ミラの依頼(3)
モーリーとステータス画面の利便性の話をしていたらステータス画面の隠された能力を知った。
モーリーのステータス画面にもアイテム欄はある、ただ手持ちで持っていた分だけが表示されるそうだ。
良くない話ではあるがこういう事があったらしい、モーリーがティエラで食料調達をしに行き商店街を周り、購入する予定の食料の漏れが無いか確認するためにアイテム欄を確認した。
すると購入した果実の名前の横に括弧書きでこう記されていた。
―――毒入り―――と……
慌てて購入した店へ戻ったがその店は既に何も無かったように片付けられた後だった。
モーリーは明らかにミラを狙った犯行なのだと悟り怒りのあまり毒入りの果実をその場に投げつけた。ミラが万が一食べていたら毒は幼い身体をたちまちに蝕むであろう、最悪な事態になることは容易に想像できた。
その後モーリーは領地に戻り片っ端から危険が無いか調べ回った、その一件からは毒の混入の被害は出ていないと言う話だった。
またアイテム欄に関する良い出来事の話だが、立ち寄った美味しい出店の食べ物をアイテム欄から説明を見てみるとたまに隠し味が説明文に載っていたりするらしい、お陰でお抱えシェフの料理が少しずつ美味しくなっているそうだ。
アイテム欄の名前や説明から情報が得られるという事はこの異世界では有益になることが多い。
俺の場合使える魔法の一覧があるから余計便利なんだよ。なんで俺だけ使えなくしたんだ、神よ。
そんな事をうだうだと心の中で考えているとリアがふと何か思い付いたようでモーリーに結界を張るようにお願いすると指を指してこう言った。
「レージ、結界。まねできない?そしたら私が攻撃に専念できるし今後の戦いにも役に立つと思うんだけど……」
その言葉で気持ちは切り替わり、やるべき仕事を優先する。
「確かに……ありがとうリア、気づかなかったよ。よし、ちょっと出来るか試してみるか」
俺はぽんぽんっとリアの肩に軽く手を置いて礼を言うような仕草をして立ち上がり、ガーデンテーブルから離れた場所で結界を見ながら悶々とイメージを膨らます。
……がどうもイメージが決まらない、定まらない。
モーリーの結界は外から中に攻撃は通さないが中から外に向けての攻撃はもちろん通るのだ、それが出来ない全くわからん。
そもそも固有スキルは魔法とは違うものだ、見て真似ることは出来ないようだ。
考えうるイメージでなんとか形になった魔法はドーム状の灰色の結界のような見てくれだけのお粗末なものだ。
……これ大丈夫か? 結界みたいな効果になれば魔法くらいは喰らわない性能になってたらいいなぁ……
イメージが曖昧だからなのかMPが時間を止める時よりもゴリゴリ削れていく……これはヤバい。とりあえずは盾ぐらいになってくれれば一瞬使う位は出来そうなので性能を確かめないと……。
「リア!試しに俺に向かって魔法ぶっぱなしてくれ!!」
「ん~、わかった!いくよ~!!」
ほいっ火の矢という軽い掛け声で5本の火がこちらに飛んでくる!……ちょっ!多っ!!
使えるかどうかわからない結界に向けられた非情な炎に思わず手で止めるような動きをする、それこそ無理な話だが。
そんなビビりまくりの俺の不安は予想外な結果となった。
……え?結界の所で止まってる?
恐る恐る止まった火の矢に結界内から触れると……その場でボンッと弾けた、触れた手の痛みは……ない。
「おおっ! 一応喰らってない!これは……成功なのかっ!?」
さらに火の矢3本に触れてその魔法もその場所で弾けていく。
残りの一本で、ふと触れるのではなくて叩いたらどうなるのかと気になり叩いてみた。
するとその火の矢は叩いた方向……リアに向かって飛んでいくがモーリーの結界で塞がれた。
「ちょ!何すんのよ!あぶないじゃないっ!!」
「あのなぁリア……それはこっちのセリフだよ、もし結界になってなかったら俺魔法喰らってたんだぞ」
「あ……そっか、ごめん」
リアは威勢良く怒ったが真っ当な反論を返され小さくなる、そして何もなかったかのように紅茶を飲み始めた。
「反射可能な結界とはなかなか良い魔法に成りましたね、私のスキルが早速孫の役に立ちましたなっ!」
「良かったな、モーリー」
ほほっと笑うモーリーに優しい目をして言うミラ、そんなミラに私はお嬢様の役に立つ事も大切ですよと返し見つめ合う二人、お前らホント仲いいな。
「これで防御魔法も覚えたし、安心だねっ!」
リアはチェアに座ったまま腰を捻って俺の方を向いてニカッと笑う。そんなリアに俺は渋い顔をして問題点を上げる。
「この魔法何故か異常に魔力を使うんだ、どれだけ結界が持つのか試してみたい。しばらくこのままでいるよ」
俺は胡座をかいて座り込んだ。まだちゃんとした形を伴ってない不安定な魔法なのか、すり減るMPの感覚の中結果出るまで結界内に閉じ籠った。




