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マンドラゴラの収穫




「はいはいどぉも~。あ、ギルドの方ですかぁ~?」



瓶底眼鏡を掛けた魔法使いというよりは魔女の様な三つ編み姿の女性が気の抜けた声で俺達に問いかける。

俺達が受けたクエストはティエラ国内の端に位置して、その場所はほぼ農地ばかりであった。そんな畑ばかりのただッ広い地にポツンと建つ小さなレンガ造りの家に依頼主がいた。



「いやいやこんな早く依頼を受けてくれる人が来るとは思いませんでした~」



そう言いながら家の中に案内する。

家の中はごちゃごちゃしていて、瓶に詰められた薬草や花、乾燥した虫など見た目が綺麗な物から気持ち悪い物が棚にびっしりと歩くスペース以外には本や丸められた何かの洋紙が雑多に置いてある。



「さっそくですが依頼の内容を話してもよろしいですかぁ~?」



魔女の様な女性は部屋の奥にある色々置かれてスペースの無いテーブルを手でテーブル端ギリギリまで掻き分けるようにして物をどかしてスペースを作り座るように促した。

俺達は足元に気を付けながらテーブル近くの丸椅子に座ると「ささ!どぉぞ~」と鼻がスーッとする爽やかなお茶を出す。匂いはいいが、お茶の入っている器はそれぞれバラバラで俺のは何故かビーカーだった。



「あぁ!申し遅れましたっ!私の名前はカーヤと申します」



ニコニコと笑ったカーヤは「以後お見知りおきに~」とゆったりとした気の抜けた声で俺達の顔を交互に見た。



「俺はレジ」「私はリアです」



「うんうん。レジくんとリアちゃんねぇ~! 依頼内容は簡単!! マンドラゴラの叫び声を聴かずに抜いて収穫するだけ。で?どちらが依頼をしてくれるのかな?見た感じ魔法使いのリアちゃんかな?」



「いえ、俺がやります」



そういうと『?』という文字が見えるほど分かりやすく首を傾げて俺の姿をまじまじ見ながら質問をする。



「んー? レジくんはその……剣士じゃないのかな? 魔法は……」



「魔法は使()()()()です。ただ、使わずに収穫出来そうなので依頼を受けました」



「んん~~? どうゆうことかな? さっぱりわからないですがぁ……ま! 出来そうなら外の畑()()お願いしますねぇ~!」



「そのマンドラゴラの畑は何処に有るんですか?」



()()()()ですよぉ~?」



そう言ってカーヤは指を窓の外を指す。この家の外はだだっ広い畑が広がっているだけだ、まさか……これ全部?



「……この外の畑……全部マンドラゴラですか?」



「んん~そうだよぉ!よろしくねぇ」



ニコニコとした表情で答えるカーヤはのんびりとした動きでお茶を飲む、俺は途方もない量の収穫依頼を受けたようで顔が引きつった。




ーーーーーーーーーーー




出されたお茶を飲み干すと早速作業に取り掛かることにした。

隣を見るとリアが頑張れと言ってる様に両手を拳にしてエールを送っている、あ……そうか、これ俺しか出来ない依頼だったか……。



「……まさかこんな依頼だったとはな。リアは俺が収穫してる間何してるんだ?」



「私も手伝うわよ? ……と言っても、束にして纏めたり泥払ったりしか出来ないけど……」



「あぁそうか、叫ばなければ普通の野菜と同じだもんな」



「収穫はレジしか出来ないから頑張って!」



「まぁ……そうだよな。んじゃっ! やりますか」



斯くして、アホみたいに広がっているマンドラゴラ畑を手に付けることにした。


マンドラゴラを収穫する方法は魔法で時間を止めるだけだ、時間を止めて引っこ抜く。その単純作業であった。

引っこ抜かれた勢いで叫ぶマンドラゴラは引っこ抜かれたことに気付かずドンドン収穫されていく。


とはいえ大体20秒ほど時間を止める能力しかない俺は引っこ抜いてはMPを回復するまで休む繰り返しだった。



「キャーーー!!!」



数分経った後、急に悲鳴を聞く。慌てて悲鳴がした方に駆け寄るとリアが尻餅ついて怯えていた。



「リア! 大丈夫か!!?」



「マンドラゴラが……マンドラゴラが動いてる!!」



リアはマンドラゴラを見て腰を抜かして驚いていた。

リアの話ではマンドラゴラが動いていることが無いらしい。



「? マンドラゴラって動かないのか?」



「普通は動かないよ!!!」



リアは必死に訴えてきた。基本は目を瞑り、微動だにしないらしい。だが、俺が収穫したマンドラゴラは目を開け、動いて回る物もいた。

リアは元気に動き回るマンドラゴラを怖がりながら草の部分を紐で束ねていく。


何故か動き回るマンドラゴラ。不思議に思いながら収穫していた所暫くしてカーヤが家から出てきた。



「おやおやぁ~? 初めてみる光景ですねぇ」



カーヤは束になりながらもウゴウゴ動くマンドラゴラに驚いた。



「何と言えばいいか……新鮮といった感じですねぇ!うんうん、一本貰えますか? ちょっと調理してみたいです」



そう言ってカーヤはマンドラゴラを一本持っていく。「ついでに休憩がてらマンドラゴラ食べませんか?」と聞かれた為、動くマンドラゴラを食べる気にはならないがリアがマンドラゴラはそれなりに美味しいと言ったのもあってその調理を見ることにした。


カーヤに捕まれたマンドラゴラはカーヤによろしくと挨拶するように手?(というか根っ子)を挙げていた。そしてカーヤがまな板に置くと「もう、好きにしろ……」と言わんばかりに大人しくなりまさしくまな板の鯉状態だった。


そして出来上がったマンドラゴラ煮は予想外に美味しかった。

カブのような、じゃがいものような……ホクホクとして甘味があってそれでいてあっさりとした味だった。


……しいて悪いところをのべるとぶつ切りな為、もとの姿が分かるのが食べずらかった。

カーヤはふむふむ、これは! なるほど!と唸り、ガツガツと食べていた、食べ終わってから一言。



「いつものマンドラゴラより美味しさが違いますね! 甘味も口当たりも断然良くなってます。報酬は弾みますから出来れば全て収穫して下さい!」



……どうやら普通のマンドラゴラより美味しくなっているようだ。

報酬が弾むのは嬉しいが相当大変な収穫になることは目に見えているので何とも言えない気持ちになった。



大変お待たせしました!



完全復帰宣言させてもらいます!!



次回もよろしくお願いいたします!!

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