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神王と魔王  作者: りあす
5/8

課外実習で…

召喚の授業から1ヶ月が過ぎ、だんだんとクラスでグループが出来始めた頃。


「皆さん、もう学校の授業には慣れましたか?

早速なんですが、明日から実際にギルドの依頼を受ける課外実習がをしていきます。」


朝一の授業でクリスから放たれたその内容に、目をこすって眠そうにしていた生徒達も湧き上がる。


ギルドとは、各国に点在しており、家の手伝いから魔物の討伐までの依頼を集め、そこに属している人員が自分の実力に合ったものをこなしてくれる「何でも屋」みたいな施設なのだ。


そして学校に入学した生徒達が楽しみにしていることの1つがこの課外実習である。


ここで学生は初めて「魔物の討伐」という依頼が受けられるのだから。


「はいはい、今日は私が依頼を持ってきましたが、次からは自分達でギルドで依頼を受注してね。

それじゃあ6人でグループを作ってグループに合ったレベルの依頼をここから探すので決まったら前に出てきなさい。」


クラスメイト達はそれぞれ仲が良くなったメンバーとグループを組み始める。


「俺達は4人…後2人とか何か嫌な予感がするんだけど。」


「私もそんな気が…。」


ヨハンとカノンがそんなことを言っていると、シンとマイはそれを聞いてか聞かずか、同時に立ち上がり同じ場所へと足を進めるので何事かと思いヨハンとカノンは2人を見ていた。


しかし次の瞬間、シンとマイの立ち止まった場所を見ては固まってしまう。


何故ならばシンとマイが立ち止まったその場所にとは例の双子の席であったから…。


「あら……あなた達何ですの?」


「僕達に何か文句でも言いにきたのかい?」


「もう、シンがそんな仏頂面してるから変に思われちゃったじゃん!」


「俺のせいにするな。」


ギャーギャー騒いでいるシンとマイ(主にマイ)にアリスは呆れて声を掛ける。


「…で、何のご用でしょうか?」


「おっとごめんねぇ。私達アリスとアレンとグループを組みたいと思って。

こっちは4人だし、ピッタリでしょ?」


「それにお前らは強い。お前ら程ではないが俺達4人はこのクラスのBランクだ。」


2人は少し考える様子をとるが何かを決めたのか深く頷く。


「そうですね、流石にこの課外実習に関しましては、私とアレンの2人だけということを許してはくれませんでしたし…。」


「そうだね…君達の提案に乗らせてもらおう。

だが、僕達のじゃまはしないでくれよ?」


「オーケーオーケー!よし、じゃあ依頼取りに行こう。」


「あぁ」


そう言いシンとマイは足取り軽くクリスの元へ依頼を取りに行くその後ろ姿を見ていたアリスとアレンは口元を少しゆるめていた。


「じゃあグループを組んだ人の名前を教えて。」


「えーっと、私にシンにヨハンにカノン、そしてアリスとアレン!」


マイの言葉に少し驚いたようではあったが、クリスはこのメンバーの実力を考え依頼を選び始める。


「BランクとAランクのいるグループにはこの位でも良いかもしれないわね。」


クリスから依頼を貰うとシンとマイはおかしな空気を出しているグループへと戻って行った。


「あれだけ色々言ってた2人を誘えるなんて……その度胸と勇気は寛大ね。」


教卓から去った2人を見てクリスは小さく呟いていいるのだが、そんなクリスの視線に気が付いているのかいないのか…2人は席に戻ると依頼書を机の真ん中へ突きつけ空気も読まずに説明を始めた。


「この依頼のランクはAの下だ。」


「4人がBランクだけど上位のAランクが2人いるからってクリスちゃんが。

内容は『ストロングベア3体の討伐』だよ。

1体でBの下だから大丈夫かな?まっ、群れない子達だから地道に行こう!!」


「「…………………」」


「「……ちょっと良い(です)か?」」


シンとマイの説明が終わるとヨハンとカノンが手招きをしてアリスとアレンから少し離れた場所へと移動すると小さな声で話し出す。


「シンもマイも何でもあいつ等を誘うんだよ。」


「他にもまだ決まってない人達がいたでしょう。それをわざわざ……。」


ヨハンとカノンはを恨めしそうに見てくるが、シンは大きな溜息きをつき、マイは呆れたように2人を見る。


「はぁ。お前等はあいつ等と同じ事していることに気が付いているか?」


その言葉にヨハンとカノンは理解が出来ておらず首を傾げた。


「ほら、アリスとアレンは家柄で人を判断してる。それと同じで2人は外貼りされてる性格しか見ていないでしょ?」


「外貼りって…。」


「違ってそれが本性だろ!?」


マイの言うことにヨハンは反論する。


「ここでどうこう言っていても意味はない。実際触れてみなければ分からないことも沢山ある。」


「そう言うこと。さぁ、戻ってパッパと計画立てるよ!」


マイは片腕を上げアリスとアレンの元へ元気良く戻り、シンもその後を追った。


「…2人の言うことも分からなくもないですが。」


「取りあえず戻ろう…。」


カノンとヨハンもゆっくりと腑に落ちないまま席に戻り、ギクシャクしつつも明日の計画を立て始め、そして日付は変わり、再び6人は1-2の教室に揃っていた。


「全員揃ったな?」


「じゃあ早速いっくよー!…と言いつつ、私この『紫の森』の場所知らないから誰か一緒に連れてって。」


物凄く張り切っていたマイの言葉にヨハンはズッコケ、カノンは苦笑いではアレン鼻で笑い、アリスは呆れる。


「たく…しょうがない奴だ。僕が送るから肩を掴んでろ。他にはいないな?」


アレンは小さく頷くアリス、ヨハン、カノンの3人を確認し転移しようとするとマイが掴んでいない方の肩にそっと手が置かれる。


「あなたもですか…。」


アレンの肩に置かれた手の主……シンを見て言葉を漏らす。


「知らんものは仕方ないだろう。」


「まぁ早く行こうぜ。」


「お前ら平民に言われなくてもそうするさ。」


そう言い残し、アレンは2人を連れその場から消え、アリスも直ぐに消えてしまっう。


「…なんだよあいつ…やっぱり嫌な奴だ…。」


「でもシン君とマイちゃんには何か普通ですね。」


その言葉に何も返さずヨハンは転移した。


紫の森…


「ここが『紫の森』だ。

この森には原因は不明だが、森の植物や生き物を紫色に染めてしまう魔力が流れている。まぁ、それが名前の由縁だ。良く覚えとけ。」


シンとマイを連れ転移をしたアレンは直ぐに2人に腕を組みながら鼻を鳴らし説明してくれる。


「じゃあここに出るストロングベアも紫色なんだ…………」


「えぇ、通常は茶毛なのですが森の魔力に長く触れていると色が変化いたしますの。」


「ほう。」


雰囲気の良い4人の会話に入らず、ヨハンとカノンはただ見ているだけ。


2人はまだアリスとアレンを受け入れられないのであろう。


そんなヨハンとカノンの事をちらりと見ながらシンとマイは念思を交わす。


"そう簡単に人の気持ちって気持ちって変えられるものじゃないけど、ちょっとしたことでガラッと変わっちゃうことってあるんだよね。"


"まあ人というものはそんなものだろう。きっかけがあれば全て変わる"


最後に「だね。」とマイが締め、6人は森の中へと歩み出した。


そして暫く森の中を歩き続けるが自分達の足音しか聞こえなないばかりか生き物の気配さえ感じられない。


「この森ってこんなに静かだったか?」


「…おかしいですわ。」


ヨハンの問に答えたのかは分からないが、アリスが異変を口に出す。


「…以前来た時はもっと賑やかだったはずだ。」


「やはり何かこの森に…。」


「しっ、皆静かに。」


いきなりマイが口元に手を当て、皆に静かにするように指示をする。


その行動にアリス、アレン、カノンは首を傾げるが、ヨハンは何かを感じたのか耳をピクッと動かしそのまま地面に耳を当てた。


「10…20…30……この足音…こっちに近づいて来てるぞ。」


「気を付けてね、結構やばい奴ぽいよ。」


ヨハンとマイがそう言うと、皆それぞれ武器を取り出し応戦体勢に入る。


そしてその音は皆の耳にも入り、目の前の木々が大きな音をたてなぎ倒されると同時に、その姿を目にするのだが、


「これはAランクの依頼ではなくなったな。」


「お前やけに落ち着いてるな。」


「気のせいだろ。」


言葉短くシンにアレンが言う。


そして木々をなぎ倒し6人の目の前に現れた存在。

それは巨大な紫色をした熊…そう、この森に生息する『ストロングベア』である。


「…ストロングベアは単独行動するはずですよね?」


「…群れるなんて聞いたこともないですわね。」


「僕も30体のストロングベアを見るなんて初めてだよ。」


カノンの問いに答えながら、アリスとアレンは武器を握る力を強めた。


「あなた達は下がってなさい。」


「お前達だけじゃ無理だ!俺も……!」


「足手纏いだ、君に僕達の何が分かるって言うんだい?」


「はぁ?!お前のその言い方…ふざけんじゃねぇ!!。」


ヨハンは今にも駆け出しそうな2人を心配し声を掛けたのだが、冷たくあしらわれ、アレンに食いかかってしまう。


そんな2人に気をとられていると、ストロングベア達は6人に狙いを定め突撃してきた。


その巨体もあり力もが強く、そして意外にも魔物の中でもそれなりの知能を持つストロングベアは、割り振りをしたかのように1人に対し数体と皆を引き裂いた。


魔力量の差なのだろうか、アレンとアリスに10体づつ、シンとマイに3体づつ、ヨハンとカノンに2体づつついている。


"あーぁ…見事に全員バラバラにされちゃったね。"


"アリスとアレンは心配ないと思うが…Bの下が2人で力を合わせてAの下…"


"Bの下の2人が対応出来るかしらね?"


シンとマイは念思で会話をした後、自分の前にいたストロングベアに向き合った。





Side アリス


「全く冗談じゃありませんわ。」


10体のストロングベアを見て言うアリスはちらりとほかのメンバーを見る。


「私とアレンは余裕なのですがBランクそこそこの4人に倒せますの?

仕方ないですわ…場所を移動し少し本気を出しまして早急に終わらせましょう。」


元居た場所からアリスは移動し、誰にも見られていないことを確認すると、右手中指にはめてあった指輪を外せばアリスを包んでいる空気が変わった。


「では行きますわよ!」


武器である青く細長い槍を構え、ストロングベアの群れの中に飛び込む。


水影滅斬スイエイメツザン!」


アリスの武器が水を纏い、1体のストロングベアを貫きつつも槍から放たれる水で離れ次々と心の蔵を貫いていった。


「本当に呆気いですわね。まだ本気を出しておりませんのに。」


宣言通り早急に終わらせてしまったアリスは武器をしまい見るも無惨な姿のストロングベアを残念そうに見ていた。


すると初めに居た場所から叫び声が聞こえてきた。


「あの声は!!!!」


アリスは慌て、一瞬でその場から消えた。


side end…




side アレン…



「僕は君達に負ける気は無いんで。」


挑発に乗せられたストロングベア達は一斉にアレンに向かい走り出すのだが、その様子を見たアレンは待ってましたと言わんばかりに人差し指にしていた指輪を外す。


するとアリスと同様にアレンの出す空気が一変する。



『ガァァァァァァ!!!』


「総出で来るのかい?それでも足りない…来たれ雷、来たれ嵐、合成、電風、そしてジザーク。」


短縮詠唱でアレンはジザークと呼ばれた黒銃には風や電気を纏わせる。


「行け、電嵐針撃デンランシンゲキ!」


トリガーを引き出てきた銃弾は全てを切り裂く風で覆われており、直接当たらなくとも周りにいるストロングベアには甚大な被害を与えた。


ピシャーーーン!!!


弾が直撃したものには大きな音と共に雷が落ちるのだ。


「たわいもない、これで終わりか。」


ジザークを収め一息ついていると叫び声が聞こえ、アレンは一瞬で姿を消した。


side end




side シン


「今は休暇中なんだが…。」


「ガァァァァァ!」


「はぁ…。ん?2つ魔力が高まった…あいつらか。」


3体のストロングベアから繰り出される拳をひらりとかわしながら、空気の変化に気付いたシン。


「ヤイバ。」


シンがヤイバの名前を呼ぶと目の前の空間から剣の柄が現れ、それを引き抜くと武器である白銀色の大剣が出てきた。


「一線。」


優雅に線を引くようにヤイバを振り払うと「ブシャッ!」と音を立て一体のストロングベアが倒れた。


残りの2匹はシンを挟み込むように突進してくる。


「…前の奴と同じだ。」


舞っているような立ち回りで2匹のストロングベアを絶命させた。


「声…あいつらか。まぁあの2人が向かえば十分だろう。」


シンは叫び声を気にはしたものの自分のやるべきことを成す為、動かなくなったストロングベアの上に手を翳す。


すると絶命したストロングベアの体から白い光が現れシンの手の中に収まった。


「さて、行くか。」


シンが去ったその場からはストロングベアの死体が消えていた。


said end



side マイ…


「うっわぁ…せっかくの休みなのに仕事しなきゃいけなくなっちゃったじゃんか…。もう、仕事の前にスッキリ気分転換しなきゃ。」


デスでストロングベアの攻撃を防ぎながらマイは1人で言っていたが、防いでばかりでは埒が明かず、デスの枝を持ち直し攻撃に転する。


円月えんげつ!」


叫ぶと同時にマイは踏み出し1体のストロングベアの懐に飛び込み、そのまま円を描くようにデスを振り払う。


1体倒れてもまた1体と連続で攻撃してくるストロングベアなのだがそれをものともせず、マイはいとも簡単に全て倒してしまった。


「もうちょっと頑張って欲しかったけど。」


マイはつまらなそうに動かなくなったストロングベアに手を翳し、白い光を手の中に収める。


「悲鳴?あっ…でもあの2人が行ったみたいだね。

魔力も強くなってるし…何か面白そうだから行って見よーっと。」


マイは軽い足取りでその場から離れたが、そこにあるはずのストロングベアの体はシンの時と同様に消えていた。


said end



side ヨハン&カノン…


「Bの下が4体…俺達に倒せるのか?」


「私に聞かないで下さいよ…でも私達で出来ることをするまでです。」


そう言い、カノンはフロウを握り締め魔力を練り込み、ヨハンも同様に魔力をアースに込める。


ストロングベア達が一斉に襲いかかってくる。


「ガァァァァ!!」


「フレイムショット!!」


「クレイショット!!」


2人は同時に火の下級魔法と土の下級魔法を放ち1体のストロングベアに命中したのだが所詮は下級魔法。


これだけではただの足止め程度にしかならない。


「だよな…だけど、クレイメイクプリズン!」


地面に力強く拳を突き刺すと、1体のストロングベアの足元の土が盛り上がり、その体を囲うように閉じこめた。


「続けてフレイムスター!」


土の牢獄に無数の火の玉が降り注ぐ。


それは大きな音をたて、土の牢獄ごと燃え上がるが残りはまだ3体。


2人は残りのストロングベアに備えた。


「ガァァァァ!!」


「ゴガァァァ!!」


「ブルァァァ!!」


通常は群を成さない種族のはずだがそんな知恵を持つストロングベアは見事なまでの連携プレーを繰り出し、2人が避ければ逃げ道を塞ぎ攻撃を仕掛ける。


「これでは身動きがとれないですね。」


「だけど動かないとまずいよな。」


ヨハンは目の前にいるストロングベアの懐に飛び込み、アースに魔力を流し殴ると同時にカノンが炎の防御壁をヨハンの周りに張る。


「ハァァァァァッ!!」


ヨハンは1体のストロングベアを強力な打撃で殴り倒し、残りの2体はのその攻撃から身を守るため一旦離れ、シールドを展開しているカノンへ標的を変え鋭い爪を振り下ろす。


「きゃぁぁぁっ!!」


ヨハンの身を守ることに集中していたカノンはそれに対し反応が遅れ、急に目の前に迫ったストロングベアの鋭い爪を見て恐怖で叫び声を上げる。


慌ててヨハンはカノンの元へ向かおうとするのだが、倒れていたストロングベアが立ち上がりヨハンに殴りかかってきた。


「うわぁぁぁぁっ!!」


咄嗟の出来事にヨハンは反応できず、思わず目を瞑ってしまった。


side end



もう駄目だと諦めかけていた2人だが、ストロングベアの爪は中々振り下ろされてこない。


不思議に思いヨハンとカノンが恐る恐る目を開けると、目の前にはストロングベアの死体が転がっていた。


「何が…。」


「どうなってるんだ?」


カノンとヨハンが声を出すと2つの人影がゆらりと動いた。


「全く心配させないで下さるかしら。」


「本当だよ。僕達が来なかったらどうなっていたことやら。」


そう言いつつ相当心配していたのか、安心を全て出した様な表情で2人の人物…アアリスとアレンはそれぞれ2人に手を差し伸べる。


「助けて…下さったのですか?」


「でも俺達…お前等2人のことを……。」


「良いから立てよ。」


「私達は性格上皆から良い目で見られたことはありませんので慣れていますわ。実際そういう態度をとっていることも事実ですし。」


少し悲しい顔をするアリスとアレンだがすぐに笑顔を向け、そんな表情を見てしまったヨハンとカノンは顔を見合わせ言う。


「今からでも遅くないよな?」


「本当に今までごめんなさい。」


いきなりの謝罪にアリスとアレンは戸惑いはしたものの、4人は本当の笑顔で笑い合っていた。


「てかシンとマイは?」


ヨハンはふとアリスとアレンに問いかける。


「僕達は君達の声を聞いて直ぐにこっちに来たから見てないな。」


「いけない!マイちゃん達の所に行きましょう!」


「そうですわね!」


4人が移動しようとすると近くから声が聞こえた。


「あーっ、皆仲良しだぁ。」


「良いことだ。」


突如割って入ったシンとマイは何事もなかったかのように呆けている4人に近づいてきた。


「叫び声が聞こえたが大丈夫だったか?」


「えぇ、アリスちゃんとアレン君が助けてくれました。」


「あぁ、それでね。」


ニヤニヤしているマイを見たヨハンとカノンは顔を少し赤らめ目をそらし笑った。


「皆無事だったという事で任務終了ですわね。」


「予定外のこともあったが戻ろうか。」


アリスとアレンの言葉で学園6人は転移をした。



その日の夜、ギルド本部帝の間……。


帝の間、それはギルド最強と呼ばれる7人のみが利用できる特別な場所で、国をも揺るがす内容の決議や報告などの際に使われる場所。


そしてこの日は定期的ある会議の日であった。


説明をしている内に『赤・青・黄・緑・茶・白・黒』のローブを着た男女が現れ、全員が席に着席すると赤いローブを着た男が話し始めた。


「全員揃っているな?ではまず、担当地区の報告を。」


「僕達から良いでしょうか?」


そう言い立ち上がったのは黄色のローブを着た男で、赤ローブの発言を許可すると頷き耳を傾けた。


「失礼します。」


黄色のローブの男の隣に立っている青ローブの女も立ち上がり口を開く。


「皆さんは僕達が学園に通ってることは知ってますよね。」


「今日その授業の一環でAランクの『紫の森のストロングベアの3体の討伐』という依頼を受けたのですが…」


「僕達が行くとそこに3体ではなく、30体のストロングベアが同時に現れたのです。」


2人の言葉、特に『30体のストロングベアが同時に現れた』と言うところで赤・緑・茶・白・黒のローブの人物達は目を見開き驚いていた。


「…ストロングベアは群れない。」


黒ローブの男は問う。


「雷帝の言うことが本当ならば今何が起ころうとしているのかも。」


「調べてみる必要がありそうね。」


「わしらがなんとかせねばのぉ。」


白・緑・茶のローブの男女は、雷帝と呼ばれた黄ローブの男を見て言う。


「ふぅ…。この件は7帝で調べておこう。」


赤ローブの男が話を締め終了した。


そして会議終了後…


「水帝、雷帝。」


赤ローブの男は青ローブの水帝と雷帝を呼び止める。


「炎帝何でしょう?」


「僕達は明日の学園の準備をしないといけないんだけど。」


水帝と雷帝は嫌そうな顔をし、赤ローブの男、炎帝にいう。


「いやぁ、ごめんね。」


「炎帝、話し方が戻ってるよ。」


「威厳の欠片もないですわね。」


先程の威厳のある声ではなく、優しい声で話す炎帝に2人は鋭いツッコミを入れるが、それに対して炎帝は笑顔で返した。


「別に素で話しても良いじゃないか…それよりも君達とグループを組んでいたメンバーは大丈夫だったのかい?」


「ピンチはありましたけど…2人は自力で戻ってきましたわね。」


「魔力はBの中位何だけど…僕はそれ以上に彼らに何かを感じるんだ。」


「君達が認める人が現れるなんてね。んー……2人は決定かな?」


2人は炎帝の言う言葉に『?』を浮かべ首を傾げる。


「ごめん、言っていなかったね。僕は君達2人に学園で有能な生徒を探して貰いたいんだ。」


「僕達で?」


「うん。」


「あなたが集めれば良い事だと私は思いますが。」


「僕が動くと事が大きくなって問題が起こる可能性があるし、今ギルドも人員不足でね。

小回りの効く隊を新しく学生で組もうと思ってるんだ。

因みに君達にその隊を仕切って貰うつもりだよ。」


炎帝は有無を言わせない笑みを浮かべながら言う炎帝に、根負けしてしまった水帝と雷帝は小さく息を吐き出し了承の意を伝え


「ふぅ……分かりましたわ、引き受けましょう。」


「はぁ、炎帝は炎帝の仕事と学園の仕事をしっかりてして下さいよ。」


「ありがとう。アリスさんとアレン君、用事はこれだけなので寮に帰っても大丈夫ですよ。」


笑いながら水帝基アリスと雷帝基アレンは会議室から出て行き、そんな2人の背中を見送った炎帝基学園長は会議室の自席に腰掛ける。


「群を成すはずのない魔物が群をなす。有り得ないことだけど魔物を操ることが出来れば可能か。

仲間内や学園にそういう輩が居なければいいけど…。」


炎帝は呟き、目の前にある会議で提出された報告書を読み直し始めた。



一方、精霊界では…


「ロードよ、神王様達がおらぬとも精霊界は平和ですなぁ。」


「そりゃあそうじゃろ。

この精霊界で一番問題を起こすのはあの2人(特に魔王)じゃからな。」


「魔王様の性格がもう少々おしとやかであれば…。」


木霊とロードは同時に溜息を付いたその時、2人の後方が急に輝きだしたかと思うと人影が現れる。


「はぁい、木霊とロード?今私の事で何か言ったかしら?」


2人の影の内の1つ、黒い髪に赤い瞳、黒い翼を持つ女『魔王』が自分の姿にも負けないくらいどす黒い何かを出しながら笑い立っている。


「……もしかして怒っていらっしゃるのでは?」


「ふふっ、そんなことないよ。」


「怒っとらんのであればその黒いものは……。」


「コレはね…ダークスモーク、2人を縛り上げちゃって。」


黒い何かは煙に変わり木霊とロードに近付くと、長細いロープ状に形状を変化させ2人をあっと言う間に縛り上げた。


((やっぱり怒ってる…。))


この2人は神王が止めにはいるまでしばらく縛り上げられた状態で過ごした。


「お前達、魔王の性格に関しては同意見だが本人のいないところで言え、」


「何おぅ!?」


「木霊にロード、ソウルルームを使わせて貰うぞ。」


神王は怒る魔王を気にする素振りをを見せることなく1つの部屋には行っていった。


「もうっ、毎回無視するの止めて!それにおいていかないでぇ~~~!!!」


スタスタと歩いて行く神王に大声で叫んだ後、魔王は神王の入った部屋に入って行く。


「魂の部屋を使用するなど……下界で何かあったのか?」


「眠りについた魂の人格を呼び起こす部屋…何もなければいいんじゃが……」


木霊とロードは閉められた扉を見て呟いた。


「さてと……魔王、しっかりと魂は回収してきたな?」


「勿論ですとも!」


神王の言葉に元気に返事をした魔王は天井から落ちて来る水滴を両手ですくうようなポーズをとると、掌から3つの白い発光体が現れた。


「俺の回収したのと合わせ数は6。」


神王も同じ様に白の発光体を3つ出す。


「魂が寝ているって事は、この子達は自分の意志で私達を襲った訳じゃないみたいね。」


「何かに操られていたらしいな…お前ら、起きろ。」


神王は6つの魂に手を翳し言うと、机の上で微動だにしなかった魂達がふよふよと浮き上がる。


通常、魂は自分の意志で浮遊できるが、生前自分の意志で行動出来なかった者の魂は自分の意志で行動することが出来ない。


神王にはそれを無理矢理に起こす力があり、魔王は逆に眠らす力を持っている。


2人は起きたストロングベアの魂と会話を始めた。


「……理解した。」


「うーん…誰かは分かんないか。」


6つの魂は話しかけるように点滅する。


「大丈夫あなた達は安心して。」


魂達の問いに答えた魔王は胸を張り言う。


「早速だがお前等には選択して貰う。

まずは、この世界の住人、精霊として暮らすか。

はたまた記憶を消し生まれ変わり再び地上で暮らすかだ。」


神王の言葉に魂は直ぐに反応はしなかったが、決心をしたのか、点滅をする。


「そっか…そうだよね。

こんな中途半端な記憶より新しい人生を生きる方が良いよね。」


魔王の発言から察するに、6つの魂は生まれ変わることを望んだようだ。


「ではお前達を天界の魔物の集落へ送り届けよう。

魔王、入り口は任せたぞ。」


「OK!」


魔王が地面に手を着くとそこに大きな穴が現れた。


「天界に続く道…ブラックホールの出来上がり!」


ブラックホールという言葉に魂達は激しく点滅する。


それもそうだ。


ブラックホールとは、超高密度な為に、光を含む全ての物質が逃れることの出来ない天体のこと。


「大丈夫、私と神王の持つ力の殆どは反対。」


「魔王が入り口を作れば俺は出口を作る。だから安心して飛び込め。」


身動きをとろうとしなかった魂は再び決心をし全員揃って飛び込んだ。


「今度は真っ当な人生を生きなさいよ!」


魔王の言葉に一度点滅して見せた魂達は見えなくなった。


「行ったね。」


「あぁ……。」


「情報つかめなかったね。」


「あぁ……。」


「あぁ……。」


「あぁ……。」


「…………。」


「あぁ……。」


「神王のバカァァァァ!!」


「煩い、耳元で叫ぶな。」


ここにこの状況にかすかに口元を緩め楽しむ神王様がいましたとさ。

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