ミラの依頼
「……何度もすまないがこれはただの憶測でしかない。私に仕える兵士達も現状維持の為の警備で一杯一杯でな……この件を調べ証拠を掴む為に腕の立つ信頼出来る要員が欲しかったのだ」
そう言ってミラはばつ悪そうな顔をした、そして続けざまに話す。
「この国では奴隷が少ない……国家の上層部が奴隷をあまりよく思っていないからだ。だから奴隷が入ることもなかった、まぁせいぜい労働力として買う所が農家である程度だ。ところが両親が亡くなって以降なぜか奴隷商がこちらに来ることが次第に多くなってな……余りにも不可解なんだ。私の領地は国境からティアラ国までの直通の街道がある。それを欲しがる輩は多いが奴隷商は私の街道では通していない、私の街道を使わぬとしたらこの領地から通ったとしか思えんだ。そしてここの領主は昔から奴隷制度を推進している」
ミラはうつむき、小さな手に力が入り強く握り拳を作った。
「……ただそれだけとは言えるが……王女様と謁見時に2人になった際、私に問い掛けたのだ。『奴隷制度どう思う?』と……王女は何かわかったのだろうが王女が私的に使える者も少ないのか尻尾が掴めないのか……これ以上の御言葉はもらえなかった」
不意にミラは俺の手をとり俺の顔を真っ直ぐ見た。
「レージがここにくるのはほぼ賭けだった!いや、今となってはここにくるのは運命だったに違いないっ!!私はレージの力を信じているっ!私の命を救ったモーリの孫……どうか力を貸してはくれないかっ!!」
ミラは泣いていた。放った言葉は力強く領地の主としてはっきりしたものだったが、両親を失った悔しさと寂しさのその辛さを隠さずに泣く姿は一領主としてではなく一人の幼子としての泣き顔だった。
俺はミラの手を握り返してはっきりと答えた。
「あぁ、もちろん!」
……斯くして俺とリアは盗賊討伐、もとい両親殺害に関する犯人探しが始まった。
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「なんと!!レージの能力は全属性魔法使いなのか!!?」
ミラは声を荒げた。
俺達は屋敷外の広い庭に集まっていた。
いくらじいちゃんの孫だから信じていると言われても俺の事は今日あっただけの存在だ、まずは互いに情報交換、もとい状況整理からだ。その為にまずは俺とリアの能力とじいちゃんの能力を確認するために庭に出た。屋敷を囲うように設置された塀には風の結界が張られており、塀の中にあるこの庭は魔法を披露するにも充分な広さがある。
「そうなんだ。……といっても覚えた魔法だけ、魔法を発動する為の言葉とその魔法の現象やイメージがわからないと使えないかな」
「なるほど! では魔法書があればその魔法は簡単に使えてしまうわけだなっ! 凄いな! レージは!!」
ミラはキラキラとした瞳で俺を誉めて、その顔のままリアを見た。
「それから貴方はもしや魔法庁のリアさんでは?」
真面目に話を聞いてはいたが少し暇そうにしていたリアが急に声を掛けられなぜか嬉しそうな反応をする。
「え?私を知ってるの?」
「仕事を手伝いで国で何度か見たことがあったからな!しかし魔法庁の者がこの仕事を受けて頂けるのは心強い!リアさんもギルドの仕事になりますがどうか力を貸して下さい!!」
そういってミラは両の手で握手を求める。どうやらリアは俺とミラがこんこんと話をしていた為、部外者扱いされたと思っていたのか凄く嬉しそうに「えへんっ!まっかせてよ~」とドヤ顔をする。




