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気付かない異変



刺されたことに困惑と悲しみの表情をするテオドール王。


「………何故…………なんだ………?」


テオドール王の問いにその者は腹に刺した短剣をそのままにし、血を拭いながら答える。


「………何故?………何故って貴方が邪魔だからですよ、テオドール」


その言葉を聞いたテオドール王は崩れ落ち静かに息を引き取った。


テオドール王の冷たくなる様を刺した者は静かに見つめ、ニヤリと微笑む。

また、その後ろにいる従者もその光景ににんまりと笑みを浮かべていた。









朝方。玲二はいつも通りリアと朝食を取り、約束であった買い物に行くことにする。


玲二はお礼の品はこの買い物で良さそうな物があればプレゼントしようと思っていた。

ちなみに旅で使う物の意見も聞きたいからショッピングに付き合うといった感じで誘っているのでリアは気付いてないだろう。


リアは最強の荷物持ちがいるから買い物しまくれるわね!と意気込んでいる。


……………確かに時空の魔法使いですからね、魔法袋でいくらでも持てますよ、はい。


玲二はそんなリアをやれやれと思いながら宿のおばさんに会計してもらい商店街へ向かう。


明るい玲二とリアの話し声が聞こえなくなった後、


「レージ君はどこじゃ!!?」


慌てて玲二を訪ねる者がいた。







場所は変わって商店街。玲二とリアはあちらこちら周りながら旅に向けての買い物(と荷物持ち)をしていた。


「まだ買うのか?リア~」


魔法袋に入れてるからどれくらい量が入ってるかは分からないが、少なくとも3時間は店を回っている。


「ふっふんふんふ~ん♪」


満足そうなリアを見て、まぁ仕方ないかぁ~とついていく。


「あ、そうだそうだ。ここ行くわよ!」


カランカランと音を立てて店の扉を開いて中に入ると、薬草の爽やかな匂いが鼻孔をくすぐった、薬屋のようだ。

リアが青色の液のビンをレジに持っていく。


「ちょっとあんた、何本買うの?」


「リア………それなに?」


「………なにって?……ポーションよ。1本銀貨1枚だけど何本買うの?」


………中々に高い。治れ(ヒール)があるからいらないような………

ん?この赤い液のビンは何だろう?



「リア、この赤い液のビンは何?」


玲二はそのビンを持ち上げてリアに見せる。

リアは見向きもせずに他の薬を見ながら答える。


「同じビンの形の赤い液体のはMPポーションよ。MP回復する薬」


MPが回復する薬……こっちの方がいいような…


「MPポーション………コレいいな」


ぼそりと言った言葉に反応し、リアはくるりと此方を振り返る。


「何個も買ったらダメよ。MPポーション、あんまり使うと身体ボロボロになるわよ。MPっていうのは自身のマナで作られた力なの。薬で作るようにしたMPは自身のマナを無理やり働かしてるから体調崩すわよ」


玲二は何個か会計しようとした手が止まる。

なるほど……MPポーションはデメリットがあるのか……

……どうしようか……


此方に寄ってきたリアが悩んでいることを察したのか、


「ま、2,3個ぐらいなら万が一に持ってても良いかもね!」


「そうか、リアありがとう!じゃあ、ポーション2本でMPポーション3本貰うよ」


玲二はリアの言葉で現在の残金と考えこの数にする。リアは少し考えて納得した表情を見せた。


「ま、それくらいあればそんなモンスターもいないし。次の国には行けるかな?」


リアのOKサインも貰ったのでポーション2本、MPポーション3本を購入して店を出たのだった。



「さー!次の店行くわよー!!」


だいぶ買ってるのにまだ買っていくリア。

さっきの薬屋でもポーション5本に何か塗り薬も買っていた。


「あー!見て可愛い髪飾り!………て……あーー、これはやっぱりいいや……」


露店で売られていた金属で出来た髪飾り。楕円形の形で複雑な模様とアクセントに赤い小さな石が右上に飾ってある。

いかにもリアに似合いそうだった。

なのに買わないらしい、不思議に思ったので質問する。


「何で?リアに似合いそうだけど」


それを聞いたリアは少し恥ずかしそうにして


「…………何でって……思ったより高いのよ、使い過ぎちゃったわね……あー!もう買い物はやめ!ちょっと小腹減ったからあそこの屋台行ってくるわね!」


とリアはダッシュで離れた屋台に向かってしまった。

玲二はというと


「これ貰えますか?」


やっとお礼の品を買えたのだった。







玲二はリアへのプレゼントを持って、屋台に向かったリアの元へと向かう。


リアは大通りを挟んだ屋台で美味しそうな肉の串を持って此方に駆け寄ってきた。


「こっちこっちーー!!!」


喜びの笑顔を浮かべたまま大通りを横切ろうとする。

その時!!


ガダダッ!!ヒヒーン!!!ば…馬車が!!


荷台の荷物を落とした大きな物音に馬が驚き走りだした前足がリアの顔面を襲おうとした。


余りの一瞬の出来事に驚き動かなくなったリア。


リアはもうダメだとギュッと瞳を閉じた。






…………が、暫くしても痛みは襲ってこなかった。

リアは恐る恐る目を開ける。何故か、リアは玲二に抱き抱えられていた。

玲二はリアが馬に蹴られそうになった瞬間に時間を止め、ダッシュでリアを抱き抱えて戻ってきたのであった。

冷や汗をかきながら心臓をバクバクさせている、そんな心臓の鼓動がリアにも伝わってくる。


「あ~~、ほんっっと危なかった!!!リア、無事か?」


抱き抱えているリアに顔を向けて心配そうにする玲二。

リアは玲二の顔が近くて、そして自分が助けられたことに何とも言えない気持ちになって顔を真っ赤にする。


「あ……………汗が掛かるから降ろして」


「あぁ、ごめん」


真っ赤な顔を隠すように下を向くリア。

顔を隠しているのを誤魔化すように異様にうつ向いて肉の串を食べながら、コレ、買ってきたと一言言って玲二に肉の串を渡す。

玲二は肉の串を食べながら、抱き抱えてダッシュした為汗が止まらず服を片手で引っ張りバタバタさせて身体に空気を入れて涼もうとする。


「暑いなら広場に行きましょ」


とリアは玲二の手を引いて広場に連れていった。




広場は魔法庁より奥にあり、つく頃には日が暮れて来ていた。

丘の様な立地のこの広場の景色はセルディアの綺麗な街並みが一望できた。


心地よい風が玲二とリアの髪を撫でる。玲二はあー涼しいと景色を眺めながら身体の熱を冷やした。

リアはそんな玲二を見つめ、問いかける。


「いつ………旅に出るの?」


「そうだなー、魔法がそれなりに使えるようになったらかなー……あ、そうだ!リア…………」


ポケットからプレゼントを出す、先ほど購入した髪飾りだ。


「………あんた……これ」


「剣術教えくれたりとか色々世話になっただろ?そのお礼だ」


そういってリアに渡す、リアは髪飾りを付けて此方に見せるような仕草をしてから振り向く。


「どう?似合ってる?」


「うん、似合ってるよ。リア」


ニカッと微笑んだリアは頬を赤らめながら、


『ありがとう、レージ』


と言った。











(……………ヤバい、ヤバいぞ!


レージ君はいったい何処に行ったんじゃ!!!


とにもかくにも探し出さんと……………どこなんじゃーーー!!!?)









リアが初めて名前で呼んでくれた。

思わず嬉しくて顔を赤らめてしまった。


そんな玲二を見て、より顔を赤らめ下を向くリア。


まるで付き合いたてのカップルの甘いキャンディの様な空間は…………兵士達の登場により打ち砕かれる。

城へ案内してくれた兵士が顔を確認する。


「玲二様ですよね?………やっぱり、玲二様だ。玲二様、いや玲二。貴方に国王暗殺の容疑が掛けられている。御同行願えないだろうか」


……………なんて?


他の兵士がもう一度用件を言う。


「国王暗殺の容疑だ、御同行願おう」


何を言っているのか分からないという困惑した顔で容疑を否定する。


「俺はやってない!!!」


リアはその言葉に玲二の前に立ち塞がって兵士に静止を掛ける。


「待って!!レージはこの国に初めてきたのよ!王様だって昨日初めて会ったの!そんな初めて会った人のことを殺すと思う?それにこの国に来てからは私と毎日いた!レージは人を殺すような人じゃない!!!」


その言葉に申し訳なさそうに城を案内した兵士がこう言った。


「道徳の問題ではないのです。まず、王様が殺されたのは昨夜です、夜は流石に一緒ではないでしょう?リア様。それに暗殺の疑いを申告したのは第一王子です、流石に無下にはできません」


「第一王子って!!!……………!」


潤んだ瞳で黙って立ちはだかるリアに苛立ちを見せた一人の兵士が剣を向ける。


「力ずくでも来てもらおう!!」


剣をリアに振り上げた!リアは玲二を庇い微動だにしない!!



ドカンッ!



と激しい音を立てて兵士の剣は弾かれ宙に舞う。


「誰だっ!!?」



的確に剣を打ち落とされた兵士はより苛立ち声を荒げる。

振り向いたその先には吹き荒れる風を纏い、右手に炎を携えたラド=ハイドルフの姿だった。


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