城への招待
昼が近づいた頃、玲二の宿に重々しい白い鎧をまとった兵士が現れた。
「レージという者はいるだろうか?」
宿の一階の席でのんびり今日の話をしながらリアと茶を啜っていた本人が気付いた。
「私ですが」
兵士は声のする方に体を向けビシッと敬礼し、その後、王国の紋章を見せながら話かけてきた。
「貴方がレージ様ですね、私は王国の使いの者です。規則ですのでまずは本人確認をさせてもらいます。身分証の提示を願えないでしょうか」
「わかりました」
玲二は身分証を取り出して兵士に手渡す。
「発行No、出身地ともに間違いないですね。時空魔法のレージ様、セルディア王国国王より新たに作られた時空のバッジと火のバッジの授与とそれにおいての祝辞があります。御同行願えないでしょうか?」
「わかりました。今からですか?」
「そうしてもらえると助かります」
よかった、やっとバッジが手にはいる。これで火と自分の時空の魔法は自由に使える様になる訳だ!
「リア、悪いけど今日は城に行くことになった」
えーーっ何よー買い物は?と不満の声をあげるリア。
その話を聞いていた兵士が声を掛ける。
「失礼、そちらにいらっしゃるのはリア様ですね?宜しければリア様もご一緒しませんか?レージ様の祝辞が終わり次第リア様に連絡致しますので」
リアは少し考えた後何かを思い出したかのような仕草をして。
「そうね!城には王立図書館もあるし。あんた終わったら来なさいよ!新しい魔法覚えられるから!!」
「では、レージ様、リア様。城に参りましょう」
こうして玲二とリアは城に向かうことになった。
城の中でリアと別れた玲二は早速バッジの入手の為、王に謁見する。
通された謁見の間では真ん中に赤いカーペットが一直線に引かれており、カーペットを挟んで左右に沢山の兵士たち。
そして、赤いカーペットの先には目を合わせなくても分かるこの国の頂点と言える者がいた。
テオドール=セルディアス。灰色の髪と髭が繋がっておりその頭には王冠が乗っている。その瞳は優しく、それでいて厳しくもあった。赤を主張した立派な椅子に持たれるその権威ある姿はまさしく王様だ。
王は玲二に称賛の言葉を述べる。
ガチガチに固まった玲二は何か言われていたが全く反応できずただ恭しく城の者から赤い高級感ある布が敷いてある台の上のバッジを受け取った。
「新たに時空の魔法使いが生まれた!!」
高らかに力強く言った王の一言、すっかり世界感に飲まれた玲二はそれ以外の記憶はあまりない。
ぼーとした姿で謁見の間を後にする玲二、とにもかくにもその手には時空と火のバッジを持っていた。時空のバッジは時計の針をモチーフにした形をしていた。
火のバッジと時空のバッジを早速服の襟に付ける。
ちょうどその時、城へ案内した兵士が話し掛けてくる。
「おめでとうございます!レージ様!!おぉっ!其れが時空のバッジなのですね!私の様な1兵士がこんな歴史的瞬間に携われるとは……感無量であります!」
ビシッと敬礼をする、そして直ぐに何かを思い出したかのように体制を戻し再び話始める
「………と失礼しました。リア様がお待ちです、王立図書館に案内致します」
兵士は入り口横でこちらですと敬礼、どうやらこの扉の先が王立図書館のようだ。
入るとびっしりと辺り見渡す限り本と本棚があった。
2階まであり緩やかなカーブを描く大きな階段の先に本を読むスペースがあった。
…どうやらそこにレアがいるのだろうか…
玲二はゆっくりと階段を登っていこうとする………
「せいぜいのんびりするがいい」
すれ違い様に何かを言われた、直ぐに振り替える玲二。
だが一階は本棚だらけで姿は見えなかった。
気にはしたが、リアの所に向かう。
「やっと来たわね」
リアのいた机の上には沢山の本が山積みになっていた。
ちょっとここ座ってと山積みになったところの開かれた本の前に座らされる。
後ろで肩に手を置き、本を覗き込むように身体にもたれかかるリア。
玲二はくっついた身体に少しドキドキしながらもリアの話に耳を傾ける。
「この本は魔法書なの、火属性の魔法について書かれているわ」
息遣いが聞こえるような距離で話すリア、ページを捲って一つ一つの火の魔法について語っている。
しかし、余りの距離の近さに本に全然集中出来ていない。
「見て!これ!流星っていう魔法!!あんたが本当に全部の魔法が使える様になるならコレもいつか使える様になるんじゃない?」
……いかん、いかん!!集中しなきゃ!
なるほど、メテオってなんかヤバそうな魔法だな…
リアと図書館で過ごし、暫くして城を出た。
魔法について分かったことが多かった。
まず、魔法使いの全属性というのは今までになかったということ。
魔法は地域の環境に合ったものを覚えることが多いらしい。
このセルディア王国周辺には大きな火山があり、火属性の者が生まれやすいようだ。
また隣国は緑に包まれており地属性の者が生まれる…といったような、その人それぞれの住んでいた環境が関わることが多いのだ。
だから基本、魔法が使える者は一つの属性のみということが多い、2つある者はレア中のレアといえる。
そんな中で全属性の能力を持つものが現れたとなると王が直接祝辞する為に時間を空けたのは当たり前であった。
今後、素晴らしい魔法使いになることが決まっているからである。
玲二はやはりチートなんだなと思った、そして同時に王に期待されていることに重圧感を感じる。
…今後の為にも精進しないといけないな……
玲二の気分は晴れなかった…
「まっ、ドンマイ!!あんたがそんな珍しい存在なんだから仕方ない」
ポンッと優しくリアが宥めてくれる。
ありがとう、リア、ホントありがとう!よし!明日こそお礼しないとな!!
心のまま、ありがとうとリアに声掛け今日はすっかり日が暮れていたので明日商店街に行くことにした。




