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第2話 いろいろ試してみる

 俺は今、岩を鑑定している。

 自分でぶっ壊した岩だ。

 途中、自分がゴーレムになってしまったことへの憤りを感じ、何度も岩をぶっ壊した。 

 ジェンガを倒すかの如く、岩は容易く壊れる。

 おかげで、段々と気持ちの整理がついてきたところだ。


 しかし、岩には特段変わった性質はないようだ。

 種類は色々あるようだが、説明文を見る感じだと変わった岩はない。

 ガンジョ石、ジョウブ石…ほかにも色々な種類がある。

 見た感じ、違いはいまいちわからない。

 しかし、何かに使えるかもしれないという安直な考えの元、その岩は持ち運ぶようにしている。

 どうやっているかだって!?

 実は、洞窟探検をしている途中で、面白い常備スキルを習得した。


 

 常備スキル:体表保存



 最初は意味が分からなかったが、説示者(ガイド)に聞いたり、後は自分でいろいろ試しているうちに、分かった。

 簡単に言うと、自分の体に物を保存できるというスキルだ。

 例えば、洞窟内で集めたガンジョ石。

 これを持ち運びたいってときは、それを自分の体に近づける。

 すると、ガンジョ石は俺の体表と一体化するのだ!

 無論、俺の体表はやや分厚くなる。

 しかし、このスキルのすごい所はここにある。

 実はこれ、保存する対象と、自分の体表の材質が近ければ近いほど、保存する対象の体積を保存時だけ圧縮することが出来るのだ!

 簡単に言うと…

 俺の体は今、おそらく石系統だ。

 だから同じ石系統を保存しようとすると、例えばガンジョ石なんかは、本来の1/12まで体積を小さくして保存することが出来る。

 もちろん、取り出すときは元の体積に戻ってくれる。

 つまり、普通に持ち帰るより12倍楽だということ。

 これは良い。すごく良い。


 洞窟内に発生したアナグラグモも保存してやろうと、一回試してみた。

 しかしどうも、この体表保存は、動物には効果がないらしい。

 だからまあ、岩とか草とかならたぶん、保存できる。



 そんなこんなで俺は、かなり大量の岩を今保存している。

 若干体が重くなったような気がしないでもないが、あまり気にならない。

 そんなに保存してどうすんのー?って思うか?

 それは分からん。必要なくなったら捨てればいいだけだ。


 

 事物鑑定使用。対象は洞窟を照らす青い結晶。


青光結晶(ブルークリスタル)。微量の魔力を光源に変える鉱物>


 魔力…やはりこの世界にはそういうのがあるらしいな。

 この結晶の場合は、その魔力を、光に変えるということか。

 面白い、保存しておこう。

 ちなみに、体表保存と事物鑑定のスキルを組み合わせると、保存したい事物の体積がどのくらい圧縮するかをあらかじめ調べることが出来る。

 今回の青光結晶(ブルークリスタル)の場合だと、1/10だ。

 まあ石ほどではないが、同じ鉱物であるため、割と圧縮できる。

 もともと大きいものではないから、できるだけ保存していこう。

 面白いことに、この青光結晶(ブルークリスタル)を保存すると、保存した体の部位がわずかだが発光している。

 体表もわずかに青い。

 歩くクリスマスツリーでも作れそうな勢いだ。



 洞窟を歩いていると、再び魔物を発見。

 今度は初見の魔物…巨大なカニだ。


<ビッグアナグラクラブ。硬い甲羅と大きなハサミが特徴的。その身は美味である>


 なるほどなるほど、頷ける説明文だ。

 カニが美味いという認識は、こっちの世界でも通じるらしいな。

 案の定、カニは大好物だ。


 ビッグアナグラクラブは、横歩きで俺に向かってくる。

 ひとまず、ダイナマイトパンチを浴びせる。

 ビッグアナグラクラブは、吹き飛ぶ。

 ちなみにダイナマイトパンチとは、俺が命名した。

 最初に岩を壊した時のダイナマイト感が由来の、普通のパンチだ。


 ビッグアナグラクラブはすぐに体勢を立て直す。

 やはり甲羅は硬い。蜘蛛のようにはいかない。

 であれば、こちらも新技。

 ダイナマイトキック!

 ご存じ、普通のドロップキックだ。


 これは効いたようで、わずかに甲羅にヒビが入った。

 よし、後はあのヒビにありったけの打撃を浴びせれば…。

 しかしビッグアナグラクラブもそう簡単にはやられない。

 巨大なハサミを振り下ろす。

 何とかそれを躱すが、もう一本のハサミが背後から襲い掛かる。

 僅かに躱し損ね、肩のあたりを持っていかれる。


 これも先ほど気付いたことだが、俺には痛覚が存在しない。

 まあゴーレムだから当然だろう。

 だから、肩を抉られようと、痛くも痒くもない。

 それに、抉られた肩はすぐに修復するというのも、立証済みだ。

 体の一部が破損したときは、体表保存で保存した素材が、代わりに破損部分を修復してくれるのだ!それも自然に!


 俺はビッグアナグラクラブのハサミを両手で掴み、自分の体を軸にして振り回す。

 これぞ、ダイナマイトジャイアントスイングだ!

 そのうち、ビッグアナグラクラブのハサミはちぎれ、本体は吹き飛び、岩に叩き付けられる。

 その隙に、ヒビの入った個所に潜り込み、連続的にダイナマイトパンチを浴びせ続ける。

 この爽快感!最高ダァ!



<常備スキル:打撃耐性(極弱)を習得しました>



 よし、なんかスキルゲット。

 次はこの甲羅だ。

 この甲羅は、絶対何かしらに使える。

 俺は、ビッグアナグラクラブから、赤い甲羅をはぎ取る。

 やはり硬くて鋭い。

 そしてそれを迷わず体表保存。

 すると…


<スキル:蟹甲羅防御を習得しました>


 おっ、ここでスキル習得?

 蟹甲羅防御って…。

 試しに使用してみる。

 すると、俺の体が、ビッグアナグラクラブの甲羅で一瞬でコーティングされた。

 赤いゴーレムだ!

 俺のダイナマイトパンチでもなかなか壊れなかったこの防御。

 これは頼もしい。


 



 スキル習得には3つの方法があることがわかった。

 一つ目は、何の前触れもなく習得する方法。視覚付与や聴覚付与、体内時計などがそうだ。

 二つ目は、魔物を倒した際に習得する方法。倒した魔物に関連するスキルが手に入る。毒耐性や打撃耐性がそうだ。

 三つ目は、体表保存で物質を保存した際に習得する方法。しかしこれにはいくつかルールがある。 

 まず、スキルを習得するためには、保存する物質の量がそれなりに多くなければいけないこと。

 今回の蟹甲羅防御も、巨大なビッグアナグラクラブの甲羅の1/3を保存してやっと習得といった感じだ。

 もう一つのルールは、スキル習得の為に保存した物質は、消滅すること。

 まあ、当たり前といえば当たり前だ。




 

 俺がゴーレムになって、20時間が経過しようとしていた。

 体内時計があるからすぐにわかる。

 いい加減、洞窟の暗さも飽きてきた頃、俺はヤバいものを発見した。

 白骨だ。


 見た感じ、人の骨で間違いないだろうけど、一応鑑定っと。


<人骨。死んでから500時間が経過している>


 うわぁ、やっぱり人の骨だった。

 ってか、死んでからどれくらい経ってるかも教えてくれるのか…。

 500時間だと、一日24時間だとして、20日ちょっとか。

 最近っちゃ最近だよな。

 この洞窟には、頻繁に人が出入りしてるってこと?

 骨の周りには、着ていた衣服のものと思われる布や、剣が落ちていた。

 とりあえず、骨以外は全部体表保存。

 問題なく保存できた。

 骨は…罰が当たりそうだからやめておこう。


 とりあえずと思い、ダイナマイトパンチでちょっとした穴を掘り、骨を埋める。

 そして、岩を乗せる。

 土がないから完全に埋めるのは難しいが、これで何とか成仏してくだせぇ…。

 とりあえず手を合わせて、その場を去った。




 洞窟探検から30時間が経過した。

 やっとのことで、外の光が見えてきた。

 運よく外はまだ日の光が出ている。

 ここに来るまで、カニと蜘蛛を大量にぶっ倒した。

 おかげで毒耐性と打撃耐性は極弱から弱になった。

 真新しいスキルは習得できていない。


 さぁ、念願の外だ!

 30時間ぶりの外だァー!!


 そこは森の中だった。

 緑豊かな綺麗な森だ。

 木の香りも漂っていて、実に気分が良い。

 ってか、嗅覚もあるんだな。


 カサカサッ


 洞窟から出た瞬間、何かが動く音がした。

 あたりを見てみる。

 奥の方の茂みのあたりが蠢いているのが分かる。

 どうせろくでもない魔物だろう…見つかる前に攻撃だ!

 俺は走り出し、ダイナマイトキックを浴びせる。

 しかし、何かに弾かれ、俺は吹き飛ばされる。


 倒れたところに、何かを向けられる。

 日の光を反射した、鋭い剣だった。


「お前、何者だ?」


 俺に剣を向けていたのは、人間だった。

 黒と白の服に身を包んだかっこいい感じの…美少年だ。

 剣も強そうだ。

 ってか、こいつ自身がめちゃくちゃ強そうじゃねえか…。


 とりあえず謝って…

 って!声が出ないんだ!

 そう!ゴーレムになってからというものの、俺はなぜか声が出ない!

 発声器官が存在しないのだろうか…。


「俺は勇者として旅をしてきたが、お前みたいなヤツは初めてだな」

 

 初めて…?

 ってかこいつ勇者なの!?勇者とかいるんだ!

 勇者のくせにゴーレムが初見とは…。

 説明したいが、声が出ない。

 とりあえず、その場で慌てて土下座をしてみる。

 関節はあるから、土下座もできる。

 どうか殺さないでくれぇ~。


「ハハッ。お前、面白い奴だな。ハクと仲良くやれそうだな。…ハク!出てこい!」

 

 ハク…?

 勇者がそう声を出すと、茂みの中から何かが姿を現した。

 それは、白い体毛で覆われた巨大な…オオカミ?

 かなりデカい。

 目は鋭く青色で、牙も美しく鋭い。


「これは俺のペットのハクだ」


(貴様…誰だ…?)

 

 え?

 今の声……まさか、このオオカミの声か?

 勇者はこの声が聞こえているのか?それとも…。

 分からないが、とりあえず鑑定!


銀星狼(スターダストウルフ)。勇者の守護神。伝説の獣>


 なんかすごい名前と説明文…。

 こいつは勇者で間違いないようだけど…。

 説示者(ガイド)!このオオカミは喋れるのか?


<魔物同士と会話をすることは可能です>


 魔物同士…?

 ということは、やはりハクの声は勇者には聞こえていない…?

 いや、勇者だけが聞こえる…とかそういうやつか?

 いずれにしても、俺はこのオオカミと会話が出来るってことだ。

 と、とりあえず…念じてみよう。     


(どうも、ゴーレムっす)

(何!?ゴーレムだと!?)


 おおおおおおお!

 なんか知らんが、会話が出来たッ!!


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