表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

こいのぼり

作者: 藤シトウ

性表現などはありませんがBLです。 苦手な方は回れ右。 ざくざく書いたので細かい説明がなくてすいません

GWももう終盤。

部屋の窓から見える、隣家の屋根の上を泳ぐ鯉が、僕を見下ろす



はやく、はやく来てよ。

鯉の目は、一人で「彼」を待つ僕には怖くて。




「遅れてごめんね、いっくん!」

靴を鳴らして彼は叫んだ

この2階からでも分かるほど肩が上下している


「鍵開いてるから」

いらっしゃい、とも、部屋に来てとも言えないけれど

彼は微笑んで「分かった」と言って窓の景色から消えた



…急いで来てくれたんだ。


それだけで嬉しくなる自分はおかしいのだろうか。

嬉しいのに満たされない自分は。



はやく、僕の隣に来て欲しい。

来て、僕だけに笑いかけて欲しい。



ふと、思い出したのはラプンツェル。

僕が長く、不思議な力を持つ髪を持っていたら彼はさらってくれただろうか


女性の象徴、長い髪を。



「ほんとにごめんね。委員会の仕事が長引いちゃって」

僕の部屋のドアを開けたと同時に彼は謝る


違う高校に進んだ為2人で会える時間はほんの少しになった



謝らないで。

僕はただ笑って欲しいのに。



「ん。良いよ。」

ぎゅっと彼の背中に抱き着くと、彼もかえしてくれる。


「どうしたの? 甘えたい気分??」

「…そうだったら、何かしてくれんの?」

「いっくんの為なら何でもするよ、親友だもの!」


親友



彼が軽々しくそう言わない事を知ってる

だからこそ、つらい。




彼の手繰る髪は僕の短い黒髪なんかじゃないって


分かってる


理解していたはずなのに



苦しみで死んでしまいそうだった。




「…いっくん、気分悪い?」

僕を気遣うその声も

いつかは他の誰かのものになるんだ



それならもういっそ




「なぁ」



「何?」






「おまえのこときらい」





僕の体温が残る背中を、とんっ、と押す



「はやくでてって」

何かを言っている彼の声を聞かないようにしながら

うつむいた


はやく





やがて足音が遠ざかった部屋

僕はまた一人ぽっち




僕の恋は次々と溢れる水泡に融けた


染みを作るそれは醜い僕を映す




空にはためく鱗は瞬いて




消えた

閲覧ありがとうございました! ご意見など頂ければ嬉しいです(*´`*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ