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メイヤー領へ



「メイヤー領へ行こうと思う」



宿に戻った俺はリアにそう言った。

リアは帰る途中で見つけた露店で気に入った小物やらお菓子やらを眺めたりお菓子をつまみながらクッションを抱き、ゴロゴロしながらこちらを見て答えた。


「いきなりどうしたの?…というかなんでメイヤー領を知ってるの?」


リアは少し驚いたようで身体を起こす。


「ギルドの掲示板の落書き、あれに書かれてたんだ」


「え!?あれ古代文字だったの!?……私、それなりに読めるのに分かんないなんて……」


と、リアはグチグチ悩み出したがそんなリアを無視して話を続けた。



「どちらにしろ、そろそろ北上してもいい頃だと思うんだ。リアのお陰である程度剣の腕が上がってるとは思うし…流石にこの国に留まり続けるのももう限界だと思う」



リア購入したジュースを一口飲み「んー」と顎に手を当てて少し悩んだ後。



「……確かにねぇ……。よし!行きましょう!!メイヤー領へ!!!そうと決まれば旅準備♪明日は沢山買い込まなきゃね!!」



そう言って「寝る準備しなきゃ~!」と立ち上がりさっさとお風呂に入りに行くリア。



「あっ!リア!!まだ話はっ!」(バタンッ)



話のそこそこにリアは行ってしまったが、机の上にはさっきまでリアが食べていた物や今日買った物が沢山あった。俺は買い込んだ物を魔法袋にしまいながら、まだリアは買い込むつもりなんだなぁ…とため息を溢した。




ーーーーーーー





朝。


「起きてよー!」と覗き込むリア。寝ぼけた状態でここ最近の日課を始める……それはとても悪いこと。



そう、俺は時を止めた。



その時間は約1時間。少し困った表現をしたリア、大きな胸はこちらを覗き込む体制で前屈みになっている為より見事な果実の様に垂れ下がり豊満なその胸の谷間を露にしている。

垂れ下がった赤い髪は朝の光で透けてキラキラ輝いてとても美しかった。そんな止まったままのリアの前で……



「はあぁあ~~」



布団にくるまり腑抜けた声を出す、全く!これがたまらない!!


何かをする事もない、ただ2度寝をした。

止めた時間は稼働すれば再び動き出すのだ。

指一本でさえリアに何かしようなんざ思わなかった、動き出せば現象が求めて動きだし、リアが時を止めて何かをした事にすぐ気付く。

そんな事したらこの関係が終わってしまう。

俺からリアに触れることはない、リアが俺から離れてしまう。


わかっているから俺はなにもしなかった。

まぁ……やってしまった事もあるが、止まったままのリアの髪に少し触れた程度の事だけだ。


……あと5分、あと10分、横になりたいと思った分だけ時間を止める様になった俺は覗き込んだままのリアを眺めながらゴロゴロする事がすっかり日課になってしまった。


ダラダラと時を止めながら、その魔法による消耗によりズルズルと無くなる魔力の減っていく感覚が倦怠感を襲った。



「動きたくねぇ~……」



どれくらいの時を止めていたかがわからないがいつも通り、起きてもいい具合に目が覚めたのを確認して時間を止めるのをやめた。



「……おはよう」



俺はとっくに起きているが除き込むリアにそう投げ掛ける。

リアはこちらを除き込むのを止め踵を返して「早く用意してねー」とさっさと何処かへ行ってしまった。


朝のリアは前までは必死に起こしに来て早く着替えろだの、今日の昼はどこで食べるか?だの何だの着替えは覗かないが側にいたのに、ここのところすぐ何処かへいってしまう。


まぁ、俺がすぐ起きるようになったからか……。


リアに言われる前に手早く用意してリアの元へ行く。いつもと変わらぬ毎日の朝、手招きされ2人で食べる朝食。

俺にとって一番守りたいものだった、だがきっとリアは俺が捕まる事のない安全な地へ案内する為にいるだけだ。


この日々を変えたくないが変わらなくてはいけない。


俺は今さらだがこの宿で過ごす日々も今日が最後なのかと気がついた、少し寂しい気もするが掲示板に日本語で書かれた依頼状が気にならない訳がなかった。()()()……つまり同じ転生者ってことだ、会えるのならば会うべきだと思った。

どう転んだとしても同じ転生者としての意見を得れるので損はないだろう……と思いたい。


リアが「今日も買い物ねっ♪」と意気込み俺の手を繋ぎ外へと促してくる。俺は「はいはい」と返事をしながら手の引く方へと導かれ今まで住んでいた宿を後にした。

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