次の国ティエラ
「さぁ、脱出しましょ!」
「そうだな……ってリア、何処に脱出する通路があるんだ? ボス倒したら出来るんだよな」
俺はてっきり通路出来るっていうから、何かこうゴゴゴッて壁が動いて階段が出来たりするもんだと思ったがそれらしき事が起きもしないし通路も引き返す道しか存在していない。
先ほどあった宝だって全て魔法袋の中にすっきり収納され、今いる場所は最早がらんどうな部屋だけが残されている。
……あれ?これ、わざわざ正規の入り口から来た攻略者とかいたら宝ゼロだからものすごく可哀想じゃね?
「というかリア、今思ったんだが。ここの宝全部持ってかんでもいいんじゃないのか?」
何か探していたリアが急に振り返り声を荒げた。
「何いってんのよ! 発見者であり、攻略者よ。宝を全て貰う権利はあるわ」
滅茶苦茶怒りだした、リア。思わず尻込む。
「そういうものなのか」
更に興奮して話し出すリア、そんなに宝が嬉しいらしい。
分かったから落ち着いて欲しい。
「そうよ! ……魔法袋持ってる冒険者は袋に入るだけ持って帰るもの。だからレージの魔法は凄く便利なのよ!」
「そうなのか……ん? 魔法袋って入る制限あるもんなのか?」
「そうよ? 使用しないと分からないけど大なり小なり大幅な差があるみたい」
おっ、落ち着いたか。それにしても、この魔法袋もチート使用なんだな。
「あ!魔法袋!!!!」
何かを思い出したリアが突然大きな声を上げる。
「魔法袋がどうかしたか?」
「違うの!そうじゃなくて……確かにその事なんだけど、手に入れた宝に魔法袋なかった?」
ん?あぁ、そうかリア欲しいよな。と思った俺はちょっと待ってくれといいながら魔法袋の次元に手を突っ込み宝の中に無いか探す。
おっ、あったあった。
「ほい、リア」
ポンと投げてリアに渡す。そしたら何故か返ってきた。ベシッと首下辺りに魔法袋が当たり、慌ててそれをキャッチする。
「や……レージが使いなさいよ」
どういう事だ? 魔法があるのに使えとは……と思わず首を傾げると、リアがため息混じりに答えた。
「はぁ……レージ、あんた追われてる身じゃない。魔法袋の魔法、公の場でホイホイ使ったら即効でバレるでしょ。だからそれで誤魔化して使いなさいよ」
あ、そういう事か、なるほど。手に持った魔法袋の袋を開け何気なく手を突っ込む……おおっ!俺の魔法と感覚似てる!! 袋の中で時空の歪みも出てる! ソックリだ!!
確かにこれなら大丈夫だなと満足し腰に取れないようくくりつける。見計らったタイミングでリアは続けて話す。
「それから、バッジと身分証。身ばれしないように魔法袋にしまいなさい」
危なかった……確かに俺はポケットに入れっぱなしだった、コレが原因で捕まるとか洒落にならん。
しかし、結構雑な扱いで良く逃げてるとき落ちなかったなと思いつつポケットにあるバッジと身分証を魔法袋に閉まった、この二つは俺の容疑が晴れるまではもう使う事が無いだろう……。悲しいな。
「リア、他にはもう無いか!? このまま行っても大丈夫か?」
こんだけボロが出るならまだあるかも知れないとリアに問いただす。
リアはんーと悩んだポーズをしていたと思ったら急に剣士にならない?と言い出した。
「どうしてだ?」
「私達二人パーティーでしょ?今まで魔法剣士と魔法使いという分類で戦ってたけれど、今はもうレージが魔法使えないでしょ」
……それで、剣士にというのは安直過ぎる。俺は剣の握り方しか知らないぺーぺーだ、ボロが出ておしまいだと思った。
「俺が剣士なんかしても素人の太刀筋でバレるだろ」
「レージの魔法を利用して剣士のフリをしながら戦ってほしいのよ」
ん? なんだそれ。頭の上にたくさんクエスチョンマークが付く。
何を言ってるのか理解出来ない、魔法で剣士のフリをする?
「この動きを見て」
そう言うとリアは走り込み何も無いところに切り掛かりそのまま通りすぎる。
素早い太刀筋、何も無いところに敵でもいたら切られた事に気が付かないんじゃないかという滑らかな攻撃。
リアの剣士としての技術はやはり凄いと感じたが、この動きがどうしたのだろう?
「レージ、見たよね? コレを魔法で真似て欲しいの」
や、魔法使っても無理でしょ、真似る魔法でも作れというのですか? 何を言ってるんですかリアさん。
やっぱり理解不能な事だったので棒立ちのまま呆けた顔で悩む。
「何て言えば……えっと、走り出したら時間を止める魔法で時間を止めて、剣で攻撃をして相手を追い抜かしてから切ったポーズをして時間を進める……そしたら、そんな感じの動きに見えると思うんだけど……とりあえず、ココを出てから木とか的で練習するべきよね」
あ、そうだよ。話がどんどん本質から擦れてたよ。
「リア。で、どうやって出るんだ?」
「それなんだけどね、この壁に突き出た宝玉に手が振れると……」
宝玉は軽く光それと共に足元に魔法陣が出来る!!
おおっ! 魔法陣! 初めて見た!!
光輝く魔法の中でリアがそんな俺を見てフフッと笑ったあと続けて設定する。
「もう一度宝玉に振れると地上に出れるんだけど……さて、分かる所に出るといいんだけど……」
リアが宝玉に振れると同時に魔法陣は強く光った。
あまりの光に目を強く閉じ、顔をしかめる。
光が和らいだと思ったら、目の前には一面を埋め尽くす緑の大平原と背後には太陽を浴び、葉の隙間からキラキラと光が差し込み爽やかな風を送り込む木々。
そして、大平原の先には緑の大きな蔦で出来たドーム状の大きなな建物らしきものがあった。
それを見てリアが指を指す。
「レージ! あの緑が次の国、ティエラよ! こんな近くに出れるなんてね!!」
俺達はセルディア王国の脱出から暫くしてようやく次の国であるティエラに到着したのであった。




