リアと共に
今朝、新しく購入した装備に身を包み宿の階段を降りる。
降りた辺りのテーブルに何故かリアがいた。
テーブルに置いていたカップの中身を一口飲んで、此方を見た後ため息を溢す。
「おはよう。…といってももう昼前なんだけど、あんた寝すぎじゃない?」
ツンツンした態度で話かけてくるリアに若干の嫌悪感を感じつつも美人なのでまぁ良しとする。
「リアさん、おはようございます。私に何がご用ですか?」
リアは装備を見て驚いた表情をあげて、深いため息をする。
「やっぱりその格好。あんた、冒険者になりたいんでしょ。アーヴィンから聞いたのよ、多分国を出ていく気だって。旅するのはいいけどもし魔法使いが魔法使えなくなったら己の力で戦わなきゃ死ぬわよ。あたしがあんたに剣術教えてあげるから付き合いなさい!」
ん?これは?ツンデレ?
「言っとくけど、あたしを断ったらお父様が相手だから!あたしにしといた方がいいわよ!!」
おぉ……それは…お願いいたします…
話を聞いているとどうやら、殺る気満々のアーヴィンにシゴかれるのは可哀想だと心配してくれたらしい。
口ではツンツンした言葉が並べられているが中身はやはりいい人だった、流石異世界美人。
リアはさぁ行くわよ!と言って玲二を魔法庁へ拉致する。
其れからの約2週間は火属性魔法と自身の時空魔法などの魔法の鍛練、リアとの剣術の指導といったところだ。
リアは玲二が思ってた以上に親身になって教えてもらった。指導初日はツンツンしていてどうなるかと思っていたが今は打ち解けていると思う、今だに『あんた』呼びだが。
この約2週間は魔法の成果は少しあった。
まず、時空魔法の魔法袋。時空の歪みは伸縮性があり、時空の出入り口を大きくすることも可能だと言うこと。つまり家具とかも入っちゃうのだ。大きな時空の歪みを開くのは最初は手こずったが今ではすんなりと発動出来るようにまでなった。
そして手でごそごそと取り出す行為無しで中の物を自在に出せるようになった。
次に、火の矢の同時に的に当てられる数が増えた。
それだけだが凄い進歩だと思える、魔力のコントロールがより精密になったのだ。
火の矢の命中率は高くなったのは嬉しい、火の矢の数は増えなかったが十分攻撃力強化に繋がった。
一方、剣はというと…てんでダメであった。
強いて言えば剣術の型を覚えた程度だ。
リアは基礎を毎日しっかり練習して後は弱い魔物で少しずつ実践を積むしかないと言われた。
「ほんとはもっと教えてあげたいわね。でも、そろそろ2週間立つから明日にでも連絡が来るかもしれないわね、バッジ手に入れたら直ぐ旅に出るのもいいけど、もう少し剣術を磨いたほうがいいと思うわ」
リアはモヤモヤが晴れないといった表情だった。
玲二はここまで真剣に指導してくれたリアに感謝していた。
同時にあまりにも剣術が上手くいかないことに万が一の旅先での『死』という不安も感じていた。2度も余命以外で死にたくはない。
「旅の準備はするけど、流石に不安だからリアにまだ指導お願いしていいかな?」
「もちろんよ、折角教えてあげたのに死なれたらあたしの名が廃るもの。気が済むまで相手するわ!」
エッヘンと威張ったポーズで承諾するリア。
玲二はホッとした、はっきり言ってリアは強いと思った。
リアの魔物と戦っている姿は見たこと無いので総合的な事は言えないが、対人戦は凄かった。アーヴィンの様な筋肉の人と拮抗した戦いを見せていた。流石にアーヴィンには勝てなかったが剣術を教えることに置いてはリアが一番だろう。
後日、リアに何かお礼をした方が良いかもしれない…。
明日辺り時間が合えばリアを連れて商店街でも誘ってみよう。




