VSライラ
照りつける日が少し身体を暑くする時間。俺は武器を構え、ライラに睨みを利かしていた。ライラは俺と戦うのを楽しみにしていたのか何故か微笑、不適な笑みを浮かべている。
ライラは真剣を取り出し綺麗な構えで武器を持ち此方を真っ直ぐ見ているが、目は爛々とさせている。構えた武器に練習用の武器や木刀などではなく何故か真剣だった。
ライラに連れてかれた豪邸で、話す間もなく訓練所として利用しているであろう屋敷の庭に案内される。そしてライラは直ぐ様「さぁ、やるぞ」と剣を構えたのだ。リアと話していた作戦のその一はこの時点で叶わぬものとなった。単純な話でリアが気を引くように案内された屋敷の中でライラに引っ付き、屋敷を案内させることで時間を稼いで先延ばしにする作戦だった。
これをすれば今日の手合わせは後日に出来るだろう、そうしたい理由があったのだ。
リアに剣術の稽古と演技指導を受けてまだ1週間といったところだ、その為まだ剣士らしい動きが出来ておらず演技力のない俺ではリアの目ではまだ『違和感のある素早い動き』の状態らしい。
この状態で戦えば魔法だとバレる可能性が少なからずあった。
故に先延ばし作戦をしたかったのだが……
嬉々とした表情でライラは俺を見ている。リアは仕方ないといった落胆のため息を付き審判をやるのだろうか、俺とライラが見通せる位置に移動して俺にアイコンタクトを送ってきた……やっぱり、やるしかないのか。
「レジ君! 私は強いよ!! 本気で掛かるといい!!」
力強い声で俺を鼓舞するライラ、油断は出来ない、一瞬の手合わせという名の死闘が始まる。
「始めっ!!」
リアが始まりを告げる!! 俺の剣術では勝てない事は決まっているが勝たねばリアと旅が出来なくなる! そんな事になったら俺はこの先ヤバいかもしれない! だからやっぱり時間を止める!!
「うおおおぉおぉぉっ!!!!!」
時間を止めた俺はライラの剣の根元を魔法袋に入ってた固そうな武器(ダンジョンで手に入れた物)でひたすら連打するように叩く! いくら自他共に強いライラと言えど何度も蓄積された打撃力なら剣を弾く事も可能な筈だ! あとはリアの演技指導の通りの動きを見せるように魔法の解除したり発動したりして切り付けた様なポーズをしながら魔法を解除する。
ガッ!!…………カランカラン……
「なっ!!?……何が!?」
驚愕の声を上げるライラ、手を見つめ後ろに飛ばされた剣の方に振り向いた。
「……なんて重い一撃だ……。まるで何度も剣を叩かれた様な激しい振動が伝わって思わず剣を放してしまった……完敗だよ。リア様の言うとおり君は素晴らしい剣士の様だね。レジ君、いやレジ殿」
「レジでいいですよ、俺はまだまだですから。その代わり俺もライラと呼んでもいいですか?」
「ああ、そう呼んでくれ」
そう言ってライラは俺に握手を求めてくる、俺はライラと握手を交わす。
「今日はありがとうございました、ライラ」
「ああ、また戦える日を楽しみにしている!」
……や、勘弁して下さい……と言いたいところだったがその言葉をグッと我慢し、「もう一戦!」等と言われる前にライラと早々に別れを告げて宿に戻った。
……今日は本当に疲れた…




