2023年3月16日木曜日 20時21分 仕事部屋
「お帰りニャン。味吉屋の牛丼が届いているニャン」
ルキノはDRボックスから起き上がった。
「まずはトイレ。メシだな」
「はいニャン」
リビングルームに降りてくると、ニア、ミシュン、オットーもソファで寝ている。
テーブルの上に味吉屋の牛丼が届いている。
オレンジ色の発泡スチロールのようなケースに入って上にQRコードが貼ってある。
電子レンジの前に来ると電子レンジがQRコードを確認して『味吉屋の牛丼並、標準で温めますか?』と聞いてくる。
それに返事をして中に入れる。
約30秒で出来てくる。
テーブルに持って行ってオレンジ色のケースを開けると中からどんぶりに入った牛丼が出てくる。
どんぶりはそれ程熱くなく、中身は熱くなっている。
お店が指定していた通りの料理温度になっている。
まるで店のカウンターで食べるのと同じものが食べられる。
帰すときはオレンジ色のケースにどんぶりを入れておくと床に置くと掃除機兼配送ロボットがドローン用のコンテナに持って入れてくれる。
人の形をした家政婦ロボットはいないが、家そのものが家政婦ロボットだ。
ソファに座ってルキノは牛丼を食べ始める。
「ハチニャン、ニュース見せて」
「はいニャン」
壁一面にニュースのヘッドラインと1カットの写真が1セットになったモノが並ぶ。
スマホアプリの応用のような感じだ。
ルキノはテーブルの上のレーザーポイントマウスで壁に映されているニュースのヘッドラインの一つに赤いレーザーを当てて、レーザーポイントマウスのボタンをダブルクリックする。
『コールセンターにまたもAI過激派』というタイトルのニュースが選ばれて画面の中央に運ばれるとその情報を取り巻く情報分類が放射線状に表示される。
警察が公開した公式情報、他のTVメディアの反応、海外のメディアの反応、ネットメディアの反応、ブログ専門家の反応、SNSの一般的な反応、SNSの極端な反応が集めた件数と共に表示され、ブログ専門家の反応にポインターを当ててダブルクリックする。
『コールセンターにまたもAI過激派』のブログ専門家の反応というタイトルに中央の見出しが代わり、放射線状にブログが並び、タイトル・名前・職業・この記事のアクセス数が表示される。
経済評論家、弁護士、元警視庁、自称終末救世主とか職業が表示される中から弁護士を選んで表示させた。
コールセンター、派遣会社の雇用状態からあきらかに人が解雇されてAIに置き換わっているという統計資料と数値的な分析を元にAIに職が奪われている現実をこの弁護士は説明している。
「ハチニャン、全体を通してのこの事件の反応はどうだ」
「無関心が82%を示し、アクセス数の多くは同業者並びにコールセンター職員が多いように感じますニャン。また、この事件をキッカケに何かが起こる可能性は低いと思われるニャン」
「この事件の追跡チェックよろしく」
「はいニャン」
ルキノはまたニュースのヘッドラインに戻ってチェックを始めた。
「ルキノ様、そろそろ時間ですニャン」
「そんな時間か。ひまりちゃんに会いに行くか」
どんぶりをオレンジ色のケースに入れて床に置いて仕事部屋に向かった。