プロローグ
魔法の存在する世界『ヴァゼッタ』には、様々な種族の生き物が暮らしている。
『ヴァゼッタ』に存在する『ヴァゼッタ』ではない場所。
生物の命が終わりを告げると全ては生と死の狭間、『スピリチュアルセンチュリー』へと運ばれる。
そこでは魂を審判され、人の魂で善とされたものは再び生まれ変わるために『天界』へ、悪とされた魂は『地獄』に行く。
動物や魔物は悪と判断されれば『地獄』へ行くが、善と判断されれば『精霊界』か記憶は無くなるがまた動物か魔物に生まれ変わることになる。
『地獄』は全生物共通だが、『天国』は人限定で、精霊界は動物と魔物限定ということだ。
また、天界を治める者の名は大天使セフィラム。
地獄を治める者の名は閻魔。
そして3つの世界の頂点である精霊界の2人の王である神王と魔王。
この物語はそんな『スピリチュアルセンチュリー』の審判部屋から始まる。
何も無い真っ白な部屋。
そこには天使の姿をした女性と、悪魔の姿をした男性が立っていた。
女性がパンッと1度手を叩けば何もなかった部屋に無数の光の玉が何処からか現れる。
「皆様、今から魂の審査を行いますので順番にお並び下さい。」
女性が言うと光の玉はスーッと移動し一列に並びだす。
「じゃあ最初の奴、デネブ・ルカイン……死因は魔法を使用した喧嘩に巻き込まれ死亡。17歳で将来有望な優等生か。」
「まぁ…デネブさん、あなたは自分を殺した人達が憎いですか?」
男性の話を聞いた女性は光の玉であるデネブに問うのだが、デネブは話すわけではく、光を点滅させ2人はそれを理解する。
「そうですか…そうですね。その人達もわざとではありませんし。」
「魂に嘘は見れないな。お前は右の扉を開けろ。」
男性がデネブに言うと、デネブは1回点滅し扉へ向かう。
何体か光を見た後、次の光の玉の番になった。
「ブフラード・マイハート、享年38歳。
生前、殺人・強盗など様々な犯罪に手を染めていますね。」
「決定、お前は左だ。」
その時ブフラードの点滅が激しくなった。
ここから魂の声も書いていきます。
「ほらさっさと行けよ。」
男の言葉にフブフラードは反発する。
「嫌だね。どう見たって右が天界、真ん中が精霊界、そして左が地獄だろ?
俺はまた人間てして生まれ変わりたいんだよ。」
ブフラードの言うことに2人は大きな溜息をついた。
「あなたの様な邪悪な魂の持ち主には天界に案内することは出来ません。」
「はぁ?俺のどこが邪悪なんだよ!」
「無自覚かよ。お前、同じ人を殺して天界に行けると思ってたのか?
俺らは各界の王にこの場のことを任されてんだよ。」
男性はブフラートに言う。
「知らねぇな。俺は左には行かねぇ、右に行く。」
ブフラードはそう言い張ると、2人の静止を聞かずにふよふよと右の扉に向かい進み出した。
「そうですか……皆さん、今回は申しありませんが審査はここで終了します。
また明日お越し下さい。」
女性の言葉に魂達は素直に部屋を出て行った。
「さてと…言うことを聞かないあなたの魂はここで消させて頂きます。」
「じゃあな。これでお前は地獄に行き、そこで罪を償い天界へ行けるチャンスが消えた。」
「!?」
男性の言ったことにフブラードは驚く。
そんなブフラードを見た女性が先ほどのおしとやかな話し方は何処へ言ったのかというくらいに大声で笑い出した。
「アハハハハハハッ、馬鹿みたい。
あそこで大人しくしてれば天界行きのチャンスがあったのにね。」
「おい、言葉遣い。」
「おっと…でもまぁ良いんじゃない?コイツ消えるんだし。」
「それもそうだな。」
現状の掴むことの出来ないブフラードは2人を見て頭に『?』を浮かべていた。
「特別お前だけに俺達の本来の姿を見せてやる。」
「冥土の土産ってやつ?あっ、でももう死んでるか。」
すると見る見るうちに2人の体が光に包まれる。
そして次に現れたのは天使の女と悪魔の男ではなかった。
「この場所自体が伽話だけだと思って信じてなかったが、本当に『スピリチュアルセンチュリー』があり天界と地獄があり…2つを纏める精霊界の王…。」
「よく知ってるじゃん。」
「俺達がその精霊界の王だ。」
そう言う男女の姿は、男性が白い翼を持ち、金色の瞳と髪で、全身を白の服で包んでおり、女性は黒い翼を持ち、赤い瞳に黒い髪、そして赤いドレスに身を包んでいた。
「神王と魔王…。」
「あぁそうだ。」
「それじゃあばいばぁい。」
魔王である女が笑顔で手を振ると魂はその場から消え去ってしまった。
「魂は平等だから地獄に行っても更正できたら天界に行けたのにね。」
「だな。」
「てかぁ、神の悪魔の演技微妙だったよ。」
「ふん…。」
「ねぇ、もうちょっと話して?」
「………。」
「えっ?!」
「冗談だ、帰るぞ。」
そう言う神王は精霊界の扉をくぐる。
「あっ、もーっ!
神が言うと冗談に聞こえないっつうの!」
叫びながら魔王も扉をくぐり、残された扉は音も立てずに消えてしまった。