マンドラゴラの収穫(2)
日が落ちるまで収穫作業をして暫く、その日の分の給料を貰いカーヤと別れる。何故かカーヤと一緒に手を振って見送る収穫されたマンドラゴラ達を見届けながら宿に戻った。
「今日は中々大変だったね!」
泥で少し汚れたリアが上目遣いでこちらを覗き込むように無邪気に様子を伺ってくる、少しドキッとして目をそらし適当に相槌を打った。
「宿で休むには早いから剣術見てあげる!」
あぁ、そうだな……ってんん!? この後ですか? 収穫でヘトヘトなんだけど……と思ったが適当に相槌を打ってしまった為やる気満々なリアに文句も言えず仕方なしに剣術の指導を受ける事にした。
剣術の指導と言っても最初はダンジョンで話していた技の練習だった。
的となった木に対して時間を止め、攻撃し、切った様なポーズで時間を進める。まるで早業で仕留める一端の剣士に見える様にリアが演技指導する。
秒よりも細かい単位で時間を進めたり止めたりしてそれらしく見えるようにリアは俺に指南した。
その後は本当に剣術指導。木刀を持って素振りをし、剣の構えや太刀筋を見てもらう、時間はあっという間に過ぎて暗くなった。
「今日はこれくらいにしましょっ!」
上機嫌な声のリア。ヘトヘトになった俺は終わりを告げられてその場にドサッとへたり込む。
そんな俺にリアは手を貸し宿に戻るわよと促した。肩を借りて宿に戻った俺はギリギリまでしごかれた身体の全てが限界で何も出来ず高級宿の大浴場を楽しむ事もなくサッと風呂に入り泥の様に眠った。一応同じ部屋でリアが寝ているがそんな事も気にならない位一瞬で眠りにつく。
朝、目が覚めると隣のベッドですうすうと寝息を立てて寝ているリアが少しあられもない格好で寝ていて驚き、たじろいで思わず後ろに下がってしまいベッドに踵をぶつけ地道に痛いダメージを貰う。その物音で寝ていたリアは目を覚まし寝惚け眼で「おはよう」と挨拶をした、リアはネグリジェに似た少しフリルの付いたワンピースとショートパンツのパジャマを着ていた。
俺は着替える素振りをしてそっぽを向き何気なくパジャマの事を聞くとマディに頼んで良さそうな物を買ってきてもらったらしい、俺はそんな事まで頼めるのかと驚きながらも俺の好みのナイスな寝間着に心の中でマディを褒め称えた。
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朝食を取り用意をしてカーヤの元へ、2日目のマンドラゴラの収穫を開始する。驚いた事に最初と違い格段に時間止めれるようになり収穫スピードが上がっていた。収穫されたマンドラゴラはいつの間にか土から出ている事に戸惑いつつも外の世界への解放感からかそれぞれが散り散りバラバラに何処かへ行こうとする。
リアはそんなマンドラゴラを動き回る前に捕まえては束にしていった。
「…ふぅっ! 今日はこんなもんか」
「レジ! お疲れ様っ!!」
お互い土まみれになりながら1日の収穫作業を終える、成果としては昨日の二倍収穫出来た。時間を止める魔法の感覚も昨日に比べれば慣れているから昨日よりかは収穫出来ると思ってたが予想以上の収穫量だった。
「……思った以上に収穫できたな、このペースなら長くても1ヶ月で収穫出来そうだ」
「? レジならそんなに期間掛からないと思うわよ」
「? どういう事だ?」
リアの話を聞くところにはマンドラゴラは一応魔物。収穫といえど捕獲任務に似ているらしく、それなりの経験値が入るらしい。ましてや俺はゴーレムを倒しているにしても現状のレベルはかなり低く、このクエストは俺を強化するのにうってつけだった。
収穫最終日には上がりはしないだろうがほぼ倍々で能力値が上がるのではないかとリアは思っていたようだ。
収穫が終わりカーヤに報告をし、仕事終わりにMPを搾り取るように剣術の演技指導、そして体力の限界までリアに稽古を受ける。
そんな日常のある朝の出来事だった、注意すべきある人物が現れた。
「やあ! リア様、レジ君。この宿を利用してくれてるようで嬉しいよ! クエストは順調かな? レジ君先日約束していた手合わせの事なんだがそろそろ予定は取れないだろうか? 是非相手をして貰いたくてね」
ライラは朝にも関わらずビシッと鎧で決めて、キビキビした動きで俺達に話し掛けてきた。俺はどうすればいいか? という気持ちを伝える為リアに目をやるとリアは大丈夫と言わんばかりに頷いた。
「ライラさん、おはようございます。その話しでしたら今日の昼頃どうでしょうか?」
「昼頃か、わかった。リア様、朝早い中失礼しました。レジ君を昼頃お借りしますがよろしくお願いいたします」
「わかったわ」
そんな少ない会話を終えて去っていったライラ。居なくなるまでその背中を目で追って居なくなった頃リアに問いかける。
「リア、ライラはどうやって倒せばいい?」
「そうね、とりあえず今日のクエストはやめて作戦会議と行きましょ……」
今日のクエストを休む事をカーヤに伝えに一端農地へ。その後宿に戻り対ライラ戦、作戦会議を開始した。




