次の国まで
「もぉっ~! ベタベタやだぁ~~! !」
リアが叫んだ、無理もない。
スライムのジェルだらけで道なき平原を歩いているのだ。
いつ国の兵士がくるか分からない。
俺を守る為に切羽詰まっていたに違いない。気落ちしていた為に迷惑を掛けてしまった。
「ねぇレージ、あっちに確か川があるのよ。そっちにいきましょ?」
リアは街道とは反対の方向を指を指す。
「そうだね、俺もベタベタで気持ち悪いし」
俺は頷き、リアの指を指した方向に向かうことにした。
しばらく平原を歩いているとチョロチョロと川の流れる音が聞こえてきた、リアは思わず早足になる。
綺麗な水が流れている、リアはおもむろに鎧を脱ぎ出す。
……此方をジッと見ている、ん? どうしたのだろう?
「レージ。先水浴びたいから、あっち向いててくれない?」
あ、はい。すみません。
俺は黙って後ろを向く、ガチャリガチャリと金属音がした後、ごそごそと布の擦れる音がする。
服を脱いでいるのだろうか? 少しドキドキする。
チャポリチャポ、パシャァ……
水浴び真っ最中のリア、振り向けば素っ裸に違いない。
いつまで待てばいいだろうか、気にしすぎて何だか目眩が………
「ああぁーーーー! !」
急に叫ぶリア。何だ! どうした! ?と思わず振り向く俺。
素早い右ストレートに敢えなくノックダウンする。
気付けば濡れたままの服を着たリアが心配している。
………濡れた姿もなかなか………
リアは鬼の形相で此方を見ている。
慌てて何故濡れたままでいるのかを聞いてみる。
「旅の荷物持ったままスライムと戦ってたでしょ。だから荷物の中身もびしょ濡れで……」
ふと川縁の岩肌を見ると、その地面に替えも含め全部ジェルまみれな荷物の中身が散乱している。
勢いよく水浴びしたはいいが替えも何も無くて濡れたままでいるしかなかったということか。
俺は魔法袋から身体を拭くものを渡し、散乱した物を川で洗いながら少し考えた。
「……ドライヤーみたいな魔法があればいいんだけどな」
「ドライヤー? 何それ?」
「髪を乾かしたり、暖かい風が出る道具だよ」
「え? ! それすっごく便利じゃない! ! そんな魔道具なんて存在するのね。」
「……(ここの世界の物じゃないけど)とにかくそれがあればすぐ乾かせると思うんだけど」
「ふーん。現象とかわかってる魔道具なら魔法だし、レージなら使えるんじゃない?」
「え?」
「や、魔法って一番大事なのはイメージと力の元となる言葉が必要だから、ドライヤーって分かってるならレージ使えるんじゃないかなって」
そうなのか、少し試してみよう。
地面に散乱した物に向けるように手を翳し、イメージする。
「ドライヤー」
ゴォォォと音を立てて手のひらから温風が出てくる。あ、そんな感じで出るんだ。凄く毎日風呂上がりに聞いたことのある音だ。
しばらくすると地面に置かれた物が乾いていった。
「……凄いじゃない! ! こんな魔法があるなんて!」
そういってキラキラした瞳のリアが俺の手を両の手で握ってくる。
願いに満ちたその瞳に俺はただ受け入れるしかなかった。
……そして今俺は…………。
目に布を巻いて目隠ししながら魔法でリアの身体と服を乾かしている。
俺はただ手のひらの温風を出す事に集中し、リアは腕を当てたい箇所に持っていって身体を乾かしている。
「あー、まだ胸元がぁ……」 「まだ腿の内側の部分がぁ」
とリアは言いながら気になる箇所に当てているようだ。
何をしているのかさっぱり分からないが耳から聞こえる単語がもどかしくさせる。
そのうち、サラサラとした長い髪に俺の手が触れ、頭を撫でさせるかのようにして髪を乾かしているようだ。もう、何がなかんだか分からない。
なっ! ? 肌に触れて! ? スベスベだ! 俺、え? どこ触ってるあーーー。
…………疲れた。MP切れ?そうじゃなくて、なんか、もう、疲れた。
逆に恥ずかしくなり顔を赤くする俺を尻目に乾いた自分と荷物に喜ぶリア。
嬉しそうで良かったです、ホントに。
新手のプレイをした俺は、何処を触ったか分からないあの柔肌に想いを馳せながらジェルまみれの自身の身体を清めるのであった。




