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俺の相棒はいつも艶々している  作者: せりざわなる
セットアップの章
5/6

5.鑑定を致しましょう

「先程、魔法や魔物の存在は皆さまの世界にはないが、知識として知っている、と教えて頂きました」


サイラスは、それを伝えた奴に向かって笑って頷きながら、そう始めた。


「皆さまには、この地に来て頂いた時点で加護を持っていらっしゃるはずではございますが、ご自分の加護や適性を確認する術はご存知ないでしょう?」

「ステータス、オープン!…………とか?」


いきなり、音を立てて手を挙げながら立ち上がった奴がいた。そいつは目をキラキラさせて、幾分ドヤ顔で叫んだが、そのステータスオープンには何の効果もなかったようだ。

サイラスも含めて訝しげな視線を一身に浴びる羽目になった奴は、とか等と誤魔化しつつ、大人しく席に戻った。

サイラスは、コホンと咳をする。


「…状態を明らかにせよ、ですか。皆さまの世界ではそのように仰るのですね」


んん?奴が言ったのとは違うけれど。

あ、もしかして、言語チートの翻訳による、ニュアンスの差異かもしれない。


「素晴らしい。ほぼ正解です。ただし、私どもは、自分の加護や適性、状態を見たいときには、『潜在情報を解放せよ』と言います。ああ、自分の情報を知りたい場合は、念じるだけでよろしいです」


サイラスが言った先から、口にしたり念じた奴がチラホラいたらしい。少しのざわめきがあった後、不思議そうな、あるいは不満気な顔をして、彼に視線を戻していた。


聞きたい事だけ聞くと、後はどうでも良くなる奴らか。

まあ、俺もそういう方だけど、サイラスはまだ続きがあるような仕草をしてるじゃないか。

お前ら、せっかちだな。


「私どもは、生まれてより魔法も身近にありましたから、それだけで見る事は叶うのですが、やはり、皆さまは中々難しいようですね」


ええーっと声を上げる奴らに、サイラスは手を挙げて静まるように促す。


「ご心配なく。それは皆さまが、この世界の環境にまだ慣れておられぬからです。大陸に行き渡る神力…その内の魔法に使用できる分を魔素と呼んでおりますが、それを感じるようになる事が求められます。それには長い期間が必要ではございますが……」


サイラスは、部屋の端に視線を流して、トンと杖をついた。

それを合図に、地図を広げていた二人は素早く布をまとめて下がり、別の従者が両手で大きな丸い水晶みたいなもののせた台を掲げて近寄って来た。


「加護を受けた皆さまには、長い時間は必要ございません。きっかけさえあれば、出来るようになります。その為にこちらの魔導具を用意しました」


サイラスの言葉に合わせて、皆に見せるように従者が前へ進みでる。勿論、俺たちはそれに食いついた。


「我々が10の歳になった時や、ギルドでの登録の際に、潜在情報を鑑定する事がございます。それよりは、より上級のものですが、こちらを使います」

「待って下さい。僕達を鑑定するということですか!」


新城がこちら側の意見を言い出してくれたお陰か、ぐっとハードルが下がったようだ。他の円卓に座る奴等からも質問が出た。


「はい。具体的に申しますと、私と一緒にこの道具に触れて頂きます。それによって、皆さまにはこの世界の魔素に触れる事になり、その意識とお体に魔素の存在を感じるようになることでしょう。皆さまならば、その後はご自分で魔素を扱う事ができるでしょう」


未経験の事を口や文字で伝えても、理解までに時間がかかる。一緒に経験してしまえば、コツはつかみやすいだろう、ということかな。


「鑑定以外に方法はないんですか」

「直接手をつないで、私の魔力を感じて頂く方法もございますが、よろしいでしょうか?」


げ。いくらイケメンでも男と手をつなぎたくない。

いや、イケメンだろうが嫌だ。


「…魔力にも相性がありまして、合わなければ気分が悪くなるなどの症状がでます。オススメはできません」

「でも、鑑定って、あんたらにも俺達の情報がわかっちゃうんだろ」

「はい。しかし、それは皆さまの適性に合わせて、こちらも色々ご用意させて頂く為。ご容赦ください」

「………あの、一つ、大事な事なのですけど。現在、そして、その鑑定を行った後、私達に何か制約をつけたりしませんよね」


おずおずと、手を上げたメガネ女子の言葉にざわつく。「隷属契約とかのパターンかよ!」と聞こえた。

おお、そういうテンプレもあったな。


「勿論、ございません。確かに色々お約束頂きたい事はございますが、別にご説明させて頂きます。これは、あくまでも鑑定。皆さまが魔法に触れるきっかけ…、そして適性を知る為でございますよ」


サイラスはそう言い切った。そう言い切られると言葉につまる。

さて、どうしようか。俺達がまたもや思い迷っていると、目の前で朽木が立ち上がった。


「もう、いいじゃん。それより、俺、早く知りたいんだけど、やっていいかなー!」

「タクマ」

「ユウは知りたくねーの?俺、ユウの職業は『委員長』だと思うよ」


何が可笑しいのか、ゲラゲラ笑う朽木によって、その場の雰囲気は見事にぶっ壊された。


「では、やりましょうか」

「うんうん、やるやるー!」


軽いノリで頷く朽木に、サイラスと従者は近寄ってくる。


お前のノリにはついていけないが、お陰で鑑定とやらが近くで見れるようになった。よくやった、朽木。


「では、私と一緒にこれに手をつけて下さい」

「うん」


従者が掲げ持つ水晶に、サイラスと朽木が向かい合って互いに手をつけた。


「この者の、潜在情報をー解放せよ」


その瞬間、水晶は内側から赤い光を放ち始め、二人とその周辺をその光で照らした。

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