モーリーが再会するまで
わしの名前は時実常守、玲二のじいちゃんじゃ。
今日孫がうん年ぶりに帰ってくる、幾つになっても可愛い孫だぁ。
大人になって働いて、就職先がよろしくなかったようで電話越しの覇気の無い声を聴いたときは何ともいたたまれない気持ちになった。
『 れいじぃー、元気かぁ? ? 』
娘から玲二のことは聞いていたから、玲二を傷付けんようにとわざと剽軽な振りをして会話していた。いざ久々にあった玲二は痩せちまってぇ……何だかこっちが悲しくなってなぁ。だがどんな理由にしても孫が帰ってくるのは嬉しい、とにかくいつも通りのじいちゃんでいたかった。田舎はいいもんだぁ、玲二もそんな田舎で身体を癒やして幸せに、元気になってほしい。
……と思っていたんじゃがぁ……
わしが目を離したせいで玲二がいなくなった、急に消えた。
……ついさっきまで後ろにいた、と思うんだがいなかったんじゃ。
振り返った後ろには少しだが真新しい血痕があった、事件にわしの孫は巻き込まれてしまった!
……何故じゃ!……わしが近くにいながら何故気付かなかったのだ!!
田舎じゃこんな事件は大事だった、あっという間にニュースになって広がった。
だが……見つからなかった……わしのすぐ近くで急にいなくなった孫の血痕も少量だった為か、ただの失踪なのではと片付けられてしまった。
そんな筈はないんじゃ!わしはいなくなる瞬間まで話をしていたのだから……そんな事はあり得ないんじゃ!
だがそんな年寄りの戯れ言には誰も聴いてはくれず、わしはただ一人悲しみにくれた。
食事が喉を通らぬ……わしが気付いた時にはもう身体は思うように動かなくなり衰えていた。それでも心は孫を失った絶望に耐えきれずあっという間に寝たきり、さらに弱っていった。
わしは死に際に娘に謝った、娘はわしが悪いわけではないと言ってくれた。嬉しかったがわしの心は晴れず、すまないこんなことになるのならと、暗い深い暗闇に落ちていく意識の中で孫を守れなかった事を悔やんだ。
わしの意識が消えていく――…
その時意識の先の方から眩い光が現れて。一瞬のうちに辺りを光が包み、気がつけばわしは白い部屋とそれはそれは神々しい女神様のそばにいた。
女神様は孫を救って下さり、わしの孫は第二の人生へと向かっているようだった。そしてわしも女神様の救いを受けることとなった。
わしは願った。今度は必ず孫を守ってみせると、だからその力がほしいと。
女神様はわしの願いを叶えて下さった。わしは再び意識がなくなり目が覚めたら、今度は塗装も何もされてない土で固めただけの広い道の脇で倒れていた。腰を上げ周囲を見渡していると急に目の前に薄い画面のようなものが現れ、『こちらがあなたのプロフィールです、念じると表示をON,OFFできます』と表記される。
モーリー 75歳(Lv.1)
神によって作られた人族、強力な固有スキルを持つ。
固有スキル……守る対象にした者の側で強靭な盾となり、あらゆる攻撃も通さない結界生み出す。対象の顔を思い浮かべるだけで使用可能。
ふむ、これが女神様から頂いた能力ですか。早速ですが玲二の顔を思い浮かべてみよう。
………
う~むできないなぁ、玲二がおらんからのぉ~
うーんと悩んでいると画面のわしの顔写真の変化に気が付いた、どうやら見た目が少々違うようだ。
ん?わしの顔が、何だかダンディになっておる気がするのぉ……まぁ、わしは何時でもダンディだが。
ということはもしや、この世界にいるであろう玲二の顔が違っているのかも知れないなぁ。そもそも愛しの孫と合流せないと守ることも出来んしなぁ、何処にいるんだろうか?
そう思いながらわしは画面をあらかた確認し見終わった後、特に有用な情報や使用できる能力等はなかったので画面を切った。当てもないので広い道を進めば人の手が加えられた道なのだから誰かしら人には会えると思いただ真っ直ぐ道を歩きだしたのじゃった。




