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神王と魔王  作者: りあす
4/8

武器と召喚と模擬戦

シンが目を覚まし、制服に着替え階段を下りると、リビングからとても良い香りがしてきた。


「…カノンか、おはよう。」


シンは人数分の朝食を準備してくれていたカノンに挨拶をするとカノンは明るい笑みを浮かべ挨拶を返してくれる。


「シン君おはようございます。マイちゃんとヨハンはまだ寝てるみたいですね。」


「そうだな。だがマイなら直ぐに降りてくると思うぞ。」


カノンは不思議そうな顔をしていたがバタバタと足音を聞いてクスクスと笑う。


「シン君はマイちゃんの事を良く理解してるようで。」


「…………。」


その言葉に対しシンは口を開かず、足音の正体であるマイが現れ大声を上げた。


「シンにカノンおはよー!朝ご飯の良いにおいで目が覚めちゃった。カノンが作ってくれたの?」


朝からハイテンションなマイを見てシンとカノンは苦笑いを浮かべていたが、マイはそれを気にすることなく席に着くと、朝食を食べ始めた。


「んぐ…で、ヨハンはまだ寝てるの?」


ご飯を飲み込んだマイがシンとカノンに言うと、カノンは大きく息を吐き出しつつ答える。


「ヨハンは誰かが起こしに行かなければ起きてきませんよ。」


「あれ?カノンはヨハンの事良く知ってるね。」


ニヤニヤとした笑みを浮かべ言うマイの言葉に反応したカノンは、顔を真っ赤にさせながら


「なっ、なにを言ってるんですか!?

私とヨハンはただの幼なじみでマイちゃんの考えてるような………。」


「自滅したな。」


シンの言葉に更に顔を赤くしたカノンは慌てて階段を上がりヨハンを起こしに行った。


「本当、バレバレだよね。」


「あぁ……。」


「あれ?何か嬉しそうじゃん。」


「昨日の仕返しが出来たからな。」


シンが普段のポーカーフェイスを崩し言い、朝食を食べ進める。


しばらくするとカノンと何故か顔を赤く腫らしたヨハンが降りてきて食事をとり、4人で教室へと向かったのだった。


ヨハン頬について何となく察しのついたシンとマイだったが、面白かったので特に何も聞かずいたとか。


4人が教室に着くとやたらと教室が騒がしく、その中心にいたのは そのこのクラスのアガーテ姉弟である。


「平民風情が僕達に逆らおうなんて100年早いんだよ。」


「言葉に対して実力が伴っていませんわね。」


「くっ…。」


「お前らアガーテ家のせいで俺達の両親は…」


「私達は絶対にあんた達を許さないんだから…」


別のクラスの生徒だったらしい3人は捨て台詞を残し、それぞれ教室へと戻って行く。


「絶対関わるなよ、関わったら今度は俺達が何かされんだからな。」


「そうです。触らぬ神に祟りなしと言いますし…さぁ、席に行きましょう。」


ヨハンとカノンは本当に関わりたくないらしく、そそくさと自分の席に着いた。


"あの双子の最後の顔を見た?"


"あぁ、苦しそうだったな。"


マイとシンが念思で会話をし何事も無かったかのように席に着くと同時にクリスも教室に入ってきた。


「はい皆さんおはようございます。」


『おはようございます!』


クリスが挨拶をすれば皆しっかりと返事を返す。(例外3名)


「皆さん今日は学校に入学できると決まってからきっと待ちに待っていたと思う魔武器造りと精霊との契約をします。

ホームルームが終了したら直ぐに第1練習場に集合してください。

では次に……」


他にもクリスが連絡事項を伝え、ホームルームは終了するのだな、余程楽しみにしていたのか、クリスが教室を出て行く前に生徒達はもの凄い勢いで教室を飛び出して行ってしまった。


その様子にクリスも驚いているようだ。


「おい、俺たちも早く行こうぜ!」


「わくわくしますね。」


ヨハンもカノン人も他の生徒同様に今から行うことがとても楽しみな様で先に行ってしまった。


「あははっ、元気だねぇ。ほら、シン急がないとヨハンとカノンに怒鳴られちゃうよ。」


「精霊も魔武器も逃げたりはしないんだが…まぁこのクラスの人がどの精霊を呼び出すか楽しみではあるな。」


シンの言葉にマイも同感らしく頷き、2人の後を追うように教室を後にする。


そして第一練習場着くと、既にクラスメイトとクリスもやる気満々といったような雰囲気を醸し出していた。


「さてみんな集まったわね?

じゃあまずは4人グループを作ったら魔武器を造る為に必要な『魔石』を取りに来て。」


クリスが言うと生徒達はグループを作り始めるが、誰もアガーテ姉弟と組もうとする人はいない。


元々分かっていたのだろうが、クリスは2人を1つのグループとし、30人のクラスなので1つを5人グループとした。


勿論シン・マイ・ヨハン・カノンは同じグループである。


そして魔石が全グループに行き渡ったことを確認したクリスは魔武器製作の流れについて一通りの説明をし、遂にその時はやってきた。


「それでは私が今から1グループづつ魔武器を作るための陣を書くので順番に魔石を乗せ魔力を流してください。

ただし、沢山流せば言い訳じゃないので注意ですよ。

それじゃあ質問は?」


早く魔武器を造りたいのか、誰も手を挙げ質問することは無く、その様子に少し寂しそうではあったが、クリスは気を取り直し授業を進めることにした。


クリスが魔方陣を描いていったグループからは次々魔武器が造られる。


「なぁなぁ、俺からやって良いか?」


ヨハンが3人を見ながら言うが誰も反応しなかった為、陣に魔石を置き魔力を流すと陣に描かれている文様を縁取る眩い光とともに、魔石は両手用の茶色いナックルへと形を変えていた。


「これが俺の魔武器…ん?頭に何か…。」


その声が聞こえたのか、すかさずクリスが説明をしてくれた。


「魔武器を造ると頭の中に言葉が浮かんできたと思うけど、それは武器の名前。

名前を覚えていないと武器特有の能力が使用できないので覚えておくように。」


クリスの話を聞いた生徒達は武器の名前をしっかりと頭の中に刻み込み武器を手にする。


「俺の武器の名前はアース…能力は……テヘッ。」


「「「キショっ」」」


3人はヨハン緩い笑みに同時に言葉を発してしまった。


「では次は私が行きます。」


そう言うとカノンはヨハンと同じ様に魔力を流すと陣の上に現れたのは上部に水晶玉がついており、先が二又に鋭く尖っている杖。


「私の武器はフロウです。能力はヨハンが言わなかったので秘密にしますね。」


「じゃあ次はあたしね!」


カノンはフロウを大事に抱え陣から離れると、交代でマイが手を挙げ陣の中に入る。


マイも同様に魔力を流すと陣が輝き、光が止むと中には漆黒の大鎌があった。


「へぇ……デスね、みんなー私死神みたいじゃない?」


笑顔で大鎌を振るうマイを見た生徒達は恐怖に顔を歪めたに違いない。


「俺は大剣ヤイバだ。」


「ってお前いつのまに!?」


「マイに気を取られてる隙にだ。」


何でもない様に言うシンに「アハハ…」と乾いた笑いをするヨハンであった。


「はい、魔武器造りは全員順調に終わったみたいね。次は精霊との契約に移ります。


精霊との契約には今から私の描いた陣の上でさっきと同じ様に魔力を流してもらいます。

様々な種族のいる精霊には多種多様の契約方法があり、それが全て安全とは限りません。


なので私が危険と思えばすぐに中断させます。

ではアリス・アガーテさん、前にきてください。」


クリスに呼ばれ、アリスはゆっくりと前に出で両膝を地面につき、陣に触れると魔力を流し始めた。


すると目を開けていられないほどの光が第1練習場全体を包み込んだ。


光が止み皆が目を開けるとそこにアリスの姿が無はい。



「…まさかアガーテさんは精霊界に……学生でそんな……まさか…。」


クリスは信じられないのかブツブツと言いながらアリスのいた場所を見つめている。


契約時に人が精霊界にに呼び出されるという事は高ランクの精霊が選ばれたということ。


高ランク精霊と契約する方法の殆どが戦い力を示すことなのだ。


全員が何事かと思いながら見ていると、何も無かったかのようにアリスが戻ってきた。


「アガーテさん、大丈夫!?」


クリスが血の気の引いた顔でアリスに駆け寄るのだが、さも迷惑そうな顔でアリスは答えた。


「こんなことで心配していらっしゃるようですとこの先教師として長続きしませんわよ。」


アリスはアレンの元に戻り交代でアレンが陣に魔力を流すのだがやはりアリス同様に精霊界へと呼ばれてしまう。


”まだ16でしょ?なのにAA呼んじゃったね”


”あの2人はまだ力を抑えている。召喚の場合は量より質だからな。

これがあいつらの実力なんだろう。”


念思で2人が話しているとアレンも無事戻ってきた様で、またしても何事もなかったかの様にアリスの元へ戻って行く。


そしてそのまま精霊召喚は続けられるのだが、大抵の生徒はDやCランクの精霊を召喚していた。


そして召喚はスムーズに進みマイの順番となったのだが、陣の前でなにやら悩んでいる。


「んー…。」


「ダークスさんどうかしましたか?」


クリスがマイに声をかけるが、それを気にも止めずマイは大声を張り上げる。


「よし決めた!先生、行きますよ!"黒狐(ココ)ちゃん来て"」


念思でマイは黒狐という名前を呼ぶと陣に魔力を流す。


すると陣から黒い煙が淡き上がり黒い狐がちょこんと座っていた。


"良かったー、その姿で出て来てくれて。"


"魔王様が地上で学生をされていることは存じておりましたので。


魔力もBランクほどまで抑えております。"


”完璧!”


マイは一旦念思を切ると直接黒狐に話しかける。


「狐さん、私と契約してくれるかな?」


「それでは私の額に触れてください。」


「はいっと。」


マイはポンっと黒い狐に触れると額が淡く輝き契約が完了した。


「はい、ありがとうございます。私は黒狐(クロギツネ)黒狐(ココ)です。宜しくお願いしますね。」


そして次はシンの番。


「マイが黒狐なら…"(シロガネ)、来い。"」


マイと同じ様に念思で呼び掛けるとシンは陣に触れ、輝き終えたそこには白銀色の狼がシンを見据え座っていた。


"銀悪いな。"


"構わぬ。どうせ魔王に呼ばれ黒狐の奴もいるのだろう。"


"あぁ。"


"あいつは俺と魔王のどちらが大切なのだろうか…。"


銀と黒狐は神王と魔王の側近でもありとても精霊界の中でもとても仲の良いおしどり夫婦としても有名なので、だからこそ魔王を優先して先にこちらに来たことに対し寂しさを感じ、声色が小さくなっている銀。


そのことを理解しているシンは同情しながらも形だけでも契約をしようと銀に声をかける。


「…契約方法は?」


「そんなものはいらぬ。」


銀にそう言われてしまえば何も言うことは出来ないシンはそのまま戻ることにした。。


銀のランクもBに合わせている。


「ようやく俺の番だぜ!」


そう叫ぶとヨハンはやる気満々で陣の前まで進み魔力を流し出すす。


すると目の前に土で出来ているらしい体のドラゴンが現れた。


「俺を呼んだのはてめぇか?」


「あぁ、俺と契約してくれないか?」


「まぁ…精霊界は何かと暇だからいいぜ。契約方法は俺に名前を付けてくれ。」


「じゃ『ロック』なんてどうだ?」


「俺は岩じゃないが……まぁ良いだろう。これで契約完了だ。

今日から俺はアースドラゴンのロックだ。頼むぜ相棒。」


そう言い体を小さくしたロックは精霊界に戻って行った。


"アースドラゴンの子どもね。大人はもっと大きいし。"


"子どもはBランクだが大人になるまでにAAランクになる可能性はある。"


ロックが消えた後、シンとマイが念思で会話をしているとカノンに順番が回ってきた。


「私も行きますね。」


カノンも陣に触れ魔力を流すとそこに現れたのは体に炎を纏っている赤毛の猫であった。


「僕を呼んだのは君かい?」


「はい、あなたは?」


「僕はファイアーキャットのケインだよ。」


「私はあなたと契約をしたいのですが…。」


「そうなの?僕Bランクで大人になったらAAまで上がる予定だからそれなりの実力のある人だったらいいかな……。

ということで、これを防いでみてよ。」


ケインは口を大きく開けると口の中になにやら炎が集まりだし、それがある程度まで大きくなるとケインは躊躇無くそれを放った。


「炎よ、私の声に答え私を守りたまえ…ファイアーフォール!!」


カノンは火の魔法では難易度が高く数も少ない防御魔法を火球が発射されると同時に発動させる。


炎の壁と大きな火の玉はどんどんと近づきそして…………


ズガァァァァァァァァン!!!!


大きな音を立てぶつかり、砂煙が辺り一面を包み込む。


「ケホッ…うん、しっかりと守れたようだから僕は君と契約するよ。えーっと……。」


「私はカノンです。ケイン宜しくお願いしますね。」


「こちらこそ。それじゃあ僕は一度精霊界に帰るから何かあったらよんでね。」


ケインはポンッという可愛らしい効果音と共に精霊界に戻って行った。


"ファイアーキャットの子ども…しかもあいつは精霊界のカロン火山帯に住む奴だな。"


"あそこのファイアーキャットって生意気な性格だけどなかなかの実力者が揃ってるんだよね。"


シンとマイが念思で会話をしているとヨハンとカノンが2人の元に戻って来る。


「俺達の精霊はどうだ?」



「ん?あぁ…中々良い精霊だ。」


「ロックとケインだっけ?将来敵には結構な力つけると思うよ。」


ヨハンとカノンは2人に誉められ少々上機嫌。


そして時間が経ち、再びクリスが皆を集めた。


「じゃあ今から模擬戦をしてもらいます。

精製した武器や召喚した精霊を利用しても構いません。

危険と判断した試合は私が無い止めますから安心しなさい。

それじゃあ2人組になってね。」


生徒達は言われたとおりにそれぞれペアを組み、シンはヨハンと、マイはカノンと模擬戦をすることになった。


模擬戦が始まるのだが、DやCランクの多い学生同士の戦いなのでシンとマイにはかなり低いレベルの戦だと感じられる。


ただ例の双子を除いては………

















「雷と風の…サンダーバレットそしてウイング!!」



アレンは武器であるらしい銃の弾に電気を纏わせ放つと、その銃弾の速度を風魔法で上げアリスを狙う。


「甘いですわ、スプリットレボリューション!!」


対するアリスはというと武器である槍を2つに分裂させ回転させる。


「ガードブロウ。」


続けざまに回転している槍に風を付加し、竜巻を作り出す。


そして竜巻の風に電気を纏う銃弾は風の勢いに圧され、地面に落ちてしまうのだが、アリスの放った竜巻は勢いを増しアレンを目掛け止まることを知らない。


「仕方ないね、竜巻には竜巻を……(オロシ)!!!」


完全なる攻撃魔法。


アレンの目の前に複数の竜巻が出現し、最終的には全てが合わさり1つの大きな竜巻となる。


その竜巻はアリスから放たれた竜巻とぶつかると大きな音を立て相殺してしまう。


キンっ、ドキュン、ガッ!!!


お互い魔法では埒が明かない考えたのか一気に距離を詰め、接近戦へと持ち込む。


槍と銃という武器は決して近戦向きというわけではないのだが、2人は難なくそれを使いこなし戦っている。


「分裂するのは厄介だな…だけどっ!!」


そう言うとアレンは自分の足に風と電気を付加させ、普通ではあり得ないスピードでアリスの懐に潜り込み肘で腹部に打ち込んだ。


流石のアリスもこれには地面に膝を付き咳き込む。


「…レディーにそんな事するなんて紳士失格ですわね。

ですが地面に膝を付いた時点で私の負けですわ。」


アリスはゆっくりと立ち上がるとその場から離れて行った。


「2人は他の生徒とは違うわね。

次はダークスさんとルストンさん、ステージに上がって。」


クリスに呼ばれ、マイとカノンは練習場のステージに上がる。


「学生では高位のBランク同士の試合ですので皆さんしっかりと目に焼き付けて。」


『はーい!!』


と一斉に生徒達は返事をした。

このクラスは本当に素直な生徒が多いと思うのは気のせいではないだろう。


『(まぁ、さっきのは流石に学生としてはねぇ…てか私もBじゃないけど……やるしかないか。)』


そんなことをマイが考えていると、クリスが試合開始の合図を出した。


「フロウ!」


まずカノンが声をあげると手元に光が集まり形を作り出す。


その形とは勿論先程造った魔武器である。


「んじゃあ私も…デス!」


カノンが魔武器を出したことにより、マイも己が魔武器である大鎌を呼び出した。


「行きます!火…圧迫………ファイアープレッシャー!!!!」


下級・中級・上級・究極・神級とある魔法ランクの内、カノンは短縮詠唱で火の中級魔法を放つ。


短縮詠唱とは、魔法を発動するために必要な呪文をショートカットし、威力は低くなるものの、魔力の消費量を抑えられ、素早く発動できることである。


マイの頭上に現れた炎の固まりは、重力に逆らうことなく、マイを目掛け真っ逆さまに落ちてきた。


「こんなの避ければ良いだけじゃん………って……まじ…?」


マイは落ちてきた炎の塊を避けたと思ったのだが、炎の塊は地面に落ちずマイに向かって方向転換をしたのだ。


「~~~~♪」


カノンは鼻歌を歌いながら魔武器の杖を振ると、杖の動きと連動する様に炎はマイを追いかけ続けた。


「その武器の能力ね。逃げてても(ラチ)が明かないから相殺させてもらうよ。」


マイは足を止め後ろを振り返ると手を前に突き出す。


「闇……伸縮、炎を囲んで。」


マイも短縮詠唱で魔法を発動すると、黒い靄が炎を囲み炎の動き止める。


「中級闇魔法…普通は相殺しますが…これはどうでしょうか?」


しかしカノンは炎が完全に消されてしまう前に杖を再び振るうと自分から炎は消してしまった。


「魔法を消してどうするつもり?」


マイははつまんなそうな顔をし魔法を解きカノンに言うのだが、カノンはこの瞬間を狙っていた。


「今です!!!」


隙を見計らいカノンは声を上げ、杖を空高く突き上げると、マイの足元の地面が急激に温度が上ったのだ。


「うぁっちー!!!!」


「足下だけではないですよ、ファイアードーム!」


足下の地面から火が燃え上がり、マイを取り囲む。


「どうですか?」


「へぇ…魔法を地面に隠してたってわけね?」


「正解です。マイちゃん、今空気中の酸素が分解され息がし辛いでしょう?早く降参してください。」


「カッチーン…!なーんかムカつく……デス、切り刻むよ!!」


基本短気なマイはカノンの言葉を己に対する挑発と捉えデスを握りしめると、火の壁を狙い振りかぶり直ぐに振り下ろす。


ズパァァァァァァァン!!


マイがデスを振り払った場所には見事裂け目ができ、そこから火が消えてしまった。


「中々苦しかったよ。」


「涼しい顔をして何を言っているんですか。

それに…その魔武器の能力は魔法を消滅させてしまうということですかね。」


「強すぎる魔法は切れないけど結構便利なんだ。」


「私の魔法は全て切られてしまいそうですね…あまり接近戦は得意じゃないですが仕方ありません、火の強化!」


カノンそう言うと、カノンの体を火が包み込み、数秒で消え、マイの目の前からもカノンが消えた。


(火の強化…火はの力の象徴なんだけど……)


マイはカノンの行った強化を予測し後ろを振り返りデスで防御の体制を整える。


それと同時に金属同士がぶつかる音がした。


「やっぱりね。」


「良く受け止めました。」


マイが構えていた場所にカノンが先の鋭い杖で攻撃を仕掛けていたのだ。


「炎系の強化って主に力を上げるんだけどまさかそれを自身のスピードに変えるなんて良く考えるわ。」


マイは感心したようにカノンに言う。


「ありがとうございます。では次に行きますね。」


カノンは自分の胸の位置で手を合わせ、そしてその手をゆっくりと離し広げると炎は槍の様に伸び宙に浮いていた。


火炎槍(カエンソウ)、行って下さい!」


カノンの指示に反応した炎の槍はマイに向かい物凄いスピードで一直線に飛び出した。


「(んー…あきちゃったな)形だけでも、ダークシールド。」


マイは火炎槍を防ぐために闇のシールドを作り出すのだが、それを場外で見ていたシンは大きなため息を付き呟く。


「あいつ負けるな。」


「何で?防御してるだろ?」


シンの呟きを聞いていたヨハンがシンに問うと、何も言わずにステージを指さす。


それと同時にシールドと槍がぶつかる音がした。


「降参だよ、魔力が尽きちゃった。」


マイの言葉を聞いたクリスは右腕を上げ、カノンの勝利をクラスに告げた。


「あ゛ーっ、疲れたぁ。」


「そんなに魔力使ってないだろ。」


「だって学生に本気になっても仕方ないじゃん。」


「まぁな。」


ステージから降りてきたマイはシンに周りに聞こえないくらいの声で言っていると、カノンが不思議そうにこちらを見ていた。


「なぁ、なんでシンはマイが降参する前に負けるってわかったんだ?」


先程のことがまだ気になるヨハンはそのことが気になるようで、再度シンに問いてくる。


これはカノンも聞きたいようだ。


「はぁ……こいつのシールド、魔力の込め方が少なかったんだ。

中級の魔法同士で同じレベルだと相殺する。

なのに相殺せず、シールドが破壊されたのがその証拠だ。」


分かったか?と最後にシンが付け足すと2人は深く頷いていた。


「ライト君とグラバス君、ステージへ。」


クリスの声が聞こえ、今度はシンとヨハンはステージに立つ。


「マイちゃんはどっちが勝つと思いますか?」


ステージを見ながらカノンは隣にいるマイに聞くのだが、マイはステージにいる2人を見て笑っている。


「どうしたんですか?」


「あーごめんごめん。この勝負はきっとシンが勝つと思うよ。

あいつ結構負けず嫌いで手は抜かないし、でもまた負けるところもみたいなぁ。


あいつ昔私に負けて1週間自室にこもってぶつぶつ言ってたっけ。

うっわぁーなつかしい!よし、シン負けろー!

負けたら私の言うこと何でも聞けぇーー!!!」


ステージに向かって叫ぶマイをカノンは苦笑いで見ていた。


「チッ、誰が負けるか。」


「シンも大変だな……けどこの勝負は俺が勝つぜ!!!」


そうして2人の戦いが始まった。


「ロック来てくれ!」


ヨハンは先程召喚した精霊、アースドラゴンの『ロック』の名前を呼ぶと、地面が輝き、そこからロックが現れた。


「ん?何かようか?」


「今実技中でよ、お前の力が見てみたいと思って呼んだんだ。一緒に戦ってくれ。」


少し間を空け、ロックは了承した。


「……銀お前も来い。」


シンが銀の名前を呼ぶとシンの隣の空間が割れ、そこから白銀色の狼が現れる。


「何だ?」


「授業でな…あいつと遊んでくれ。」


「アースドラゴンの子どもか。」


小さく呟いた銀は地面を蹴りロックの目の前に立つ。


「アースドラゴンの子よ、遊んでやるから来い。」


「何を偉そうに…お前ムカつくな。」


そして2人の精霊の戦い(?)も始まった。


精霊を呼び出したシンとヨハンは武器を持ちお互いの出方を探り合っていたが、ヨハンが初めに動き出した。


「行くぜ、甲打連撃(コウダレンゲキ)!!」


獣人であるヨハンは元から肉弾戦が得意ではあるのだが、今のこの連撃速度は学生ではあり得ないくらいに早い。


しかしそれをものともせずシンは大剣『ヤイバ』でヨハンの連打を全て防ぐ。


「…この速度に重さ、学生ではありえない。」


その声が聞こえたのか、攻撃を止めることなくヨハンは言う。


「これが武器の能力。1度に2カ所までだったら肉体が強化出来るんだぜ。」


「2カ所って微妙だな…。」


「うるさい!!!!馬鹿にするんだったら止めて見ろ!!!」


ヨハンは打ち続ける。


「…馬鹿の一つ覚え。」


ボソッと呟いたシンは、ヨハンとヤイバがふれあう瞬間を見極めヤイバを振り払うと、いとも簡単にヨハンを吹き飛ばした。


「容赦はしない……全てを照らす光、此処に集まりて形を成せ、そして全てを貫け……メテオシャワー。」


魔法の詠唱を短縮せずにしっかり言葉に出し、シンは魔法を放つ。


光が輝く大きな球体が現れた、それがいくつもヨハンに降り注ぐ。


光の球の数と勢いに圧されたヨハンにはこれを防ぐ術も無く、この勝負はシンの勝利という結果で終わった。


「大丈夫か?」


シンはヨハンの元へ行き手を差し出すとヨハンは手をガシッと掴み立ち上がったので元気ではあるらしい。


2人はそのままマイとカノンのいる場所まで歩いて行く。

…勿論手は繋いでいない。


「お帰りなさい。」


「シーン、なんで勝っちゃうかな?」


シンはマイの言葉を無視しヨハンと話し出す。


「ヒドッ……」


「ま、マイちゃん、ドンマイ。」


シンに無視されたマイををカノンはずっと慰めていたとか。


「同じ事ばかりしていると敵と呼ぶ相手が出たときにお前は真っ先に死ぬ。」


「おっ、いきなり来るな…。」


「模擬戦だから良かったがな。」


フッと笑いシンはヨハンを見る。



「分かってるってば…にしてもお前強いな。」


「…そうでもない。俺が使える上級魔法はあれだけだ。」


「同じBランクでも飛び抜けてる気がするし。

ロックもお前の精霊にコテンパにやられてたしよ。」


2人が戦っている間、2人の精霊は銀の余裕勝ちで終止符を打っていた。


「あのアースドラゴンはまだ子どもだから成長する。そしてお前も。」


「本当か!?」


「あぁ。」


シンの言葉にヨハンは大声をあげ喜びを露にし、全ての模擬線が終了するとこの日の授業も全て終了した。











真夜中の寮のテラス。


シンとマイに銀と黒狐は雑談していた。


「ヨハンもカノンも多分良い子達だよね。力も結構伸びそうだし。」


「そうだな。俺はあの2人も気になる。」


「あの2人ってアリスとアレンだよね。」


マイの言葉にシンは頷く。


「あいつらは本来の魔力を制御しAまで落としている。魔力の流れが妙だ。」


「だね。にしてもあの2人は誰と契約したんだろ?

私達の存在は精霊界では一握りの精霊しか知らないとはいえ……黒狐に銀は今日召喚されたのが誰か知らない?」


「知らんな。」


「私もです。お役に立てず申し訳ありません。」


白銀色の狼と漆黒の狐はちょこんと座りながら話している。


この2人の本来の姿は、銀狼と9本の尾を持つ狐でランクはS。(普通の狼や狐より大分サイズが大きい。)


「この世界も平和で何より。」


「…このまま何もなければいいが。」


「神王、今は精霊界も安定している。今は心配せずに休んでいろ。」


「そうです。何かございましたら私と夫が直ぐに伝えますので。」


その後も少し雑談をした後、銀と黒狐は精霊界に戻って行った。


シンとマイも2人を見送ると部屋に戻るのだが、このときは世界に変化が起こっているなど知る由もなかった。



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