転生 森の中で一人旅
「 はっ! ! ? 」
ここは? 森……………? ……! 裏山か! ? ……いや違う………今度は何処だ。
裏山とは違う森の深さ。デカいぜんまいみたいな物や蔦が巻かれた木など、空気の感じも全くといって違っていた。
……女神は夢じゃなかったのか ? ……俺は……
ピンピロリン♪
え ? 何だ ?
そう思った時、目の前に半透明なスクリーンが現れた。
まるでRPGのステータス画面だ。
それと同時にそのスクリーン左上にあったメールアイコンが自動的に画面によるかのように真ん中に移動しつつ大きくなりメールが開かれる。
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時実玲二様
この度は誠に申し訳ございませんでした。
つきましては、私の世界で魔法使いとして生きるように手配させていただきました。
ご自身ステータスを確認下さい。
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……そうか、ここは異世界なのか。
俺は突然の出来事に気落ちしたが、仕方ないと気を取り直しステータス画面を見てみる。
プロフィール、スキル、装備、持ち物と表記されている。何ともRPGだ。プロフィールの部分に恐る恐る触れた。
レージ 14歳(LV.1)
神に作られし人族。
魔法を使えるようにするため若く生成された。
称号
『全属性魔法使い』……あらゆる魔法が使えるようになる。
そしてHP、MP、攻撃力などの数値がかかれている。
……これは数値化されてるから強いかどうかわからないな……
次はスキルだ、きっと魔法のことだろう。
スキルの所を押す。四角いウィンドウが開かれたが何も書かれていなかった。
あれ? スキルって普通魔法とか書かれてないの? 何も無しってどういうことだ?
初期装備を見る、『装備…旅人の服、旅人のブーツ』であった。
武器が無い。持ち物も、無し。
……え、武器無いの? しかも……何の魔法も覚えてない魔法使いって……
チラチラと太陽の光が射し込む森の中、一人立ち尽くしていた。
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ヤバイ……やばい、やばい………
とりあえず、森を出ることにするか?
いや、下手に動いて魔法がある世界だ、よく分からない化け物にでも出くわしたら……
……ゲームオーバー
絶対死ねる!せめて、木の棒でも装備して…そんなんで倒せる訳がない!
落ち着け、落ち着け………
んー…どうしたものか、せめて魔法は使えないだろうか?
使えるように女神はしてると書いてあった、何かしたら出来るのか?
右手を前に突き出し何となく魔法になりそうな言葉を言う。
…………「ファイヤー! ! 」(……てなんてな)
ボッという音と共に手から火が出る。
うぉ! ? マジか! 火だ! 火が出た! ! すごい! 魔法だ! !
けど……なんだ、手のひらから火が出ただけで…うん…攻撃には使えなさそうだな…。
けれど魔法が出来た、使えるようにもなるかもしれない。
再度、ファイヤーと唱えてみる。手の中の小さな炎、火が矢のように飛んでくれれば武器として使えるのだが………もしかして……
再度手を突き出しコレまた魔法の言葉を放つ。
「ファイヤーアロー! ! 」
火の矢が放たれ、木が燃えだす。
やばいヤバイ!水みず! ! !
「……えっと、ウォーター! ! ! 」
バケツをひっくり返したような水が木と自身にぶっかかる。
木の火は鎮火、そしてずぶ濡れ。
………はは、とりあえずそれらしい攻撃魔法が使えた。
日が落ちる前に森を抜けよう、抜ければどこかに人の痕跡はきっとあるはずだ。
俺は当てもなく森の中を進んでいった。
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生い茂る森の中、ただ俺は突き進んでいた。いったいどれくらい歩いただろうか。
段々と木々の隙間から漏れる光が弱くなる、それと共に焦っていた。
女神のお詫びとして召喚された異世界、自分の知らない未開の地に歓喜より恐怖が勝っていた。
魔法が使えるようになったとはいえそれが武器になるかは分からない。
いつ現れても敵が可笑しくはない緊張感でじわじわと心を削る。
幸いな所、水はいくらでも魔法で出せるため飲み物だけ問題はなかった。
暗くなった感情を晴らす為魔法を唱える、適当な魔法になりそうな言葉をどんどん唱えていく。
ステータス画面のスキル欄には火、火の矢それと新しく風と氷が書かれていた。
恐怖から来る急激な飢えに、道すがら見つけた食べ物になりそうな物は全て口にした。
じいちゃんの山でみた旨いキノコの様な物、野苺のような物。
つい俺は見た目で手を出してしまった。
案の定身体が痺れたり、吐き気を催す物であったが治れと念じたら何故か治っていた。
木の実などのちゃんとした食べ物を見つけた時は歓喜した。
思わず、その赤い木の実をお腹がタプンタプンになるまで食べた。
今の所ここに一本だけ生えている美味しい木の実の木、俺はどうしても持っていきたかった。
木の実をどうにか持ってけないか何か袋を………
と念じたら目の前に[時空の歪み]が生まれたのだ!
俺は恐る恐るそこに入れた、するとステータス画面の持ち物に入っていた。
カカの実と記載された個数がいれる分だけ増えていく。
おぉ……良かったこれで当分食料は大丈夫そうだ。とにかく進もう。
しかし森は段々と暗くなり、暗くなった森は先ほどとは違って見えた、先ほどよりもとてつもない恐怖が襲う。
だが、夜を迎えたおかげで森から脱することが出来た。
微かに見えたのだ、この夜の暗闇にはあり得ない光。
人がいるからこその光に安堵し、身体は今までの疲れを忘れ走り出す。
家だ!建物だ!明るい!きっと村だ!!
段々と近付く中、喜悦から疑惧、そして恐怖。
村だと思われた場所は今まさに魔の者に襲われていた。
「ギャッ! ! グギャ! 」
それは10数体のゴブリンの群れだった。
あるゴブリンは棍棒を振り回し、壺を、家を破壊する。
家畜は殺され、ムシャムシャと血を滴らせながら食べ、骨はしゃぶられている。
そんな中、倒れている女の子に今にも棍棒を振り下ろそうとするゴブリンがいた!
「危ない! ! 」
俺は当たれと強く念じながら唱えた!
『火の矢よ放て! ! 』
顔面に直撃したゴブリンは倒れ残った火が身体を覆い灰となる。
『火の矢よ放て! 』『火の矢よ放て! 』
襲われている住民たちを守るように次々と只ひたすらに魔法を放ちゴブリンを屠る。
俺は段々冷静になっていった。
一瞬、世界がモノクロのように見えてゴブリンの姿が止まったかの様に正確に位置を捕らえ、確実に顔面に当てていく。
それを見て攻撃を此方に向ける残りのゴブリンたち。
「やばい、今度は俺が危ない! 」
頼む全てのゴブリンを倒す数を……
『火の矢よ放て』
強く願って作られた魔法。
俺の全MPで作り出した空中に浮いた12本の火の矢、それが一斉に残り数体のゴブリンに降り注いだ。
降り注いだ火は連なり炎となってゴブリンは崩れ去り灰となった。
灰が風で舞い静まり返った夜の村の真ん中で、俺はゴブリンがいない事に安堵し、ぶっ倒れてしまった。