ポイント
街を行き交う人々の頭上に、何やら数字が表示されている。
スーツ姿の中年サラリーマンは『65620』、犬を散歩させている老婦人は『91200』、子連れの親子は母親が『47319』で、その子供が『204』と、人によってその数字はまちまちだが、どうやら若ければ低く、逆に高齢になれば高くなる傾向にあるようだった。
そんな中、突然一人の老人が胸を抑え、苦しみながらその場に倒れた。どうやら心臓の病だったらしい。
「大変だ!! 人が倒れた!! 私が救急車を呼ぶ!!」
「いや、私が…。」
周りの人々はこぞって老人を助けようとする。だが、そんな騒ぎをよそに、倒れていた当の老人は、まるで何事もなかったかの様にムクリと起き上がった。
一人の男が老人に近づき聞いた。
「ひょっとして、10万ポイントを越えていたのですか?」
「ええ、つい先日ね。1UPしていたおかげで、この通り命拾いしました。」
老人はニコリと笑った。
人々の頭上に表示されている数字は『親切ポイント』と呼ばれており、人に親切にする事で加算されていく。
そして、ポイントが10万を越えると1UP、つまり自分の新しい生命が与えられるのだ。
助かった老人、その老人を助けようとした人々の理由は全て親切ポイントにあった。
場所は変わり、ある病院で親切ポイントが10万に満たなかった男が亡くなった。頭上の数値が消え、変わりに文字が表示された。
『GAME OVER』