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次の国まで(6)


ボス部屋の扉を開いた。

生唾を飲み込み、目の前に君臨する敵と対峙する。


一歩、また一歩と進みながら、俺はあるものを使う。

MPポーション、それも2つ。

一気に飲みほし、空瓶を投げ捨てた。

MPは既にある状態で飲んだ為か、過剰に魔力が作られる。

その効果は副作用として激しく頭を痛め刺激する。

更には吐き気、MPは増えているのに身体は体力を奪われたようにどっと重い。


敵を見据える、ゴーレムは動かない。

バクバクと心臓の鼓動が煩くて頭に響く。


ヤバい、ふらふらしてきた。それでもゴーレムの姿だけは目をそらしはしない。


ゴーレムは赤い核を光らせ、右腕を俺に向けて振り下ろす。


動いた!


すかさず俺は時を止める。


モノクロの時が止まったこの世界。

ゴーレムは腕を振り下ろしたまま動かない。


止めれる時間は少ない! 止めれる時間の限界まで攻撃を仕掛ける!!


短剣を取り出し、振り下ろした体制で下がった頭の核に短剣を振り下ろす。


ピッケルの様にガシガシと何度も核に突き刺した、MPが切れるギリギリまで。


時が止まっている為、ダメージが入ってるのかは全くといってわからないどんなに指し続けても音もならない。


色も音も無い空間で、数十秒。

MPが尽きる瞬間にゴーレムが倒れる事を考え、ゴーレムの横側に短剣を持ったまま慌てて逃げる。


画面が切り替わるかの様に全てに色がつく。

そのタイミングでガガガガッと何回分の音が聞こえたのか、重なって聞こえる数多の斬擊音、そして砕ける音。



その後、ゴーレムはガラガラと音を立てて瓦礫と砂になる。


勝った!!



その戦いは一瞬に見えただろうが、俺にはとても長く感じた。

たった数十秒、その為に俺の全ての力を出し尽くした。


カチンッと鞘に短剣を収め、それと同時に力が抜けて尻餅をつく。



「……流石にきっつ」



セーフティゾーンにいたリアが駆け寄る。



「レージ!!!」



俺は後ろから来るリアの方に振り返り一言。



「何とかしたぞ」



言葉を発したとたん頭が圧迫されるような痛み。

あれ?急に辺りが暗く。身体が……



ドサリッ



俺は倒れた。






目を覚ますとリアの膝に頭を乗せて寝ていた、心配そうなリアが俺を見ている。

膝枕! 何て凄い!! 近くにリアの胸と顔がある、太腿と胸の膨らみと美少女の3大効果で思わずドキッと心臓が跳ねる、顔は赤くなっているのではないだろうか。


「……や、やあ」



「やあじゃないわよ、無茶な事して。どう考えてもボロボロじゃない」



「そうかな?気持ちとしてはかなり回復しているよ」


目の前に見えている女の2つの果実を見て思わず顔は緩くなる。

そんな俺の緩みきった顔を見てリアが何で回復していたのか気がつき、徐々に顔を赤くする。

あ! リアさん、そんな! 太腿が! 俺の膝枕が! 至高の光景が!!


リアは膝上に置いていた俺の頭を手で押し、さっさと立ち上がり距離を置く。

ゴンッという鈍い音と地味に痛い程度のダメージが後頭部に襲う。


……痛い、ボロボロだって心配してくれた割りにこの仕打ち。


大の字のままで暫くショックで放心状態だったが、ちぇーと言いながら立ち上がると同時に急激な吐き気、そしてその場に腹に納めた筈の中身をぶちまけた。

それを見てリアは駆け寄ろうとしたが手で静止を掛け、俺はウォーターで口と顔を洗い魔法袋から拭くものを取り出し顔を吹いた。



「……すまん。もう大丈夫だ」



汚れがないか確認し落ち着いたところでリアに一声かける。



「……確かに少し顔色良くなってるから大丈夫そうね。動けるようなら外に脱出しましょ」



少し冷たい態度で話すリア。

ん?リアの顔、泣きそうになってると一瞬思ったが先にスタスタ行ってしまうリアにあぁ、さっきのセクハラに怒っているのかという考えに落ち着き黙ってリアの後をついていく。


ボス部屋の先に行くとリアが声を上げる。



「ねぇ! これ!!」



広めのスペースの部屋の真ん中、重々しい石の台座の上に剣が刺さっていた。凄い、何か神々しい。



「……かっこいい」



思わず溢れる声、俺達はその台座の剣に駆け寄る。

そしてすぐさま抜こうとする、抜けない。


もう一回本気で引っ張る、うん抜けない。


リアも試みるが、あ、うん、無理みたいだ。

本気で引っ張ったようで顔を赤らめたリアが息を荒げながら問いかける。



「どうするの、コレ」



リアの顔はものすごーく悔しそうだ。まぁ、そうだよな。俺も悔しい。このまま放置するのは惜しい。

少し考えながら、ふとあることを思い付く。ニヤリとした表情でリアに答えた。



「……持って帰るか」



リアは首を傾げ、何言ってるの? と言いたげなポーズで腕を組む。



「どうやって?」



「これを」

俺は魔法袋を出した。


「こうやって」

魔法袋の時空の歪みを突き刺さった剣の台座ごと入るサイズまで大きくする。


「こう!!」

その魔法袋をそのまま台座ごとすっぽりと中に収納する。



リアは黙ったまま何も言わなかったが状況を理解出来たのか、その後つくづく便利な魔法ね、それ。と感心していた。


更に奥に行くと宝箱に入った宝石や装飾品、剣や斧の武器、そしてお金。

やはり未発見のダンジョンだからか価値のある財宝があった。

喜んで全て魔法袋を使いまとめてすっぽりとしまう。


後は地上に戻るだけとなったのだが、流石に疲れ果てた俺はボスを倒したこの部屋が安全地帯となったこともあってかこの場所で休んでから外に出ることを提案する。


リアはもちろん同意してくれた。




楽な体勢になり、目を瞑る。

あとは次の国に着きたいだけなのだが、色々ありすぎた。


だがこのダンジョン、そして宝。内心、凄く嬉しい。というかありがたい。


単純に宝だからってわけじゃなく。


リアルマネー、そうお金が無かったのだ。


手持ちの金額、約銀貨10まいちょい。リアと安い宿屋に泊まったとして2日泊まる事がギリギリ出来る程の金額しかなかった。


何でそんなにお金がないのかって?

そもそもギルドで働いてぼそぼそ暮らす予定だったのだ。が急に終われる身となり、リアも一緒に旅に出ることになった。1人であれば銀貨10枚で事足りたが、2人ではそうもいかない。しかも女性だ……泊まる部屋を一緒なんて事は流石に不味い。余計お金が嵩むのだ。


セルディア王国での2週間……毎日リアが朝起こしに来ると俺は律儀にリアの朝食代も払っていた、ランチも。……あと、お礼って事で高い髪飾りまで買っちゃうし!!


あぁ、うん、わかってる。俺、リアが美人過ぎるから浮かれて使いすぎたんだ。


……や、そもそも、急に追われる身になるなんて思わないよな、ははは。


俺は前の世界でも風当たりの悪い人生だったが、この世界でもこうなのかと、そんな自分を恨みたくなる。


だが今回は結果オーライだ。寧ろこの世界で生きれる分のお金が手に入ったのは大きな利益だった。


このお金があれば、次の国ではリアを綺麗な宿屋に泊まらせてやれるなとそんな事を思いながら、意識を眠りに落とした。



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