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第95話〜捕まった少年と助けに向かう少女たち

 




『…それでね、その子ったら今度は別な人にも同じ事をしようとしてるの。バカみたいだと思わない?』


「あ…はい。そうですね…」




暗い教室の中心に位置する机…その机を挟むようにして俺たちは座っている。


まるで面接のように緊張して座っている俺に対し、反対側に座っている半透明の女の子は休み時間に友達と話すような感じで接してくる。


…半透明じゃなければ普通の女の子と同じなんだけどなぁ…


でも幽霊には変わりないんだよなぁ…



…早く誰か助けに来てくれないかなぁ?




この教室に閉じ込められた時、何も抵抗しなかったわけじゃない。


近くにあったイスや机でドアを破壊しようとしたし、窓にも同じことをした。


しかし、どちらも傷一つつかなかった…


だから俺は誰かが助けに来てくれるのを待つことにした。


この幽霊はとりあえずお喋りができればいいみたいで、さっきからずっとノンストップで話し続けている。


最初は澪と同じ話し方をしていたから無口なタイプだと思っていたが、どうやらあれは俺を騙すための演技だったらしい……


俺がここに閉じ込められてからどのくらいの時間が経ったかわからないけど、このままだと朝まで話しそうだ…


…幽霊って疲れないのかな?




『そしてまた同じようにフられてるの。もうこれで五回目よ?いい加減に学習してもいいと思わない?でもその子はまた同じことを繰り返して…結局1日でほとんどの女の子に告白したの。』




ちなみに今この幽霊が話してるのはおそらく大地のことだと思う。


女の子に告白してフられるなんて話は多いだろうが、短時間に、しかも同じパターンでフられるのは大地以外にいないだろう。






『…あ!いけない!』


「…!?ど、どうしたんですか!?」




ずっと同じペースで話し続けていた幽霊が急に大声をあげたため、俺は身構えた。


お喋りを続けている間は安全(?)だが、それを中断した時に何をするかわからないからだ。


もしかしたら俺の魂を抜くのかも…なんて考えが頭をよぎる…






『私ったら自分の話に夢中になっちゃって…アナタも私に聞きたいことがあるに決まってるよね?』


「え…?あ…。ま、まぁ…」


『じゃ質問タイムにしましょ?幽霊に直接質問する機会なんか無いんだから、いっぱい質問していいよ。』




…確かにレアな体験だけど、ちゃんて帰してくれるの?


《知られたからには生きて帰さん!》的な展開にはならないよね?




「…とりあえず俺はちゃんと現実に帰れるんですか?」


『あ、ちゃんと帰してあげるから安心して。少しの間、私のお喋りに付き合ってほしいだけなの。だって、この学校って見回りとかしてないから人に会うことがほとんど無いんだもん。一応昼も活動してるんだけど、夜と違って声も姿も出せないからつまんないし…。夜だって本気出さないと普通の人には見えないし…。でも、アナタみたいに一部の人は夜であれば普通に私の姿が見えるみたい。だから私うれしいの♪だってわざわざ本気を出す必要が無いから疲れないでお喋りできるんだもん。』




嬉しいのはわかったが、セリフが長いって!!


一つの質問に対してどんだけ多く答えてんだよ!?


…てか、幽霊って昼間も活動できるんだ?


じゃ、いつ寝てるんだろう…?


あ、幽霊は寝る必要が無いのか?



…これについて質問したらまた長くなりそうだから質問はしないけど。




「誰かとお喋りしたかったら他の幽霊とお喋りしたらいいんじゃ…?」


『それがさぁ、他の幽霊は私の話なんか全然聞いてくれないの。みんな無愛想っていうかさぁ…。無愛想な人ってイヤだよね。何考えてるかわかんないし、態度が冷たいし…。私は無愛想な人って嫌いだなぁ…。そうそう、嫌いな事と言えば、みんなテストって嫌いだよね?この学校は先生の気まぐれでテストしたりするから特に面倒でしょ?この前もいきなり抜き打ちテストしてたしね。…でもね、実は私テストってあまり嫌いじゃないんだ。それでね、私もあのテストに挑戦してみたの。こう見えても勉強には自信あるんだから!…でもやっぱり一位にはなれなかったなぁ…。アナタの友達、頭良すぎじゃない?』




…俺が質問したことよりも雑談の方が多くないですか?


てか、テストを受けたいなら俺と代わってくれない?



…でも乗り移るってのはナシで。






「…あれ?そういえば、俺たちの事知ってるんですか?」


『知ってるよ。さっきも言ったけど、私は昼間も活動してるから。アナタたちのグループが一番面白いね♪…私も生きてたらなぁ…なんてね。』


「…………。」






「…あまり聞く事じゃ無いと思うんですが…あなたは何で死んじゃったんですか…?」


『ん〜…。覚えてないなぁ…。実は私、生きていた時の記憶が無いんだよね…。未練があるから幽霊になったんだろうけど、全然思い出せないの。…もしかしたら未練が無くても幽霊になれるのかもね?』


「…成仏したいとか思わないんですか?」


『思わない。幽霊でいるよりは生まれ変わった方がいいかもしれないけど、生まれ変わったらそれ以前の記憶なんか無くなっちゃうでしょ?それって《今の私が死ぬ》ってことでしょ?それだったらこのままでいた方がいいよ。退屈だけど、アナタたちを観察してるだけでも楽しいし…。それに、今こうしてアナタと話せてるもん。私が幽霊じゃなかったらアナタと出会えてなかったんだから、幽霊でよかったと思うよ。…アナタにとっては迷惑かもしれないけど、私にとって今日は最高の日。…今までもね、こうやってこの教室に人を連れてきてお喋りしようとしたんだけど、みんな怖がってお喋りどころじゃなかったから…。私の話を聞いて、それに答えてくれたのって実はアナタが初めてなの…。』 


「…まぁ、確かに普通ならいきなり幽霊に捕まって閉じ込められたらお喋りどころじゃないですからね。…俺はヒドい目にあうことに慣れてるから、早々に諦めて開き直ってますけど。」


『…あはは♪怖くないんじゃなくて開き直ってるだけだったんだ?それじゃあさぁ、もっと開き直って敬語やめようよ。見た目的には同年代なんだし。』


「え…?でも俺より年上なんじゃ…?」


『幽霊は年をとらないの♪』


「…それじゃ、普通に喋らせてもらうか。敬語はあまり好きじゃないし。」


『私も敬語は嫌い。敬語だと壁ができちゃうっていうか…。社会的には必要なんだろうけど、私は好きになれないんだよなぁ…。まぁ、その話は置いといて…これでアナタも話しやすくなったでしょ?もっと…たっくさんお喋りしようね♪』


「そうだな…。」




…幽霊って言ってもやっぱりもともとはただの人間なんだな。


話してみれば普通にいいヤツじゃないか。


お喋りが終わった後はちゃんと帰してくれるって言ってるし、少しくらいならお喋りに付き合ってもいいか…



…アイツらに付き合って『23不思議』の解明をするよりはこっちの方がいいしな。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【理科室前廊下】


《スイレン視点》



「え〜!?キョーヤがユーレイに捕まった!?」


「……うん…」


「あのバカ…!」




いきなり澪に呼び出されたと思ったら、彼が幽霊に捕まったなんて…!


そんな…!







「せっかく彼を怖がらせようと思っていろいろ仕掛けてたのに…!」


「そうよ!あのバカは私たちの苦労を水の泡にしたのよ!」


「え!?キョーヤの心配は!?」


「……心配するふりくらいはしてほしい…」




む!?


それって、まるでボクたちが彼の心配をしてないみたいな言い方じゃない?


失礼な!


ボクだって一応彼の心配はしてるよ!



…ただ、幽霊に関わりたくないから彼を助けようとは思わないけど。




「あのバカは悪運だけは強いから大丈夫。心配するだけムダよ。」


「……相手は幽霊だよ…?」


「彼なら大丈夫だよ。だからこれ以上被害者が出る前に帰ろ?」


「…もしかして、2人ともユーレイが怖いからってキョーヤを見捨てるつもりなの?」


「「ギクッ!?」」


「……図星みたい…」




だ、だって相手は幽霊だよ!?


向こうは呪ってくるけど、こっちからは何もできないんだよ!?


そんな相手にどう戦えって言うのさ!?



…戦う必要はないけどさ。




「そうよ!怖いから帰るのよ!それの何が悪いのよ!?」


「……開き直った…」


「キョーヤを巻き込んだのは私たちなんだよ!?助けてあげなくちゃ!」


「幽霊から逃げ切れないアイツが悪いのよ!キョーヤを連れて行ったのは『1−F教室の女の子』でしょ!?あの幽霊なら私たちだって逃げきれたじゃない!」




…そういえば、前に『23不思議』の調査に来た時に出た幽霊と今回彼を連れて行った幽霊って同じなんだっけ…



…でも、ボクたちの場合は逃げたんじゃなくて見逃してもらえたんじゃないの?


途中で幽霊って事に気づいて泣いて謝ったら………あ!?い、いや…何でもないよ!?


ボ、ボクが泣くわけないじゃん!?


あははは…!




「……直接幽霊を見たわけじゃないから断定はできない…」


「でも教室は見たんでしょ!?だったら決まりじゃない!アンタだってこの話くらいは知ってるんでしょ!?『1−F教室の女の子』は誰かを捕まえてもすぐに解放してくれるのよ!」


「でも、キョーヤが捕まってから結構経つんじゃ…?」


「……幽霊に気に入られた可能性もある…」


「………!!?」×3




幽霊に気に入られたって……!


それじゃ彼は…!?




「もしそうだとしたら…!早くキョーヤを助けなくちゃ!!」


「待ちなさいよ!『1−F教室』はどこに出るかわからないのよ!?」


「でも、じっとしてられないもん!!」


「だから落ち着きなさいって!アンタ一人で恭也を助けられるわけないじゃない!」


「そんなのやってみなくちゃ…!」


「あぁもう…!私も手伝うって言ってるのよ!!そのくらい理解しなさいよ!」


「え…?ユーキも手伝ってくれるの?」


「だからそう言ってるじゃない!…べ、別にアイツを心配してるわけじゃないわよ!?ただ、万が一アイツに何かあったらイジメる相手がいなくなるというか…そ、それに他の人が悲しむじゃない!?そうなったらイヤだから手伝うだけよ!わかった!?」


「…うん!」




「…悠希も素直じゃないねぇ。」


「……真っ赤になっちゃって…かわいい…」




この瞬間をカメラで撮っといたら彼女をからかうネタになるかなぁ…


…半殺しにされそうだからやめとこうっと。




《…ポン。》



…ん?




「……もちろんスイレンさんも行くよね…?」




あ〜…


この流れだと『行きません』なんて言えないしなぁ…


ボク幽霊苦手なんだけどなぁ…




「……でもスイレンさんは別にムリして来なくてもいいんだよ…?…やっぱり自分が一番大事だもんね…」




ぐっ…!?


そんな事を言われたらなおさら断りにくく…!




「……私たちにとっては恭也君は大切な存在だけど、スイレンさんにとってはただの友達だもんね…」




…………!!


…えぇい!!




「わかったよ!ボクも彼を探すの手伝うよ!」


「……さすがスイレンさん…」




断れない状況にしたくせに…!


もしボクが幽霊に襲われたりしたらキミを恨むからね!!






「……じゃ早速だけど、コレ…」


「…?何コレ?」




紙袋…?


さっきまで持ってなかったよね…?


一体どこから持ってきたの…?



…しかも、中に入ってるのって…






「……今回は幽霊対策に巫女服を…」


「またボクにコスプレさせるつもり!?てか、巫女服を着ただけで幽霊対策になるわけないじゃん!?」


「……カレンちゃんになったらきっと不思議な力が…」


「ないって!!」 




全く…!


何で澪はすぐボクにコスプレさせたがるんだろう…?


ボクなんかより、他の人がコスプレした方がかわいいと思うのに……


あ、もちろんボクもかわいいよ♪


ただ、ボクはコスプレしたくないから他の人をオススメしてるだけ♪


…てか、澪自身がコスプレしたらいいのに…


メイド服はともかく、巫女服なら澪も似合うんじゃ…?




「……着てくれないの…?」


「絶対着ない!キミが着たら?」


「……じゃ、私が着たらスイレンさんも着てね…」


「なんでそうなるの!?ボクは絶対着ないよ!?」


「……ダメ…?」


「ダメ!」


「……どうしてもダメ…?」


「どうしてもダメ!…ってか、ボクに涙目作戦は通用しないよ?」


「……ちっ…」




そんなの効くのは男の子だけだって。


ボクにやったって完全に意味なし。




「アンタたち!いつまで話してんのよ!」


「早くキョーヤを探しに行こうよ!」


「あ、うん。ほら、とりあえずコスプレは諦めなよ。」


「…………。」




うわ!?

メッチャ落ち込んでる!?


そこまでショック!?


と、とりあえずこういう時はそっとしておいた方がいいよね!?


…うん!そうしよう!




「ほら、早くしないと置いていくわよ?」


「早く〜!」


「う、うん!今行くよ!」




落ち込んでもついて来ることはできるよね…?


早くあの2人を追いかけないと…!









《…ガシッ!》



「………?」


『……マッテ…』


「いや、早くしないとあの2人に置いて行かれるよ?話はあの2人に追いついてから……」




《……スッ…》



「………え?」




今…視界の端を何かが通り過ぎたような…



…ってあれ?


…な〜んだ、ただ澪がボクの横を通り過ぎただけか。


ビックリしちゃったじゃん。


あはははは………。


…………。







…それじゃさっきからボクの肩を掴んでるのは誰!?




「だ、誰…!?」




一緒にいた三人はボクの前を歩いている…!


だとしたら…ボクの後ろにいるこの人は…!?



…ダメだ!


絶対に振り向いちゃダメだ!!


見てはいけないモノを見てしまうに決まっている…!!



…で、でも……


もしかしたらボクたち以外にここに来ている人がいるのかもしれない…



…す、少しだけ……


ちらっと見る程度なら………!












『…オジョウサン、ワタシトイッショニオドリマセンカ?』


「ギャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?ガイコツ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?」




ガ、ガイコツが…!?


動いて…!?


喋って…!?




「う、うわぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」




と、とりあえず逃げよう!!


どこでもいい!!


早くこのガイコツから逃げないと…!!






《…ドンッ!》



「いたっ!!?」




いった〜…!


ちゃんと前向いて走ってなかったから…


澪にぶつかっ………






『おっと…?だいじょうぶですか?おじょうさん。』


「ギャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?今度は人体模型〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?」




そうか…!


ここは理科室前廊下…


そして、理科室には『人体模型と骸骨の標本が仲良くダンスしてる』って話が…!!



…って、そんな事考えてるヒマは無いよ!!




「ゆ、悠希!カゲリ!澪!誰でもいいから助け……ってもういないじゃん!?」


何で!?


さっきまで近くにいたじゃん!?


それに悲鳴だって聞こえないわけないのに…!?



…………。



…もしかして逃げた?


このガイコツと人体模型を見て逃げた?


ボクを見捨てて…?



…………。



…ヒドいよ!!


恭也は助けようとしてるのに何でボクは助けてくれないの!?


覚えてろー!!


いつか絶対に復讐してやる!!




『…オジョウサン、ワタシトイッショニオドリマセンカ?』


『いやいや、わたしとおどりませんか?』




いや〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!


誰か助けて〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!















…その頃、恭也は……







「…それでな、結局スイレンが俺の家に泊まることになって…」


『あはは♪怖がりのくせに怖い映画なんか見ちゃうから♪』


「しかも一人でお風呂に入れないとか言うんだぞ?あの時は相当困った……」


『そこまで怖がりなんだ?そんなに怖がりなら一度驚かせてみたいなぁ…』


「お、いいな。やってみたら?」


『え?いいの?』


「俺が許す!一度と言わず何回でもいいぞ。」


『あはは♪アナタって意外とヒドいね♪』


「でも、俺の家に来ないように驚かせてくれよ?もし俺の家に来たら俺が疲れるだけだから。」


『それじゃ頑張ってみようかな?』


「おう!頑張ってくれ!」






…幽霊と楽しくお喋りしていた。




       《つづく》

今回は女の子の幽霊についての説明ばかりであまり進んでませんね…     もしまだ女の子の幽霊について他に知りたいことがあったら言ってください。 できる限りで答えたいと思います。                    それでは、今回はこの辺で。           感想・評価・意見・要望・質問など、お待ちしています。

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