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第96話〜友だち

 




【廊下】


《悠希視点》




「はぁ…はぁ…!」


「こ、ここまで来れば…!」


「……追ってきてる様子は無し…」




『23不思議』を甘く見てたわ…!


まさか本当に骸骨の標本や人体模型が動き出すなんて…!




「スイレン…アンタの事は忘れないわ…」


「いやいやいや!?スイレンはまだ死んでないんじゃないの!?助けに行かないと!」


「じゃアンタだけ助けに行きなさいよ。私と澪は恭也を助けに行くから。」


「え!?えっと…!そ、それなら私もキョーヤを優先しちゃおうかなぁ…?」




スイレンには悪いけど、あんな見た目も不気味な幽霊から助けるのはねぇ……


まだ人間と同じ姿の方がいいに決まってるわ。




「……スイレンさんを見捨てるの…?」


「見捨てるなんて人聞きが悪いわね…。まずは恭也を助けてから助けに行くのよ。」


「先に捕まってるキョーヤの方がきっとピンチだもん!」


「……でも居場所はわからないでしょ…?…だったら居場所がわかる方を優先した方がいいんじゃ…?」




うっ…!?


た、確かにその通りかもしれないけど…!




「ア、アンタもスイレンを見捨てて逃げてきたじゃない!」


「……だから今から助けに戻る…」


「行くなら一人で行きなさいよ!私は恭也の方を優先するから!」


「……わかった…私一人で行く…」




…!?


澪が一人で…!?


何で…!?


そこまでしてスイレンを助ける理由なんて無いじゃない…!



…………。



何気に私さっきから酷い事言ってる…?


別にスイレンを見捨てるつもりは無いわよ?


そこは勘違いしないように。




「……スイレンさんは私が絶対助ける…」


「澪…アンタ…」


「レイがそこまでしてスイレンを助けたがる理由って…?」


「……そんなの決まってる…」









「……スイレンさんがいなくなったらコスプレさせれなくなるもん…」


「カゲリ、さっさと恭也を探しに行くわよ。」


「了解!」


「……自分から聞いてきたのに無視…?」




無視するなって言うならデコピンでいい?




「アンタねぇ…!どうせならもっといい理由無いの!?期待して損したじゃない!」


「……人を助けるのに他に理由が必要…?」


「せめて『友達だから』とか言いなさい!」


「……じゃそれで…」


「…もういいわ。」




これ以上澪に構ってられない…


ていうか、構ってたら疲れるし。




「とりあえず、アンタはスイレンを助けに、私とカゲリは恭也を助けに行くってことでいいのね?」


「……うん…」


「だったらここから別行動……ん?」




…………。


…気のせい?


今何か聞こえたような…?




「…ねぇ?今何か聞こえたような気がしたんだけど…ユーキとレイは何か聞こえた?」


「……聞こえた…」




…どうやら気のせいじゃないようね。


もしかして…また幽霊…?




「よし!また別の幽霊が出る前にここから逃げるわよ!」


「了解!」


「……待って…よく聞いたら悲鳴に聞こえない…?」




悲鳴!?


そんなこと言われたら聞きたくないわよ!


どうせ幽霊の声なんでしょ!?




「そう言われれば………あれ?この声…どこかで聞いたような……?…あっ!これってスイレンの声じゃない!?」




スイレンの!?


あの状況で逃げてきたの!?


てっきり気絶してるかと思ったのに…




「……だんだん近づいてきてる…」


「よかったじゃない。これでスイレンを助けに行く手前が省けたんだから。」


「……いや、よくないかもしれない…」




………?




「何でよ?向こうから来てくれたなら……」


「……来てくれるのはいいけど…一人じゃない可能性もある…」




……!?


…それってまさか…!?




「あ!スイレンが来たよ!!」




カゲリが指さす方向に視線を向けてみると、確かにそこには悲鳴をあげながら走ってきているスイレンの姿があった…



そして……







『マッテクダサイ!!』


『わたしといっしょにおどりませんかー!?』




余計なヤツも2人(?)走ってきていた…!




「キャーーーーーーーーーーーーー!!?」


「ユーレイもついてきたーーーーー!!?」


「……早く逃げなきゃ…!」


「あ!キミたち…!よくもボクを見捨てていったなー!!」


「あ、あの状況じゃどうしようもないじゃない!!全滅しないようにするために仕方なかったのよ!」


「と、とりあえず元気そうだからいいじゃん?私たち心配してたんだよ?」


「うるさーい!!いつか仕返ししてやる!!」


「……幽霊をつれてきた事がすでに仕返しになってる…」


『おじょうさんたち、おどりませんかー!?』


『ワタシタチトオドリマセンカー!?』




いやぁーーーーーーーーーーーーー!!?















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【1−F教室】


《恭也視点》



「…ん?今何か聞こえなかったか?」


『そう?私は何も聞こえなかったよ?』




気のせいかな…


悲鳴のようなものが聞こえたような… 



…………。




「…人を驚かす幽霊って他にもいるの?」


『もちろん。幽霊ってのは昼間は何もできなくて退屈だからね。人を驚かすのが唯一の楽しみなの。ちなみに、私は人を驚かす幽霊じゃないからね?』




いや、幽霊っていう時点ですでに人を驚かせてると思うんだけど…


他にも普通に出てくる幽霊がいるなら、今の悲鳴は……




「…悪いけど、俺そろそろ帰ってもいいか?」


『え!?何で!?』


「もしかしたらアイツらが俺を探してるかもしれないし…。それに悲鳴みたいなものも聞こえた。もしアイツらが他の幽霊に襲われていたとしたら助けに行かないと…」




俺を置いて先に帰った可能性もあるけど…


まさかそこまで薄情なヤツらじゃないだろ。



…多分。




『アイツらって…いつもアナタをいじめてる人たちのことでしょ?そんな人たち、助ける必要ないじゃない。それよりもっとお喋りしましょ?』


「いや、悪いけど今日はもう…」


『…何で?私とお喋りするのがイヤなの?』


「そ、そういうわけじゃないけど…」




…あれ?


もしかして機嫌を損ねちゃった…?




『私はあの人たちみたいにアナタにヒドいことはしないよ?ただ、お喋りに付き合ってくれさえしてくれれば私はそれだけでいいの。だから…あんな人たちのことはほっといて私とお喋りしてよ。』


「いや、だから…その…あ、あんなヤツらでも友だちだから、困ってる時は助けてやらないと…!」


『あの人たちはアナタが困ってる時に助けてくれるの?』


「も…も、もちろん!と、当然じゃないか!あははは……」




…素直に『うん』って言えねぇ!!


助けられるよりいじめられてることの方が多い気がする…!




『…うそつき。私は昼間もアナタたちのことを見てたんだよ?あの人たちがアナタを助けることなんてあまり無いじゃない。何?ウソをついてまでここから帰りたいの?そんなに私とお喋りするのがイヤなの?ねぇ?どうなの?ほら、早く答えてよ。』




ちょ…!?


顔が近い!!

目が怖い!!




「お、落ち着け!別にお喋りするのがイヤってわけじゃない!ただ、アイツらがもし危険な目にあってたら…!」


『そんなの日頃の行いが悪いだけでしょ?』




…うん、全然言い返せない。


てか、それって俺の本心を読みとってんじゃないの?




「と、とにかく落ち着け!お喋りならまた今度…!」


『…今度っていつ?そう言ってもう二度と来ないんでしょ?そうだよね?私、幽霊だもんね?こんなヤツとお喋りするなんてイヤに決まってるよね?だってみんなそうだもん。ただ私が幽霊っていうだけで…!私だって好きで幽霊になったんじゃないのに!!』




これってもう何を言ってもダメなパターンじゃね!?


口をはさむ余裕なんか無いもん!




『…決めた。ちょっとお喋りしたら帰してあげようとしたけど、もう帰してあげない。うん、それがいいよ。そしたらアナタもあの人たちにイジメられないもんね?』


「ちょ…ちょっと待った!?何でそんなことに…!?」


『だって…私にとってアナタは大事な人だもん。アナタ、自分に霊感があるってことに気づいてる?アナタと一緒にいた人…澪ちゃんっていったっけ?あの子には私の姿が見えなかったでしょ?アレが普通なの。ああいう人に姿を見せるには…《霊力》って言うのかな?とりあえず、そんな感じの力を使わなくちゃいけなくて、それってとても疲れるんだから。…でもアナタは違う。アナタは普通にしてるだけで私の姿を見ることができるの。…まぁ、夜だけだけど。そんなアナタは私にとって大事な存在…。だから…私がアナタをあの子たちから守ってあげるよ。誰にも渡さない…。私の…大切な人…。ふふふ…!』




なんかもう悪霊になってない!?


最初のあの楽しい雰囲気がウソみたい!!


これがコイツの本性なのか!?













『…なんてね♪』




…へ?




『アハハハハハ♪冗談だって!そんな怯えた顔しないでよ!』


「…え?え?」


『どう?幽霊っぽかったでしょ?いやぁ、いきなりこんな事言ったらどんな反応するかなぁって思ってやってみたけど、予想以上♪あの子たちがアナタをいじめたくなる気持ちが少しわかったかも?』


「…ってことは?」


『ちゃんとアナタは帰してあげるって。少し残念だけど…友だちのためだもんね。我慢する。』


「そ、そうか…」




よ、よかった…


一時はどうなるかと…



…ってか幽霊がそういう冗談を言うな!!


冗談じゃなくて本気に聞こえるから!




『それにしても…アナタのあの怯えた顔…!ぷっ…アハハハハ♪ダ、ダメ!思い出しただけで…!お、お腹痛い〜!』


「…………。」




…せっかくだから幽霊に触れるかどうかも試してみるか…



…もちろんグーで!! 




「食らえっ!」



《スカッ》



『アハハハハ!幽霊に触れるわけないじゃん!バカみたい!アハハハハ!!わ、笑い死ぬ〜!もう死んでるけど!』


「この野郎…!」




完全にバカにされてる…!


お前は俺の味方じゃなかったのかよ!?




「…それ以上笑うとお経唱えるぞ?」


『あ、それはやめてくれない?もしかしたら本当に消えちゃうかもしれないから。』




一瞬で笑い止んだ!?


弱点、お経!?


適当に言っただけなのに!




「え!?幽霊にお経って本当に聞くの!?」


『わからない。わからないけど、やめてほしいな。もしそれで本当に成仏しちゃったらヤだから。』




幽霊って普通は成仏したがるんじゃ…?


…とりあえず、弱みGET!




「お経を唱えられたくなかったら俺をからかって遊ばないこと。わかったか?」


『わかってるって。今のは冗談だってば。アナタが嫌がるようなことはなるべくやらないつもりだから。だってアナタが私にとって大切な人ってのは本当のことなんだから。』




…………。


…そうやって普通に《大切な人》って言われるとなんだか恥ずかしいんだけど…




「と、とりあえず!早くこの教室から出してくれないか?もしかしたらアイツら、本当にピンチになってるかもしれないから。」




もしさっき聞こえたのが本当に悲鳴だったとしたら早く助けに行かないと…!


そのために早くドアを…!




『ドアならもう開いてるけど?』




そういうことはもっと早く言え!!













============


「じゃ俺もう行くよ。早くアイツらを探さないといけないから。」




このドアを開けるとまた普通の学校の廊下に出ることができる。


出る場所はランダムらしいけど、校内に変わりは無いから迷子にはならないだろ。


…ちなみに、出る場所がなんでランダムなのかと言うと、《その方が面白いから♪》だそうだ…



…面白いか?




『あ〜あ、行っちゃうのかぁ…。少し残念だけど…また来てくれるよね?』


「もちろん。友だちだもんな。近いうちにまた来るよ。」


『え…?』




…?

何その顔?


別に変なことは言ってないはずだけど…?




「どうした?俺、何か変なこと言った?」


『友…だち…?私が?アナタと?』


「ん?違うのか?」


『だって…私、幽霊だよ?』


「幽霊と友だちになったらダメなのか?」


『…いいの?変人扱いされちゃうよ?』


「そんなの関係ないだろ。それとも俺と友だちになるのイヤか?」




…てか、この学校にいるヤツの大半が変人だし……


特に俺の周り…




『…え……あ……うっ……』


「…ん?」


『…う……うぅ…うぇ〜ん…ぐすっ…』


「!!?」




あれ!?

泣いた!?


え!?何で!?


そんなに俺と友だちになるのイヤ!?




「お、おい!?ど、どうした!?」


『…だ…だって……ぐすっ…私のこと……ひっ……と、友だちって…………ぐすっ……うぅ………ゆ、幽霊になって……ひくっ………7、8年くらい経つけど………ひっ…そんなこと言われたの…は、初めて…なんだもん…』




…あ、嬉し泣き?


まぁ、そんなに長い間一人だったなら仕方ないだろうけど……



…でも、泣かれると帰りにくいんだけど。


何て言うか…罪悪感?


泣いてる子をおいてさっさと帰るなんて……




「と、とりあえず泣き止んでくれないか?ほら、笑顔になって!」




…って言って泣き止んでくれたら楽なんだけどなぁ…


そう簡単にいかないからなぁ…


さて、どうやって泣きやませようか……






『うん、わかった。泣いてたら《またね。》って言えないもんね。笑顔、笑顔♪』




泣き止んだ!?


早いなオイ!?


感情のコントロール自由自在なの!?




「…正直、お前の性格がいまいち掴めないんだけど…」


『そう?私って感情豊かだからね。』




感情豊かってレベルじゃないと思う…


この短時間で《喜怒哀楽》全部見れたもんな…






「…まぁ、とりあえず元気になってくれたならいいんだ。それじゃ、今度こそ行くよ。」


『うん。…またね♪』


「ああ。またな。」




どれくらいの間お喋りしていたかわからないけど、廊下に出るのが懐かしいような気がする…


…こんなに長い間しゃべってたのは初めてかもしれない。


最初は幽霊だから怖いってイメージしか無かったけど、考えてみたらもとは人間だもんな。


話してみたらけっこういいヤツだったな。



…できるなら他のヤツらにも紹介したいけど、アイツらって俺以上に幽霊苦手だからな…


そもそも俺以外に霊感あるヤツがいないとダメか…


霊感無いヤツに姿を見せるのは疲れるって言ってたもんな。


…さて、どうしたもんか…



……………。



…まぁ、とりあえず今はアイツらを探すことに集中しようか。


廊下に出たらまずは現在の位置を把握して、それからアイツらが行きそうな場所を探しに行くかな。



《ガラッ》



さぁ、この場所は一体……










「どりゃあっ!!!」


《バキィッ!!》


「ごふっ!!?」


《ドガァッ!!》


『き、恭也君!?』




ぐっ…!?


な…何が起こった!?


俺はただドアを開けただけなのに…!


何でいきなり吹っ飛ばされた!?




《…ガシッ!》



「ひぃっ!?」


「…ようやく見つけたわよ!」


「ゆ、悠希!?」




な、何でお前が…!?


てか、何でいきなり俺を攻撃する!?




「アンタのせいで私たちがどんな目にあったかわかる!?大変だったのよ!?」


「ち、ちょっと待った!!まずは落ち着いて話そう!」


「幽霊に襲われた後で落ち着けるわけないじゃない!!全部アンタのせいよ!責任とりなさい!」




た、確かに俺を探して幽霊に遭遇したんだから俺のせいかもしれないけど、悪いのはその襲ってきた幽霊じゃね!?


八つ当たりはやめてくれない!?




「ユ、ユーキ…?その中に入っても大丈夫なの?」


「……そこは《1−F教室》なんじゃ…?」


「このバカがいるんだから大丈夫に決まってるじゃない。ほら、アンタたちも早く入りなさいよ。」




カゲリと澪もいるのか…?


…あれ?

もう一人いなかったっけ?




「と、とりあえずみんな無事でよかった!ところでスイレンは…?」


「うるさいわよ!今の私の怒りは最高潮なの…!そう…誰でもいいから殴りたい程に…!」




お前、それいつものことじゃね!?


てか、幽霊よりコイツの方が怖いんだけど!?


誰か助けてっ!!






『…仕方ないなぁ。』




…え?






《…トントン…》



『…ねぇ?ちょっといい?』


「ん?何よ?アンタも加わりた……え!?」


『…う〜ら〜め〜し〜や〜♪』


「…!!??!!?!?!?!!?」


『…あれ?怖がってない?』




…いや、あまりの恐怖に声も出せないだけじゃない?


悠希の顔が今までに見たことが無いような顔になってるぞ?




「ユ、ユーキの隣に急に人が!?」


「……恭也君をさらった幽霊…!?」 


「あ〜…。お前ら、とりあえず怖がらないで落ち着いて聞いてくれ。コイツは別に悪い幽霊じゃない。普通の人間と同じようなヤツだ。」


「……どういうこと…?」


「キョーヤ…もしかしてユーレイと仲良くなっちゃったの…?」


「…まぁな。」




とりあえず事情を説明しないと…


コイツが悪いヤツじゃないってことをちゃんと説明しないと話し合いもできないし…






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    説明中…

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「…へぇ〜。お喋りがしたいだけのユーレイなんだ?それなら無害そうだね。私はカゲリ!よろしくね♪」


『うん、こちらこそよろしく♪』




…カゲリは意外とすんなり友だちになったな。


さっきまで幽霊を怖がってたくせに…



…まぁ、俺もあまり人のこと言えないけど。




「……恭也君もカゲリさんも順応早すぎ…私はまだ怖い…」


『ははは…。幽霊だからそう簡単には慣れないよね。でもいつかちゃんと慣れてほしいなぁ…』


「……努力はする…私は澪…あなたのことは何て呼べばいいの…?」


『う〜ん…。今の私に名前なんか無いからなぁ…。生前の名前も覚えてないし…。好きに呼んでくれていいよ?』


「……考えとく…」


『かわいい名前でよろしくね♪』


「……わかった…」




…名前を澪に任せて大丈夫なのか?


悠希やカゲリよりはいいだろうけど…




『…恭也君…』


「ん?どうした?」


『友だちがこんなにたくさん…私、嬉しくて……ぐすっ……』


「だ、だから泣くなって!」




それにたくさんって言っても……




「…悠希?お前はいつまで教室の隅にいるの?ほら、こっちに来いよ?イスならたくさんあるぞ?」


「イヤよ!幽霊の近くになんか絶対行かないわ!きっとそいつは私たちを油断させて…!」




何でそういう事を考えるかな…?


悠希は絶対に友だちになりそうにないな…




『ふん、私もアナタなんか嫌いだからいいもんね!』


「え?お前、悠希のこと嫌いなのか?何で?」


『だってその子、いつもアナタをいじめてるでしょ?私の大事な人をいじめる人なんて大嫌いよ。』


「べ、別にいじめてなんかないわよ!ていうか、《大事な人》ってどういう意味よ!?」


『そのまんまの意味。もしこの子に会わなかったら私はずっと一人だったから…。だから恭也君は私が守るの。』




…ちょっと大げさじゃない?


でも、守ってくれるのは嬉しいな。


これで悠希が俺をいじめる回数が減るだろうから。






「…ところで、お前らは何ですぐにここがわかった?」




ドアを開けた瞬間に攻撃されたんだから、ドアの前で待機してたはず。


…いきなり攻撃するなんてヒドいけどな。




「偶然よ。幽霊から逃げきって休んでたらいきなり目の前の壁にドアが現れたのよ。」


「……あの時の悠希さんの慌てた顔は面白かった…」


「う、うるさいわよ!!いきなりだから驚いただけでしょ!?」




…悠希ってそんなに幽霊苦手だったのか…


知らなかった…



…そんなに苦手なら何で夜に学校に来たんだよ…?




「…で、スイレンはどうした?」


「え!?えっとぉ〜…ス、スイレンは〜……」


「…はぐれたのよ。幽霊から逃げてた時にね。そうよね?」


「え!?…う、うん!そうなの!ユーキの言う通り!」



…………。



「澪、本当は?」


「……悠希さんがスイレンさんの足をひっかけて転ばせ、そのまま囮に…」


『…アナタって本当に最低ね?』


「全滅よりはマシでしょ!?私は間違ったことはしてないわ!スイレンなら逃げきれるに決まってるし!」




開き直るな!!


他の人を囮に使わないで自分が囮になれ!!




「早くスイレンを助けに行かないと…!」


「バカね。逃げたにしても幽霊に捕まったにしても、もう移動してるに決まってるじゃない。場所がわからなければ助けに行けないわよ。」


「…なぁ、コイツだけこの教室に閉じこめておいてくれない?」


『うん、いいよ。』


「ま、待ちなさい!私の話を最後まで聞きなさいよ!」




どこまでが最後なんだよ?


言い訳ならいらないからな?




「私ならスイレンの居場所がわかるのよ!スイレンと私は互いに居場所がわかるように発信機を持ってるから!」


「え!?ユーキとスイレンだけ!?何で!?」


「怖いからよ!!悪い!?もしはぐれてもすぐに合流できるようにしてたのよ!アンタたちに言うと笑われるから黙ってたの!!」




だからそんなに怖いなら夜に学校に来るなよ!!


そこまでして《23不思議》の解明したかったわけ!?




「もし他の人を囮にしてたらこうやって居場所を知ることなんて出来なかったわ!だから私の判断は間違ってなかったのよ!!」


「……別に発信機じゃなくても、ケータイで連絡してもいいんじゃない…?」


「……あ。」


「それに、スイレンもお前の位置がわかるんだろ?だったらお前が囮になっても……」


「う、うるさいわね!この2人をスイレンに任せてたら不安でしょうがないじゃない!だから私がこの2人を守ってあげようと…!」


「ユーキ…。私たちの心配をして…?」


「あ…。そ、そんなわけないじゃない!冗談よ!冗談!単純に幽霊に捕まりたくなかっただけよ!だからそんな目で私を見ないでよ!」




…一応、コイツなりに最善の策を考えたんだろうな…


やり方にちょっと問題はあるけど、今回はこれ以上咎めなくてもいいか……






「…で、スイレンの居場所は?」


「えっと…。この位置は多分《放送室》ね。どうやらあの人体模型たちからは逃げ切ったみたいね。」




放送室…?


あれ?

そういえば放送室にも《23不思議》無かったっけ?




「…澪?確か放送室にも幽霊いたよな?」


「……《深夜のラジオ放送》のこと…?」




ふざけた怪談だけど、多分それも幽霊関係の話なんだろ?


害は無さそうだけど…




『ああ。あの人たちの所なら多分大丈夫だよ。ピンチにはなってないはず。』


「ん?お前、その幽霊のこと知ってるのか?」


『直接会ったことは無いけど、たまに放送してるからね。とりあえずラジオみたいに2人で喋ってるだけの幽霊。《ゴー》と《スト》、2人合わせて《ゴースト》って言ってるお馬鹿な人たち。本名は不明。生きていた頃は放送部だったんだって。私もああやってお喋りしたいなぁって思ってたんだぁ…。でも幽霊にも縄張りみたいなのを作る人たちがいてね。この2人も他の幽霊を絶対放送室に入れてくれないの。ヒドいと思わない?ちょっとくらいお話してくれてもいいと思わない?だいたいさぁ……』




…とりあえず、他の幽霊は放送室に入れないし、そいつらも無害な幽霊だから心配ないってことだな?


未だにペラペラ喋ってるけど、関係ない話になってるからスルーさせてもらうわ。 




「無害とは言ってもやっぱり心配だからな…。早く行ってやろう。」


「……ちょっと待って…」


「ん?まだ何かあるのか?」


「……何か変な音聞こえない…?」




…そういうのやめてくれない?


また変な幽霊でも出る合図?


これ以上、幽霊の知り合いなんかいらないぞ?




《…ザザ…ザ…》




「…ホントだ。レイの言う通り、変な音が聞こえるよ?」


「…これって放送の音じゃない?」




…確かに音はスピーカーから聞こえてる…


放送って…まさか…!







『…ジャジャジャーン!!校内の幽霊の皆さん!今日も《ゴー&スト》の《ゴースト放送》の時間がやってきましたー!!』


『今夜も朝までハイテンションで行きましょー!!イェーーーッ!!みんな、俺たちのノリについてこーい!!』




こ、これが《深夜のラジオ放送》か!?


とりあえずうるせぇ!!


音量最大にすんな!!




「……最初からこのテンションで最後まで大丈夫なの…?」


『大丈夫。いつも通りなら10分で終わるから最後までずっとこんな感じだよ。』




短っ!?


朝までじゃないの!?




「…ねぇユーキ?私、ラジオって聞いたこと無いんだけど、こんな感じなの?」


「私に聞かないでよ!私も知らないわよ!」




俺もラジオはほとんど聞いたこと無いけど、とりあえず本物のラジオはここまでうるさくないから安心しろ。




『な、な、なんと!本日は特別ゲストが来ていまーす!!はい、みなさん拍手ー!!』


『拍手したところで俺たちには聞こえないけどね。それでもみんな、拍手よろしくーーーっ!!イェーーーッ!!』




…コイツら、生前にどんなラジオ放送を聞いてたんだろ?




「…今ゲストって言ったわよね?まさかそのゲストって…?」




…多分そのまさかだと思う。









『ヤッホー♪皆さんコンバンハー♪枕谷スイレンでーす♪よろしくぅっ♪』




やっぱりあのバカか!!


しかも異常にテンション高くない!?


あまりの恐怖におかしくなったのか!?




『な、な、なんと!スイレンさんは幽霊ではなく普通の生きている人間なんです!!』


『げげぇっ!?それは驚き!?今までの放送の中で一番の驚き!』


『ボクも幽霊と一緒に喋るなんて驚きだよ!でも、何かもうどうでもいいや♪今なら何だってやってやるーっ!!』



「おい!?アイツ、ヤケクソになってないか!?」


「幽霊に何度も遭遇してる内に変になっちゃったのね…」


「……今ならコスプレさせ放題かも…」


「レイ!?そういう問題じゃないよ!?」




あんなのスイレンじゃねぇよ!


早く正気に戻してやらないと…!




「よし!早く放送室に行くぞ!」


「…正直、あんなテンションの人たちの所に行くのイヤなんだけど。」


「ユーキと同意見。」


「……私も…」




そういう問題じゃねぇから!!


俺だって本当は行きたくないんだから!!




『…私だけでもついていってあげようか?』


「…いや、いい。」




…気持ちは嬉しいが、スイレンがお前を見たら逃げ出すと思うぞ?




「…お前ら、友だちを見捨てるつもりか?」


「だって〜…」


「…恭也、放送をよく聞いてみなさいよ。」




…放送?


今はそんなの聞いてる場合じゃ……






『…ってわけでボクは他の三人に置いて行かれたんだよ。きっと今頃三人とも帰っちゃってるんだよ。』


『ほほう…。その三人ってどんな人たち?』


『すぐ暴力を振るう人と、無口でコスプレさせたがる人に…一人じゃ特に個性が無い人。』



「誰がすぐに暴力を振るうって!?」


「……無口の何が悪い…コスプレだってかわいいのに…」


「個性が無いって私のこと!?ヒドくない!?確かに私一人じゃ何も出来ないけど……」




『だいたい、こうなった原因は恭也って人なんだよね。…全く、少しは自分の力で何とかしてほしいよね。一人じゃ何もできないんだから。多分今ごろ気絶してるんだよ。ホント、ダメ人間だよね。』




…………。






「…よし!スイレンを置いて帰るか!」


「賛成!!」


「とりあえず明日会ったら殴る!」


「……かわいそうだと思ってガマンしてたけど、今度から遠慮なくコスプレさせてやる…」


『アナタたち本当に友だち!?』




今回は全面的にアイツが悪い!!


あんなヤツ、助けに行く必要なんか無い!!






「じゃ、世話になったな。また近々遊びに来るよ。」


『え!?本当にもう行っちゃうの!?あの子は!?』


「学校に置いてけぼりにしておけば少しは反省するだろ。それにお前、この三人にも見えるようにずっと姿を出し続けてるんだろ?」


『…まぁね。実はそろそろ限界。』


「私は別に幽霊なんか見たくないから消えててもいいのに…」


『アナタの為じゃなくてカゲリちゃんと澪ちゃんのためよ!』


「…あっそ!」




…お前ら、本当に仲悪いな。


いつか仲良くなれたらいいんだけど…




「ほら、早くこんな所から出て行くわよ!」


「あ!?ちょっと待てって!あいさつくらい…」


「またすぐに会いに来るんでしょ!?だったら一言でいいじゃない!」




いや、一言って…




『…そうだね。うん!すぐ会えるんだもんね!友だちだもんね!それなら長い言葉なんか必要ないよね!それじゃ…《またね》♪』


「うん♪またね〜♪」


「……またね…」


「…ふん、気が向いたらまた来るわ。」


「…あぁ、またな。」


『〜♪』




…悠希もたまにはいいこと言うじゃないか。


確かに、友だち同士に長い言葉なんか使う必要なんかない。


ただ一言で十分…




幽霊とは言え、友だちには変わりない。


深夜に学校に来るのは怖いけど、できるだけ会いに来たいな…



…次はいつ来ようか…















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



『…行っちゃった。』



寂しいけど…またすぐに来てくれるよね?


その時を楽しみに待ってるよ…






『…それにしても、この子がこんなことを言うなんて思わなかったなぁ…。この子とも友だちになりたかったんだけど…考え直そうかな?』




『…でね!それだけじゃないんだよ!』




…まだ愚痴ってるし。




『はい、ストップストーップ!!このままじゃただの愚痴コーナーになっちゃいそうだからストーップ!!』


『要するに、君はそこまでその人たちのことが嫌いなんだね?なるほどなるほ…』


『いや、違うよ?』


『『…へ?』』




…?


違うって…今まで散々愚痴ってたのに?




『確かに彼女らはヒドい人たちだよ。でもね、ボクは彼女たちを嫌いじゃないよ。だって彼女たちにも優しい部分はあるんだもん。彼女たちを嫌う理由なんかないよ。時々ケンカしたりするかもしれないけど、多分ボクたちはずっと友だちだよ。』




………。


やっぱりこの子もいい子だったんだ…。


今の言葉、あの子たちも聞いてたかな…?















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「…スイレン、私たちのこと嫌いだったわけじゃなかったんだ…」


「…ふん、私たちは元から優しいに決まってるじゃない。」


「……あんなこと言って恥ずかしくないのかな…?」


「…多分俺たちがいないと思って言ってるんだろ。さすがに放っておけないから連れ戻しに行こうと思ってたけど…行きにくくなったな…」


「…そうね。まぁ、スイレンなら何とかなるからほっといても大丈夫よね。」


「じゃ、聞かなかったことにして帰るの?」


「……それがいい…」




…もし俺たちが聞いてたことを知ったら恥ずかしいだろうからな。


ここは聞かなかったことにしておいた方がいいな…




…でも、アイツが俺たちの事をそういう風に思っていてくれたのは正直嬉しいな…


今度、少しくらいのワガママだったら聞いてやるか…












「…それにしても残念ね。前半だけだったらそれを口実にいじめれたのに…」


「じゃ、前半だけ聞いて帰ったってことにする?」


「それいいわね。」


「……ナイスアイディア…」




お前ら、そんなんだから愚痴言われるんだぞ!?

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