ギルドで初クエスト
結局のところ2人部屋にした理由が髪乾かしに行く為に俺のとこにくるからそれなら1部屋でいいといった安直な理由だった。
リアは乾いたサラサラの髪を自慢するかの様に見せびらかして、「すっごく綺麗になった!流石ね!ありがとっ♪」といって早々ベッドで寝てしまう。……ま、そうですよね……と思いながら俺も隣にあるもう一つのベッドで渋々眠ったのだった。
ーーーーーーーーー
次の日、俺とリアはギルドに登録するという最初の目標を繰り上げしたのだが今後の事は何も決めていないので、今後について話す事になった。俺は『犯罪者』というレッテルが付いている為、できるだけセルディア王国から離れるのは大前提だった。
リアの話では、この国に入った時点で早々捕まる事にはならないとは思うが隣国である為セルディアとの交流があり、油断は出来なかった。
だからといって直ぐに次の国に行くのは更に危険であることが分かった。
元々脱出する際に行ける国は2つ合ったらしい。この国と風の国である。
しかし、風の国は命からがらで出てきた俺達が向かうには出てくる魔物も強く困難であった。カカの村でしっかりと用意して出発すれば可能だったと思われたがそれも叶わず必然的にここに来たという訳だ。
そ れじゃあここも危険じゃないか!と思われたがそうではないらしい。理由は国側がその者を捕まえるとなると魔法庁の許可を通さねばならないからだ。魔法庁……そう、脱出を促したアーヴィンさんが許可を出す筈がないのだ。そもそも、許可を出すに最低でもその事件の調査等を経てからになる為最低でも1ヶ月は掛かるらしい。父の事だからゆっくり調べて3ヶ月は猶予が有るとリアは確信している。
じゃあそのうちに今逃げるという手を取ることは出来ないらしい。
先ほど言ったとおり、風の国方面は少々魔物が強いらしく、その先の国に行くとなると魔族領から一番近い国に行くことになり、今の俺達では太刀打ち出来ないそうだ。
魔族領付近では頻繁に魔物と人族の衝突があり、争いは絶えなく、その為一番ギルドが栄えているがその分討伐対象の魔物も半端なく強いらしい。ギルドでの仕事が困難ならば俺がギルドで稼ぎながら細々と過ごす事もままならないだろう。
当面の目標なのだが、先も進めるほど強くなければ話にならないので最大で3ヶ月間修行も兼ねてギルドの仕事をする事になった。
ギルドのクエストを達成するだけでも能力は上がるらしく、ダンジョン攻略により、いきなりにC-上がった事と『ダンジョン攻略者』の称号を得た為今の俺達はランク効果で能力が上がりやすく、称号効果で能力が下がりにくいらしい。
……? 下がりにくい? 不思議に思った俺は質問した。RPG同じく称号があると経験値ボーナスがあると言うのはわかったが、マイナスになるなんて理解出来なかった。
「能力が下がるなんてあるのか?」
「有るに決まってるじゃない、歳が来たら下がるわよ。いつまでも強いおじいちゃんおばあちゃんなんて異常でしょ?」
言われて確かにと納得する。ムキムキマッチョなゴリゴリアーヴィンさんがおじいちゃんになってもそんな姿だったら……恐すぎる。思わず考えただけでブルッと身震いをした。
そして同時にふと思った事を口にする。
「ん? ……じゃあ下がりにくくなるってことはこの称号があると強いままでいられるってことか?」
「そうよ、ギルドにカードを返却しない限り歳をとってもある程度はそのままでいられるわ」
「という訳だから!バンバン仕事して能力上げるわよ!夜は稽古ね!!」と意気込みたっぷりなリアは話も追々にギルドに行くことにする。というか無理矢理引っ張りギルドに連れてかれる。いきなりの行動で相変わらず突拍子もない、やれやれと思いながらも引っ張られながらついていった。
ギルドにて、掲示板を見る。
いくらランクがCに成っているとはいえ形だけだ、張り出されたリストから俺達の能力に合った仕事があるか探す。
掲示板には沢山の仕事が張り出されている、こんなに沢山あると分からなくなりそうだがよく見ると掲示板に出された仕事は魔物を討伐するものと下水道掃除等の日常的に募集している雑務に分けて掲示してあった。
期間限定クエストは目立つところに張り出されている。
『なんとしてでも美味しいお肉を!レッドバッファロー討伐!!』
『家畜化計画!レッドバッファロー捕獲!!』
……うん、これは無理だな、こういう仕事はいくらCランクから受けれると言えどやめておこう。
リアもレッドバッファローのリストを見て何故か両手頭を隠すように抑え縮こまっている。うん、あれは怖かったよな……けど頭隠しても全身ほぼ赤色だから意味無いと思う。
……さて、他に何か無いかと見てみるが、いまいち良いのがなく決めかねていとリアが雑務の掲示板の方に見つけたらしい。
『マンドラゴラの収穫の手伝い』
「マンドラゴラ……ってあれか引っこ抜くとキャー叫んで聞いたら死んでしまうという……」
「そうそれ、最悪そうなるって奴なんだけどね。だいたい合ってるわ」
「これヤバくないか?下に風魔法の音遮断等使えるもののみって記載されてるし」
「だからこのクエストにしようと思って!」
俺ははて? と思いながら小首を傾げているとリアはニタリとキメ顔で「レジの早業があるじゃない」と一言言った。
「はやわざ……?」
「そうっ!まだわからないの? 叫ぶ前に縛り上げちゃえばいいのよ!レジなら出来るでしょっ♪(魔法で)」
口ぱくで『魔法で』と言われてあぁと思った。確かにそれならば叫び声を聞くこともなく収穫が可能だろう。
俺の魔力も上がりそうだし確かにこの仕事が良さそうだ。
早速この張り紙をカウンターに持っていきクエストを受ける事にした。この仕事は今直ぐにでも向かって欲しいとの事、場所は案内するらしい。言われるがまま案内してもらう事にした。
初めてのクエストだ、内心ドキドキする。




