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神王と魔王  作者: りあす
3/8

-始まり-

1時間後、2人は大ホールの前で同じ真新しい制服に身を包む人という大きな部類に含まれる者達と一緒にいた。


小分類にすれば、人間・魔人・エルフ・獣人と分けられるが、基本容姿を人間として、魔人とエルフは保々人間と同じ姿。


違うとすれば、魔人は生まれつき体の1部に紋様があり、エルフは耳が長く鋭く尖っている。


そして獣人はというと、一部動物をモチーフにした人型の姿をしている。


またそれぞれの種族で得意分野も違い、人間は武器を使用した戦い、魔人・エルフは魔法を使用する戦い、獣人は肉弾戦だ。


「うっわぁ……新入生ってこんなに多いんだ。

(シン)じゃなくてシン、これから楽しくなりそうだね。」


「そうだな。」


「テンション低いぞ!せっかく2人で休みが取れたのに。」


「…2人だったらもっと静かなところで…」


「えっ?何か言った?」


「何も…。」


シンの呟きはマイに聞こえず、大きく溜息をついた。


そしてテンションの高いマイとその姿を見て呆れているシンは1ー2の列に並び、ホールの中に入る。


式は早々に終了し生徒達は教室に集まっていた。


「うっわぁー…あの人達同じクラスなんだぁ。」


「マジラッキー!」


「どうやって声掛けようか。」


クラスメイト達はシンとマイを見て話しているが、そのことに気が付いているシンと気が付いていないマイ。


そんなマイに対してシンは再び溜息をついた。


「若いのに溜息なんかつくなよ。」


不意に声を掛けられたシンが振り向くと、そこには獣人の男子生徒が立っていた。


「よっ!俺はヨハン・グラバス。虎の獣人だ。」


「…………………」


挨拶をされるもシンは何も言わない。


すると後ろからバシンと頭を叩かれた。


「こら、シン!挨拶をされたら返すのが常識でしょうが!

ヨハンだっけ?ごめんね、これ結構人見知りだから。

あ、わたしはマイ・ダークス。宜しくねっ!」


シンを叩いたのはマイは紹介をするとシンの背中をグイグイと押し出し自己紹介するように催促する。


「シン・ライト、さっきは悪かった。」


そう言いシンはヨハンに頭を下げた。


「良いって良いって。それよりも2人とも宜しくな。」


そして3人は他愛も無い会話をしていると扉が開き、担任であるクリスが教室に入ってきた。


丁度席が3人掛けだったので、ヨハン・シン・マイの順に一緒に座る。


「みんな席に着いてるわね?

じゃあ早速だけど名前を呼ばれた人は魔力を計るから1人づつ出てきて。」


クリスが言うと、名前を呼ばれた女子生徒が前に出るのだが、ヨハンはその人物を見た途端「ゲッ…」と小さな声を漏らした。


「どうかしたのか?」


シンが言うとヨハンは言いずらそうにしていたが話し出す。


「お前ら知らないのか?今出てきた奴、アリス・アガーテって言って……てかアレン・アガーテもいるし…。


2人は双子なんだが、ウェストランドのお貴族様で平民を見下してるんだよ。

ウェストランド以外には王とか貴族とかいないからあいつらからすればこの学園の人間は全て下僕だとか考えてんだろうな…。」


その時、教室の中で歓声が起こった。


「アガーテさん2属性でAランク…学生なのに…。次はアレン・アガーテ君。」


クリスが名前を呼ぶと、アリスと同じ顔立ちの男子生徒が前に立ち、魔力を水晶玉に流し込む。


すると水晶玉が黄色と緑に輝きだした。


「アガーテ君も2属性のAランク…」


「ふん…そんなことで驚くなんて先生と言えどやはり平民ですね。」


「私達はウェストランドのアガーテ家、名家の直系なのだから。

私達を平民と同じと思わないでくれるかしら。」


そうクリスにアレンが言い放ち、アリスも便乗して言うと、アレンは席に着いた。


教室はシーンと静まり返り、その静けさのまま魔力測定は続行された。


一般の学生の魔力は普通D・C…高くてB位が普通だ。


なのでクリスが驚いたのも無理はない。


因みに、クリスのような学園の先生になるにはAランク以上にならなければいけない。


「じゃあ次はシン・ライト君。」


「…俺か。」


「シン頑張れよ。」


「あんまり頑張んなくても良いからね。」


正反対の声を背に浴びながらシンは教壇まで歩いて行き、皆と同じように魔力を流し始める。


(学生は高くてもBランク…属性は1つにしておこう。)


心の中で考え魔力を調整すると水晶玉は白く光った。


「うん良いじゃない。Bランクの光属性ね。」


そしてマイと交代するようにマイが立ち上がり魔力を流す。


「ダークスさんはBランクの闇属性。光と闇、2人とも中々珍しい属性ね。」


「どうもどうも。」


クリスの言葉に笑顔でを言うとマイは席に戻った。


「おっ、次は俺か。」


ヨハンはスッと立ち上がりクリスの元へ足を進め、水晶玉に魔力を流すと水晶玉は茶色の光を放つ。


「グラバス君はBランクの土属性。何だかこのクラスは素質のある生徒が多いみたい。」


ヨハンはガッツポーズとると席に着き、それを見たクリスは話し出す。


「今日はこれで解散です。この学校は全寮制なので皆は管理棟で鍵をもらうこと。

明日の授業は魔武器精製と精霊召喚をしてもらうからね。それでは解散!」


クリスが出て行くと先ほどまでガヤガヤしていた教室が嘘かの様に一気に教室静まり返った。


そして教室に残っているのはシン・マイ・ヨハンと女子生徒。


「よお、カノン。」


ヨハンが教室に残っていた女子生徒に声を掛けると、カノンと呼ばれた女子生徒は深く溜息を吐き出した。


「ヨハンですか…私に何か?」


「お前…そんなキャラじゃないだろ?」


「あなたに対してはいつもこれです。」


カノンは冷たくヨハンに言い放つと、隣にいたシンとマイを見て笑顔で自己紹介を始めた。


「先程も自己紹介をしましたが、私はノースランドから来ました魔人族のカノン・ルストンです。以後お見知りおきを。」


「私は人間のマイ・ダークス。で、隣が同じく人間でシン・ライト。宜しくね。」


マイがカノンに自己紹介をしたところでシンが口を開く。


「そろそろ行くぞ。」


シンの言葉に頷き、4人は管理棟へ向かうことにした。


「ねぇ、寮ってどんな感じなのかなあ?」


「入学案内書によりますと……1軒家の造りで、何人かの生徒と一緒に暮すみたいですよ。」


「そうなのか。」


「てかあれが寮?」


ヨハンの指差す先には、高級住宅地のように建物が並んでいた。


「…………。」


「でかいね。」


「大きいですね。」


「ヒヤッホーゥ!!!すっげぇ、まじでこんなとこに住めんの!?」


1人だけハシャぐヨハンを見て、シンとマイの隣で何かが切れる音がした。


「ファイアーボール。」


その呟きとともに火の玉が現れヨハンに向かい飛んでいくが、それをヨハンは高い身体能力を駆使し、ギリギリのところでかわした。


「危ねぇじゃねぇかよ!!!」


「少しは大人しくしていなさい!」


そんな言い合いをする2人を見てマイが笑顔で「2人って仲が良いねんだね」と言うと2人が同時に「どこが!?」と叫んでいた。


「私達は腐れ縁なだけです。」


「こいつとは一生気が合わねぇわ。」


一回目を合わせるが、2人は「ふんっ」と顔を背けた。


"顔が赤いのにね?"


"俺は自分のことで精一杯だから他人には構ってられん。"


シンは念話で言うと管理棟を見つけさっさと中に入り、小さな小窓の付いた壁に向かい声をかけた。


「鍵はここで良いのか?」


「名前は?」


名前を聞かれたシンが素直に答えると


「405、同室者はマイ・ダークス、ヨハン・グラバス、カノン・ルストンだ。」


という声とともにカウンターに鍵が差し出され、シンは最後まで寮監の姿を見ることはなかった。


そして後ろに並んでいた3人に同室であったことを伝えた。


「俺達は同じ建物だそうだ。」


「まじ?」


「そうなんですか?」


「何か凄い運命感じない?」


シンの言葉にそれぞれ思い思いの事を言いながらこれから生活を共にする寮に向かい歩き出し、405と書かれた一軒家を見つけ、白で統一された可愛らしくシンプルな外観の家に4人は扉を開け中に入って行った。


「広いな。」


「部屋も沢山あるし男女共用って言うだけあるね。」


キッチン・リビングの他にも沢山の個室があり、4人で暮らすには広すぎるくらいだろう。


「じゃあ部屋を決めてからパーチィーしようぜ!

今回の題名は『初めまして、これからも宜しく』に決定だ!」


そう言い残し、ヨハンは一番奥にある部屋に入って行った。


「あぁいう奴でごめんなさい。いつも何を考えてるのか…。」


「良いじゃん良いじゃん。ヨハンみたいな人が1人いたら場が明るくなるし。」


「1人だったらな…。」


「お互い頑張りましょう。」


シンとカノンは同時に溜息をついていた。


そして部屋を決め、片づけをした後、4人は再びリビングに集っていた。


「ヨハン、パーティーと言っても何をするんです?」


「パーチィーだ!パーティーじゃなくパーチィー!!!!

内容はただ飯を一緒に食う。とういうことで誰か作ってくれよ。」


カノンの言葉にヨハンは言う。


「お前が用意するんじゃないのか。」


「ふふふ…俺に料理のセンスはない!!!!!!」


「偉そうに言わないでください!!」


パッコーーーン!!!


ヨハンは近くにあったスリッパで思い切りカノンに殴られました。


そしてまたギャーギャーと騒ぎ出す。


「ねぇシンが作ってあげれば?」


マイの言葉にシンは小さな声で続ける。


「人の口に合うか分らん。」


「食については万物共通よ!シンの作る料理は最高なんだから。」


「そ、そうなのか?」


少し照れた様子でシンはマイに尋ねると、マイは「うんうん」と笑顔で答える。


その答えに気を良くしたシンは軽い足取りで台所に向かう。


それを見ながらマイはニヤニヤしていた。


「シンが作るのか?」


「私手伝いに行きますね。」


「大丈夫だよ。シンは趣味を邪魔されることが嫌いだから1人が良いんだよね。

それよりか、2人に聞きたいことがあるんだけど。」


2人は納得しマイの話に耳を傾けた。


それから1時間程経ち、シンは出来上がった料理をリビングまで運んできた。


「お前ら準備できたぞ。」


丸くなり話をしている3人にシンが声を掛けるも誰も反応しない。


「へぇ、んじゃあ世界最高ランクである魔術師はこの世界に7人もいるんだね。」


「火・水・風・土・雷・闇・光の属性を極めた数少ないランクの人達です。」


「魔術師に年齢は関係ないから、もし未成年が帝であったら学校に素性を隠して通ってるかもな。」


3人は会話に夢中になり料理を持ってきたシンに気が付いていないようで、少し待ってみたものの流石のシンもイラつき小さく口を動かした。


「………ライトニングブロウ。」


シンは光の魔法名を呟き、3人のいる方向へ手を伸ばすと、それに合わせるように光の玉がフヨフヨと動き始める。


光の玉が頭上に来ても気付いておらず3人はまだ会話を続けているのだが、シンがパチンと指を鳴らすと激しく光を放ちながら玉がはじけた。


「きゃっ!」


「うおぉっ!!」


「うっきゃーーー!!!!」


カノンは驚き目を塞ぎ、ヨハンは後ろにひっくり返り、マイは床を転げ回っている。


そんな姿を見たシンは「返事をしないからだ。」とクールに言い食事の準備をし始めるのだが、その背中は笑いをこらえているのかプルプルと震えていた。


「私に光属性の魔法を掛けるなんて良い性格してるじゃない!」


「初級魔法だ…害はないだろう。」


「あーっ眩しかった…ってかこれマジでシンが作ったのか?」


マイが今にもシンに向かって何かをしようとしていた時、良いタイミングなのか悪いのかヨハンとカノンが話しかける。


「とてもおいしそうです。それに何か輝いてます…。」


実際料理が輝いているわけではないが、豪華で美味しそうに見えるという部分で輝いていると言うカノンの表現は直ぐに理解できた。


「やたっ!シンの料理は最高に美味しいんだよね。いっただっきまぁーす!」


料理を見て機嫌が直ったのか、1番早く席につきマイは料理を食べ始め、それにつられ、ヨハンとカノンもも料理を食べ始めた。


「うげっ…まじでうめぇ…。」


「こんなに美味しい料理は初めてです。」


「そうか、それは良かった。

だがヨハン、初めの『うげぇ…』って不味いみたいに聞こえるぞ。」


「違うって!まじでうまい!てか、マイが無言ですげぇ食ってるけど。」


「気にするな。昔からこいつは1つの事にしか集中出来ないから食事中は食べることしかしない。

その代わり食べ終わるともの凄い勢いで話し出すからしっかりと準備をしておくことだな。」


自分も食事を食べ始めるシンを見てカノンが言う。


「…シン君ってマイちゃんと昔から一緒にいるんですね。」


カノンの表情はニコニコというよりニヤニヤしている。


ヨハンはマイのマシンガントークに備え料理を食べており気付いてはいなかったが、シンはカノンを見てバツが悪そうに舌打ちをした。


そして料理に満足したマイのマシンガントークが始まり、その話に最後まで耐え抜いたヨハンとカノンはシンとマイに後片付けを頼み、パーチィーは終了した。


2人が部屋に帰ったのを見計らったように2人は話を始める。


「シン今日ね2人に聞いたんだけどさぁ、この世界には人類最強のSランクが7人もいるらしいよ。」


「7人か。」


「うん。7人も最強のSランクって呼ばれる人がいるのに私達はおろか精霊界のSランクが中々呼ばれないってどう言うこと?」


マイはシンに首を傾げながら言う。


「その7人が本気を出していないか、単に人と精霊の力が違うかだろうな。」


「そっか…だけど私達の力にかかれば自分達でこっちに移動できるから別に良いんだけどね。」


「そうだな。俺達は人に頼らなくてもこっちに来れる。

力がなければ王の地位にいることは出来ない。」


シンは黙々と手を動かし皿を洗い、マイは話しながら片づけを続け、終われば互いに部屋の前で別れてこれから始まる学校生活に心を躍らせつつ眠りに就くのであった。

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