそうな顔をする、今まで強敵だと思われた敵は攻撃手段を手に入れた今実は雑魚でしかなかったのだ。ミラの手に入れた駒はどちらも神が与えたの最強の俺とモーリーなのだ、負けるわけがなかった。何ともお粗末な作戦会議となって緊迫した雰囲気はどこ行く風……取り敢えず本日は解散、休む事にし明日から俺とリアは盗賊の所在調査をする事になった。




