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第91話〜繋がれた2人(後編)

 




【体育倉庫】



《…コツコツコツ…》


《…ガラッ!》



「…………。」




…入ってきたか……


…暗いとは言え、所詮は体育倉庫。


こんなせまい所、隠れる場所なんかごくわずかしかない。


ギリギリで隠れたのはいいが、見つかるのは時間の問題かもしれない…




(…大丈夫…でしょうか?)


(さぁ…早く諦めてくれればいいけど…)




俺たちが隠れたのは跳び箱の中。


2人で入ってるから少し狭いが、ここならそう簡単に見つからないはずだ。



加賀が飼っているマウスは五匹…


早めに諦めて他のマウスの所に行ってくれるのを祈るしかない…!






「…いねぇな。あの野郎、どこに隠れてやがる…?」


((…!?))




い、今の声…!?


まさか黒城か!?


なんで黒城が俺たちを…!?




(何で黒城が…!?)


(加賀先生に頼まれたんでしょうか…?)


(…いや、もしかすると……)




確か今日の時間割は………


………!!?


しまった!!


俺らのクラス、今の時間数学の授業だ!!




(黒城のヤツ、俺が授業をサボったから探しに来たんだ!!)


(えぇ!?そんな…!?加賀先生に加えて黒城先生まで…私は何回巻き込まれなくちゃいけないんですか!?)




巻き込みたくて巻き込んでるんじゃないんだから俺に怒るな!


悪いのはこの手錠を作ったカゲリだ!




(私の平和な1日を返してください!)


(わっ!?ちょっ…!?動くなって!)


「…ん?物音…?」




…ヤバッ!


気づかれる…!?




(ヒカリ!落ち着け!このままじゃ見つかるって!)


(もうイヤです!どうせそのうち見つかっちゃうんですよ!私たちは助からないんですよ!)




この状況でヤケになるな!


とりあえず黙れって!




(私は何も悪くないんですよ!?なのに何で私がこんな事に…!)




…あぁもう!!




(いいから少し黙っててくれ!!)


(…むぎゅ!!?)




ヒカリを黙らせるため、ヒカリの頭を俺の胸に押しつける…


余計暴れるかもしれないが、片手で口をふさぐよりはこっちの方が暴れにくい分マシなはず…




「…気のせいか?何か聞こえた気がしたんだが……」




気のせいだから早くどこかに行ってくれ!!


今は混乱してるから大人しいけど、状況を把握したら暴れるかもしれないから!




「…調べるのもめんどうだな。…よし、アイツは加賀が捕まえた時に罰するようにして、後はのんびりサボるか。」




『お前もサボってんじゃねぇか!!』ってツッコミてぇ…!!


コイツに人を罰する資格なんてねぇじゃん!




「それまでにどんな罰を与えるか考えておかないとな…」




考えるな!!


そんなの考えるヒマあったらちゃんと授業しろよ!!



…てかもうさっさと行けよ!


そろそろヒカリが…!!




(…ん〜!ん〜!)


(もう少し…もう少しだけガマンしてくれ!)




足音から判断して、出口に向かっているのはわかるが、もう少し早く出て行ってくれ…!


ヒカリを抑えつけるのもそろそろ限界…!










《ガラガラガラ…バンッ!》


《…コツコツコツ…》




…行った?


行ったな?


隙間から覗いても人影は無し…っと。




「…よ、よし。もう大丈夫みたいだ。」


「…ぷはっ!き、きき…恭也さん!?」


「ちょっと待った!!怒る気持ちはわかるが声量は抑えてくれ!」




いきなりあんな事をしてしまったんだ!


怒られて当然のはず!




「殴られる覚悟は出来ている!気の済むまで…!」


「…………。」







「…大丈夫です。怒ってませんよ。」




…へ?




「すいません…。つい取り乱してしまいました…」




いや…え?


本当に怒んないの…?


悠希なら確実に怒るような事をしちゃったんだよ…?




「い、いや…!謝るのは俺の方…!」


「いえ、恭也さんの行動は正しいです。…悪いのは私の方なんです。」


「いやいや!他にもっといい方法があったかもしれないし…!俺の方が悪かったよ!」


「いえいえ、あの状況ではベストな選択だと思います。…ちょっと恥ずかしかったですけど…。とにかく、悪いのは私ですよ。」


「いやいやいや、俺の方が…!」


「いえいえいえ、私の方が…ってなんか長くなっちゃいそうですね。」




『いや』や『いえ』が増えてくだけだもんな…


理由なんかもう考えられないし…




「…じゃあ、2人とも悪いって事にしておきましょうか?」


「…そうするか。」




いつまでもあんな議論を続けても意味ないからな…


2人とも悪いって事でチャラにしておいた方がいいだろう。



…ヒカリがいい子でよかったかも…
















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


…さて、問題はこれからどうするかだな… 




「…ヒカリ、何かいい案は無いか?」


「そう言いましても…今は授業中ですし…」




それが問題なんだよな……


授業が終わるまでは下手に動き回るわけにいかないし…




「…双子のテレパシーとかで何とかならないのか?」


「そんなものありませんから。」




…非現実的なモノを造るくせに何でそういうのは現実的なんだよ?


いや、ヒカリに文句言ってもしょうがないけどさ。




「でも、私がいない事を心配してカゲリちゃんの方から探しにくるかもしれませんよ?」


「…今はその可能性に賭けるしかないか。」




アイツなら授業を抜け出す事くらい簡単にできるだろ。


確かアイツ『ズル休みシリーズ』っていうの持ってたよな?


どんなモノか知らないけど、それを使えば教師も騙せるだろうし……



…………。






「…ってちょっと待て!?アイツ普通に授業抜け出せるじゃん!!」


「…?はい、カゲリちゃんなら楽勝ですよ。」


「だったら今すぐ呼べよ!」


「え!?で、でも…もしマジメに授業を受けていたとしたら電話なんか…!」




アイツがマジメに授業を受けるわけないだろ!!


カゲリの事を信じたい気持ちはわかるが、アイツの性格上そんな事はあり得ないから!


それに……




「電話じゃなくてメールでいいだろ!」


「あ!その手がありましたね!!」




普通、すぐに気づくと思うんだけど…?


『天才』と『天然』は紙一重…?




「…ですが、一つだけ問題があります。」


「…?なんだ?」




くだらない事だったらデコピンするからな?




「実は……」









「…私、メールは左手じゃないと…イタッ!?」


「この状況でそんな事言ってる場合か!!多少遅くなってもいいから早く送れ!!」


「う〜…!言ってる内容が矛盾してますが、わかりました…。なるべく急いで送ります…」




今までヒカリと二人きりになることがほとんど無かったから気づかなかったけど、ヒカリって相当天然じゃん!?


いや、わざとボケてんのか!?


どっちにしても、今の状況じゃ不安要素なんだが…!


…大丈夫なんだろうか…?










「…送信、っと。これで大丈夫ですね♪」


「…このまま何も起こらなかったらな。」




今の俺の心配点は3つ……



まず、未だにこっちの様子を見ている『加賀のマウス』…


まさか盗聴器なんか仕掛けられてないだろうな…?



次にヒカリの『メールの内容』…


大事な部分とか抜けてないよな…?


ちゃんとカゲリに俺たちの居場所が伝わってればいいんだけど…



そして、この状況を見た『カゲリの反応』…


こんな場所でヒカリと二人きりなんだもんな…

(しかも手をつないでるし…)


妹として、動揺しちゃうかもしれないよな…


ちゃんと冷静に話を聞いてくれるかな…?




…これら3つが無駄な心配で終わればいいんだけど…









「…!恭也さん…何か聞こえませんか…?」


「…聞こえるな…だんだん大きくなってるような…?」




《………ドドドドドド!!》




…うわぁ……


超イヤな予感…


普通、『急いで来て』って言ってもこんなに全力でダッシュするような音で来るわけないよね?


しかもさぁ…


俺の気のせいならいいんだけど……




…足音が複数な気がするんだけど…?




「…とりあえずドアを開けるぞ?一応…逃げる準備はいいか?」


「は、はい…!」




このドアの外がどうなっているのか…


カゲリだけだといいんだけどなぁ…




《…ガラッ!!》




「…あ!キョーヤとヒカリ見っけ♪」




ドアを開けた先にいたのは、俺たちを見つけて喜んでいるカゲリと……




「…あ!銀髪君と双子ちゃん見っけ♪」




…獲物を見つけて喜んでいる加賀がいた……


やっぱり厄介なヤツもつれてきちゃったか…




「このバカ!!何で加賀も連れてくるんだよ!?」


「バカじゃないもん!勝手についてきたんだもん!」


「…確かにカゲリちゃんもターゲットですからね。」


「ふふふ♪全員捕まえてあげる♪」




俺の3つの心配事がどれも当たらなかったのはいいが、余計に悪い状況になってないか…!?




「それっ♪」



《…ズドォーーン!!》



『キャーッ!?』×2

「うわぁっ!?」




容赦なく爆撃かよ!?


一応言っとくが、今は授業中だぞ!


もっと静かにしろ!!



…そんな事言っても無駄なんだろうな…




「…カゲリ!とりあえずこの手錠を外してくれ!!」


「手錠…?ああ、カードキーのやつ?」


「それです!早くカードキーをこっちに…!」



《…ドカァーーン!!》



「キャーッ!?」


「させないわよ!!」




この…!


こうなったらこっちからも反撃するしか…!




「お前ら!何か武器みたいなモノとか無いのか!?」


「そんな危ないモノ持ち歩いてるわけないじゃないですか!」


「私持ってるよ?」


「カゲリちゃん!?」




さすがカゲリ!


こういう時だけはほめてやる!!


さぁ!

一体どんな武器を…!?






「食らえ〜!!『煙くん五号』!!」



《ボフッ!》




それ最初にヒカリが使った発明品じゃねぇか!?


武器じゃねぇじゃん!?


てか二〜四号は!? 




「…ふふふ!私に同じ手は通じないわよ!こんなの、呼吸を止めてれば問題ないわよ!」




…『喋る=呼吸する』じゃないの?


もしかして息止めたまま喋ってんの?


…アナタは本当に人間ですか?




「さぁ、覚悟しなさ…いたっ!?」


「…?」




…痛い?




「私たちの発明品を甘く見ないでよ。『煙くん五号』は『まきびし付き』なんだから!」




…だんだん忍者に近づいてると思うのは俺の気のせい?


その内『分身の術』とか使わないだろうな?




「とりあえず加賀が身動き取れない今がチャンスだ!早くカードキーを…!!」




《ズドォーーン!!》



「どわぁっ!?」


「…アナタたちこそ私を甘く見ない方がいいわよ?歩いたら危ないなら、歩かなければいいだけの話よ。」




くそっ…!


確かに攻撃だけなら動かなくてもできる…!






…でも、それって追いかけてこれないって事だよな?




「よし!逃げるぞ!」


「そうですね。無理にあの人と戦う必要はありませんし…」


「戦略的撤退〜♪」


「なっ…!?待ちなさ…痛っ!」




…『煙くんシリーズ』って時間稼ぎにいい道具かも…


やっぱりあとで何個かもらっとくか。




「逃げるなんて卑怯よ!正々堂々かかってきなさい!」




いや、別にそんな流れになってないから。


俺たちの優先事項は常に『逃げる』だから。




「もう俺たちを追っかけて来ないでくださいね〜。」


「…くっ!」




さて、後はカゲリに手錠を外してもらうだけ。


一時はどうなるかと思ったが、何とか最悪の事態は免れたな…


よかったよかった…
















「…おい、俺の事を忘れてないか?」




…へ?




「…!恭也さん!前を見てください!!」


「なっ…!?ウソだろ…!?」




加賀に気を取られていたせいで気づかなかったが、俺たちの逃げようとした先には、さっき俺たちの近くを捜索に来たくせに『めんどうだから』という理由で調べないで帰った男……黒城が立っていた。




「な…ななな…何で黒城先生がここに…!?」


「俺がどこにいようが俺の勝手だ。…それより神堂、俺の授業をサボるなんていい度胸してんじゃねぇか?」




…それも『めんどうだから』って事で無かった事にしてくれません?


ダメ…?




「とりあえずお前には罰を与えないとな…」


「ち、ちょっと待…」







「ちょっと待ってください!恭也さんは何も悪くないですよ!」




ヒカリ…!?




「…あん?」


「恭也さんは加賀先生に追われていたから授業に出れなかったんです!だから見逃してあげてください!」


「そ、そうだ…です!キョーヤは何も悪くないもん…です!」


「お前ら……」




まさか俺を庇ってくれるなんて…!


久しぶりに涙が出そうなくらい嬉しい…!




「…理由なんか知るか。サボった事に変わりはない。」


「…どうしても恭也さんに罰を与えるんですか?」


「…ああ。」


「そんな…キョーヤは悪くないのに……」




カゲリ…そんなに悲しい顔をするなよ…



…なんか死刑判決を出されたみたいだから。




「…わかりました。どうしても恭也さんに罰を与えると言うのなら…」


「ヒカリ…?」




ま、まさかお前…!















「この手錠を外してからにしてください!」




いやいやいや!?


ちょっと待てコラ!?


お前、一人だけ逃げる気か!!?




「私は黒城先生の授業に関係ないんですからいいですよね?」


「…まぁな。とっとと外せ。」


「ち、ちょっと待った!!そこは『私たちを倒してから…!』って流れじゃ…!?」


「女の子に守られるなんて恥ずかしいと思わないんですか?」




いや、俺の友人関係の中で女子に勝てる男子なんかいないよ!?


どう見ても女の子の方が強いよ!?




「カゲリちゃん、カードキーをください。」


「カゲリ!絶対に渡すな!」


「え!?どっち!?」




手錠が外れた瞬間、俺の処刑が確定する…!


それならこの手錠を外すわけには…!




「今日のおやつ、私の分もあげますから。」


「わ〜い♪」




子供か!?


そんなモノでつられるな!!




「カゲリ、渡さなかったら今度クレープおごってやるよ!だから…」


「あ、ゴメン。もう渡しちゃった♪」




手遅れかよ!?


渡すの早くない!?


そんなにおやつが欲しいのか!?




「ま、待てヒカリ!まだ外しちゃ…!」


「えい!」



《…シュッ》

《…ピピピピピ…》

《…カチャッ》



「やった♪外れました♪」


「2人ともおめでと〜♪」




めでたくねぇよ!!


当初の目的ではあったが、こんな時に外されても全然嬉しくない!




「…さて、それじゃ早速……」


「ま、待っ…!ほ、ほら!あそこに加賀先生がいますよ!決着を着けた方が…!」


「…めんどくせぇ…」




何でそっちをめんどくさがるんだよ!?


俺の処刑の方をめんどくさがれよ!




「あ、それじゃ私たちはこの辺で。」


「キョーヤ、頑張ってね〜♪」




お前ら…


もし生きて戻ってきたら絶対に復讐してやるからな…!!




「…別れは済んだな?さぁ、覚悟しろ!」




あれで別れが済んだとでも!?


てかマジで殺す気!?




「待ちなさい黒城!その子は私の獲物よ!」


「…コイツは俺のクラスの生徒だ。お前に渡すわけないだろ。」




俺の味方って加賀だけかよ……


どっちに捕まってもダメなんだからもう好きにしてくれ……






「お前はそこの双子でガマンしろ。」


「「………え?」」


「…そうね。ならそうさせてもらうわ♪」


「…えぇぇぇ!?」


「カ、カゲリちゃん!逃げますよ!」


「う、うん!」


「待ちなさい!逃がさないわよ!」


「「いやぁぁぁ!!」」




天罰だ!!


ざまぁみろ!!







「…さて、うるさいヤツもいなくなったし…」




…いきなりですか?


もう少し他人の不幸の喜びに浸らせて…


あ、いや!

俺はそんな最低な人間じゃないからな!?


勘違いしないように!!




「早速お前に罰を与えるんだが…ここじゃいろいろ問題があるからな。場所を移すぞ。」


「…え?あ、はい…」




場所を移す…?


え?

ただの処刑じゃないってこと?




…っていうか………







…これってまさか次回に続くの?

まさかの『続く』です。 次回は多分ヒカリの出番は無いと思います。(あったとしても少しだけ)               短いですが、今回はこの辺で。          感想・評価・意見・要望・質問・助言など、お待ちしています!!

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