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(11)「水爆と黒鉄の怪物」

 地球人類を絶滅させるに足る核戦力を擁する超大国が睨み合い、世界滅亡の危険性が常に存在していた冷戦時代――その悪夢と試練の時代を、人類は超越した。先制核攻撃は相手国による核反撃を誘発し、当事国同士に未曾有の大破壊を確実にもたらす、という確証がもたらした歪んだ平和ではあったが、それでも全面核戦争は回避された。

 そして21世紀。全面核戦争の恐怖は、過去のものになったはずであった。もちろん近い将来において、武力紛争で核弾頭が使用される可能性が、まったく根絶されたわけではない。だがあくまでも危惧されるのは、地域的・局地的な戦術核使用であり、冷戦時代に恐れられていた全人類を脅かす全面核戦争の勃発など、もはや夢のまた夢の話だった。起こり得るはずのない話だった。

 ……そのはずであった。

 まさかこの21世紀に、全世界が無差別的に標的とされる全面核戦争が勃発するなど、誰が想像しただろうか――そしてその全面核戦争が人類と異種との間で戦われるなど、誰が想像し得たであろうか。


 9月13日午後13時01分(韓国現地時間)、大韓民国京畿道揚州市に侵入した未確認巨大生物に対して、米韓連合司令部は300キロトン級熱核兵器を搭載した、大陸間弾道ミサイル(ICBM)『ミニットマン』複数発による核攻撃を敢行し、揚州市一帯の徹底的破壊に成功。


 同日午後13時05分、旧・揚州市において高速飛翔体複数発が発射されたことを、米韓連合司令部が察知。ほぼ同時に、日本国航空自衛隊がJ/FPS-5レーダーにより、高速飛翔体30発以上を捕捉。陸海空自衛隊と在日米軍はBMD戦へ移行。


 同日午後13時06分、大韓民国江原道三陟市東方50㎞の日本海上にて、TNT換算1メガトン級の核爆発が発生。この際に発生した膨大な熱量と電磁波により、日本国航空自衛隊のJ/FPS-5レーダーは高速飛翔体を一時ロスト。


 同日午後13時08分、日本海に展開中の海上自衛隊第5護衛隊所属『こんごう』、SM-3による迎撃を実施。2発の弾頭無力化に成功。


 同日午後13時10分、日本国宮城県多賀城市上空にて、TNT換算1メガトン級の核爆発が発生。多賀城市街は消滅。隣接する仙台市、塩竈市、利府町、七ヶ浜町においても深刻な被害がもたらされた。死傷者算定不能(即死者は約5万から10万人)。


 同日午後13時11分、日本国青森県東方50㎞の沖合にて、TNT換算500キロトン級の核爆発が発生。直接的な被害は軽微。


 同日午後13時12分、米韓連合司令部と在日米軍司令部は共に、上級司令部へアメリカ本土への核攻撃が確実となった旨を警告。アメリカ軍は戦争準備態勢デフコンを最高位のデフコン1に指定。同時に旧・揚州市に対し、熱核兵器による攻撃を再度決断。ICBM『ミニットマン』を再度発射。


 同日午後13時14分、同日午後、日本国千葉県東方沖150㎞の沖合にて、TNT換算300キロトン級の核爆発が発生。直接的な被害は軽微。


 同日午後13時15分、ロシア連邦カムチャッカ地方エリゾヴォ上空にて、TNT換算300キロトン級の核爆発が発生。死傷者算定不能。


 同日午後13時16分から29分、立て続けに太平洋上にて、規模不明の核爆発が連続発生。人類居住地に対する直接的な被害は皆無。


 同日午後13時30分、カナダ・ブリティッシュコロンビア州にて規模不明の核爆発が発生。直接の人的被害は発生しなかったものの、未曾有の規模となる山火事が発生。


 同日午後13時31分、アメリカ合衆国オレゴン州ポートランド市にて、TNT換算1メガトン級の核爆発が発生。死傷者算定不能(即死者は約10万人から15万人)。その後もネバダ州北部ブラックロック砂漠、オクラホマ州南西部ブラックケトル国立草原、テキサス州北西部リャノ・エスタカード平原にて核爆発が連続発生。午後13時40分には、メキシコ湾沖にて300キロトン級の核爆発が発生。


 同日午後13時44分、コロンビアのバジェ・デル・カウカ県のユネスコ世界遺産マルペロ島にて、TNT換算500キロトンの核爆発が発生し、保守と監視を担当するコロンビア海軍軍人が死傷――これが旧・揚州市から放たれた第1波攻撃、最後の着弾となった。


 同日午後13時45分、約30分前に米空軍が発射した大陸間弾道ミサイル『ミニットマン』の300キロトン級熱核弾頭が、大韓民国旧・揚州市と議政府市にて炸裂。ただしこのとき、未確認巨大生物はソウル特別市へと南進しており、攻撃は失敗に終わった。


 同日午後14時から16時にかけ、ソウル特別市内において未確認巨大生物は、高速飛翔体を連続発射。これはもはや方角さえ定めない「乱射」であった。半数以上は洋上や無人地帯にて炸裂したものの、少数は市街地直上にて数万度の火球を解き放ち、中華人民共和国、パプアニューギニア、ソマリア、ペルー、アンゴラ、スウェーデン、スリナムといった国々の諸都市で壊滅的被害をもたらした。

 この間に米軍は韓国軍と協議しないままに、ソウル特別市に対して核攻撃を2度実施した。が、無力化には至らない。


 結果、9月13日――人類は800万(韓国国民700万、世界各国国民合計100万)もの生命を失う大敗北を喫した。



◇◆◇


次回、「FIANL WARS」にて終了となります。最後までお付き合いいただければ幸いです。


◇◆◇

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