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第87話〜素直な気持ち

 




「銀髪君!待ちなさい!今日こそ私の実験体になってもらうわよ!」


「そんな言葉を聞いて待つわけないじゃないですか!?」




いきなりですが、ピンチです。


久々に加賀先生に会ったと思ったらいきなりこんな状況に……


緋乃姉妹もアンタのターゲットなんだから、そっちに行けよ!




…とりあえず、次の曲がり角を曲がって近くの教室に逃げ込むか…


時間稼ぎにはなるだろう…




《…スッ》



「…!!あぶっ…!?」


「…え?」




《…ドンッ!!》



「うわっ!!」

「キャッ!?」




いたたたたた……!


曲がり角で人とぶつかるなんて…


ベタな展開だな…


予測しておけばよかった…




「す、すみませ…!?」


「…痛いわね。」




ゆ、悠希!?


マズい!?


ぶつかっちゃいけないヤツとぶつかった!!


殺される!!?









「…次からは気をつけなさいよ。」


「…え?」




起き上がってそれだけ言うと、悠希はそのまま去っていった…



…???


怒らないの…?


機嫌がよかったのか?


…いや、そうは見えなかったよな。


なら何で…?






「…そろそろ捕まえてもいいかしら?」


「…!!」




しまった!


今はそれどころじゃ……!!


イヤァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!?















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「…というわけで、何か悩みでもあるのか?」


「…どういうわけでいきなりそんな事聞くのよ?」




タイミングよくチャイムが鳴ってくれたおかげで何とか加賀から逃げられたが、あの時の悠希の様子はおかしい…!


これはきっと何かあるに違いない!




「ん〜、そうね…。まぁ、悩みなんてレベルじゃないけど、昨日から両親が旅行に行っちゃったのよね。しかもイグを連れて…。」




あ、そういえば今日はイグいないな。




「お前は行かなくてよかったのか?」


「結婚記念日の旅行だから、私がいない方がいいんじゃない?」




…イグは?




「…とりあえず、私には悩みなんて呼べるモノは無いわよ。親がいなくても問題ないんだから。余計な心配はいらないわよ。」


「…そうか。」


「分かったら少し寝させなさいよ。眠いんだから。」


「あ、あぁ…」




…俺の思い過ごしか?


まぁ、何でもないならそれでいいんだけど…













〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【昼休み】



「…やっぱりお前何か隠してるだろ?」


「…しつこいわね。何でもないって言ってるじゃない。」




いや、やっぱり今日のお前はおかしい。


体育の時、いつもなら率先して行動していたけど、今日は列の最後の方にいたし…


休み時間にも寝てばかりだったし…


授業中でも寝てばかりだったし…

(…あ、これはいつも通りか?)



それに…




「お前が昼にパン一個だけっておかしくないか?」




前に俺の弁当を盗んだ事もあるのに…




「…ダイエットよ。」


「あのなぁ…ウソつくなって。」




いつものお前と違うってのはもう明らかなんだから。




「悩みがあるなら俺が……」


「…うるさいわね!私がどうしようとアンタには関係ないでしょ!」




いや、まぁ…確かに俺には関係ないかもしれないけど…


だけどさ……




「悠希…俺は……」


「いいから私の事はほっといてよ!」



…………。



「…わかったよ。」




…本人がいいと言うならこれ以上はどうしようもない…


相手を不快にするだけなら大人しく引いた方がいいだろう…




「…俺はこれから他の教室に行くけど、お前は?」


「…寝てる。」


「そうか…。もし何かあったら……」


「だから何も無いって言ってるじゃない!!早くどっかに行っちゃいなさいよ!!」


「あ、あぁ…」






…………。



…何だろう…


いつもはあんな風に脅されたら怖いと思うはずなのに…


今日の悠希は……













============



「…バカ。」




口から勝手に出たその言葉…


それは誰に対しての言葉…?


何度も同じ事を聞いてくる、うるさいヤツに対して…?



それとも…



素直に言えない自分に対して…?






「……悠希さん…?」


「…え?」




すぐ近くからの声に驚いて顔を上げると、いつからいたのか知らないけど私の顔を覗き込んでいる澪がいた。




「……何かあったの…?…恭也君に対して怒鳴ってたみたいだけど…」


「…澪には関係ないわよ。」


「……そう…」


「…………。」




澪って相変わらず何考えてるかわからない表情かおしてるわね…


…私と違って…




「……もし恭也君に伝えたい事があったら私が言ってあげるけど…?」


「え…?」


「……ケンカしたらどちらかが謝らないと…」


「…ケンカじゃないわよ。あのバカが邪魔だから追い出しただけよ。」


「……へぇ…その割には元気ないけど…?…本当は悲しいんじゃないの…?」


「…!?」




悲しい…?


私が…?




…………。






「…澪、アンタは勘違いしてるわ。」


「………?」


「私は悲しくなんかないわ。…ただね……」


「……ただ…?」


「…辛いのよ。」


「……それって似たような感情じゃない…?」


「…まだ勘違いしてるの?」


「……え…?」


「私が言ってるのはね……」













============



「…というわけなんだよ。」


「そうなんですか…」 




わからない事は一人で考えてもどうしようもない。


わからなければ、他の人に聞くのが一番だ。


ヒントくらいは手に入るかもしれない…




「確かに、悠希さんと廊下ですれ違った時も違和感がありましたね…」


「やっぱりか…」




俺の気のせいなんかではなく、他の人も悠希の異変に気づいているみたいだ…




「…ヒカリはどう思う?」


「そうですね…。私が考えられる可能性は2つです。」




…2つの可能性?




「一つは恭也さんが思ってるような『悩み』ですね。普段は強気ですが、悠希さんも女の子です。悩みの一つくらいあってもおかしくありません。」




…アイツ、悩みがあっても人には相談しないタイプだからな…


少しくらいは頼ってくれてもいいのに…




「…もう一つの可能性は?」


「恭也さんの話を聞く限りだと、こっちの方が可能性が高いと思いますが…もしかすると……」


「もしかすると…?」







「…恭也!!」


「!!?」


「大地さん!?」




何でこんなタイミングで…!


少しは空気を……



………?



…様子がおかしい…?


何かあったのか…?




「恭也!今すぐ俺について来い!」


「…?どうした?何かあったのか?」










「悠希が倒れた!!」


「なっ…!?」


「悠希さんが!?」




アイツが…!?


ウソだろ…!?
















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【保健室】



「……とりあえず、こんなもんかな…?」




私の額に、冷たいタオルが乗せられる…


ひんやりしてて気持ちがいい…




「…悪いわね。」


「……悪いと思うなら目の前で倒れないでほしい…本当にビックリした…」


「…仕方ないじゃない。私だって倒れたくて倒れたんじゃないんだから…」




ちょっと無理しすぎたみたいね…




《ガラッ!》




「悠希!?大丈夫か!?」


「…うるさいわね。」




ドアが勢いよく開いたかと思うと、そこから息を荒くした恭也が入ってきた…


わざわざ走って…?




「…心配しすぎよ。ただの貧血だから気にしないで。」


「貧血…?」


「えぇ…少し休んだら治るわ。わかったら早く教室に帰りなさいよ。」


「本当に貧血なのか…?」




…疑ってるわね。


本当、心配性なヤツなんだから…




「…そうだって言ってるじゃない。」


「……ウソはよくない…」


「!?」




しまった…!


澪に口止めしてない!




「澪…?やっぱり違うんだな?」


「……貧血なんかじゃない…悠希さんは…」


「澪!そのバカに言う必要は無いわよ!」




恭也には絶対言っちゃダメ!


コイツには心配なんかかけさせたくない!






「悠希…もう隠さなくてもいい…」


「…?」


「澪、熱は測ったのか?」


「……無理やり測った…」


「ちょっと…!?」


「何℃だ?」 


「……40℃弱…」




バレた…!


心配かけないように隠してたのに…


一番バレたくない相手にバレた…!




「…いつからだ?」


「…朝からよ。」


「何で隠してた?」


「…私の勝手じゃない。」


「バカが…」




…そんなのはわかってるわよ。


でも、言えなかった…


言ったら恭也に迷惑をかけそうで…






「……恭也君、そろそろ授業が…」


「…ほら、早く行きなさいよ。私は大丈夫よ。寝てれば治るから…」




そう…


こんなの、ちょっと寝てればすぐ治る…


だから私の心配なんか……







「…そんな様子じゃ信じられねぇよ…」




え…?




「澪、先生に俺と悠希は早退するって言っといてくれ。」


「な…!?何を言って…!?」


「……いいの…?…次は数学だよ…?」


「悠希は熱があるんだからいいだろ。俺は後で罰を与えられてもいいから。」 


「恭也!アンタ…!?」


「いいからお前は休んでろって。」




何考えてるのよ…!?


私なんかのために…




「……わかった…カバンは後で持って行ってあげる…」


「あぁ、頼んだ。」 




澪が保健室から去り、ほんの少しだけ沈黙が流れる…


ほんの少し…


だけど、私にとってそれはとても気まずい時間だった…


恭也を巻き込んでしまった罪悪感…


それが私の心を締め付ける…




「…さて、確か親は旅行に行ったんだよな?だったら今日は俺の家に泊まれよ。その方が看病しやすいし、もし明日も調子が悪いようなら無理やり休ませれるしな。」


「…好きにしなさいよ。」


「なら帰るぞ。…ところで、歩けるか?」


「それくらい大丈夫よ…」




正直、体が重い…


でもこれ以上迷惑なんかかけられない…


そう思って無理やり体を起こす…




「あ…!?」


「危ない!」



《ガッ!》



「大丈夫か!?」


「う、うん…」




…やっぱり体が言うことを聞いてくれない…


恭也が支えてくれなかったら、今にも倒れちゃいそう…




「やっぱり辛いみたいだな…。」


「…そうね。」




恭也の家は学校から歩いていける距離にある。


でも、今の私にはその距離も果てしなく遠い…






「…おんぶして連れて行くしかないな。」


「そうね……ってちょっと!?何を…!?」


「これ以上悪化させるわけにはいかないだろ。いいから早く乗れよ。」




だ、だからって…!


それって…恭也と密着するって事でしょ!?


そんな事…!




「い、いいわよ!肩を貸してくれるだけで!」


「お前なぁ…こんな時くらい人を頼ったらどうだ?」




そういう問題じゃなくて…!




「ほら、早く。」


「っ〜〜〜〜!!?」




こ、これ以上迷惑をかけるわけには…!


そ、そうよね…!


仕方ないわよね!?




「…わ、わかったわよ!」




恭也の背中にしがみつく…


手が震える…


体がさっきより熱くなってる気がする…


…これって余計に悪化してるんじゃない?




「…ちゃんとしがみついてないと落ちるぞ?」


「わ、わかってるわよ!少し黙ってなさい!」




さっきより体を密着させる…


恭也の体温を感じる…


…暖かい……


心臓の動きが早まる…


…聞かれないわよね?




「…よし、行くぞ。」


「え…?キャッ!?」




急に恭也の体が動き出した。


屈んだ体勢から戻っただけだけど、その動きにバランスを崩した私は恭也の体を強く抱き締める……




「き、急に動かないでよ!このバカ!」


「悪い悪い。さ、早く帰るぞ?」


「…う、うん。」




…調子は相変わらず悪い。


でも、さっきより楽な気がする…


ベッドで寝てるよりも…恭也の背中にいる方が心地いい……


恭也に迷惑かけたくなかったけど…






…たまにはこういうのもいいかもしれない…















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「…悠希?」


「……………すぅ…すぅ…」


「…寝たのか。」




背中から聞こえる寝息……


熱もあったし、相当辛かったんだろう…


こんな時くらい素直になればいいのに…




「心配や迷惑をかけさせたくないだなんて思うなよ…俺とお前の仲だろ?」




こんな事、寝ている悠希に言ってもしょうがないだろう…


…いや、起きていたら逆に言えないかもしれないな…




「俺にとっては、無理しているお前の姿を見る方が辛いんだ…」




コイツは本当に辛い時は誰にも教えないで自分で何とかしようとする…


俺はそんな悠希の姿を見ている方が辛い…




「迷惑をかけたくないなら、素直になってくれよ…」


「……すぅ…」




背中から聞こえてくるのは寝息だけ…


当然、返事なんか帰ってこない…



…でも、それで十分。


あくまでこれは独り言だ。


返事なんか期待していない。




「…次からは素直に言えよ?」




返事がない相手にそう言い、自分の家へと向かう…


親がいないって事は、恐らく朝食も食べてないだろう…


帰ったらすぐにおかゆでも作ってやるか…















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「…いやよ!」


「…は?」




家に帰り、悠希をベッドに寝かし、おかゆを作り、悠希を起こし…までは問題が無かった。


しかし…




「私はおかゆ嫌いなのよ。」


「………。」




まさかの嫌い発言…


こんな時に好き嫌いすんなよ…




「あのなぁ…お前、今日はパン一個しか食ってないんだろ?嫌いでも食わないと…」


「寝るわ。」




おい病人!


寝るのはいいが、食ってから寝ろ!


栄養がないといつまでたっても治らないぞ!




「起きろ!そして食え!」


「何よ!寝てたらよくなってきたんだから食べなくても大丈夫よ!」


「いいから食え!」


「…むぐっ!?」




悠希の口の中に無理やりおかゆを突っ込む…


少し強引だが、こうでもしないと食べないだろうからな…




《…もぐもぐ…》



「…あれ?おいしい…?」


「当たり前だろ。俺が作ったんだから。ほら、もう一口。あーん。」


「………あーん。……熱っ!?」


「あ、まだ熱かったか?どれ、もう少し冷まして…ほら、あーん。」


「あーん……」







「…ってさっきから何やらせてんのよ!?」


「え…?」




何って…おかゆを食べさせてるだけだけど…?




「わざわざそんな事しなくても自分で食べれるわよ!こ、こんなの…!どこのバカップルのする事よ!?」


「いや…病人にするのは普通の行為だと思うが…?」


「うるさいわね!後は自分で食べるわ!」




…まぁ、自分で食べれるだけの元気があるならいいけど。


てか、思ったより元気だな?


…また無茶してなければいいんだけど… 













〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「…ん……ぅ…ん…」




…あれ?


私…………



…あぁ、そうか……


今、恭也の家にいるんだっけ…?




「ん…?起きたか?調子はどうだ?」


「…問題ないわよ。」


「正直に言え。」




…やっぱり見透かされてるわね。


正直に言うしかないみたいね…




「…頭が痛いわね。それとまだダルいわ…」


「そうか…。腹減ったろ?うどんでも作ってやるよ。その間に熱を測ってろ。」


「そういえば…さっき食べたばかりなのに…今何時よ?」


「2時だ。」




2時…?


あれから一時間も経ってないじゃ…



……………。






「…一応聞いておくけど、午後よね?」


「いいや、午前だ。よっぽど辛かったんだろうな。あれからずっと寝てたよ。」




ずっと!?


私がここに連れてこられたのって昼だったんじゃ…!?



いや、それより…


こんな時間なのに何でコイツは起きてんのよ!?


ま、まさか……!?




「アンタまさか…!?私が寝てる間ずっと起きて…!?」


「…そんな事気にするなって。いいから熱測ってろよ。」




気にするなって…


そんなの無理に決まってるじゃない!




「何考えて……ムギュ!?」


「起き上がるなって。ほら、体温計。」


「こ、こら!離しなさいよ!?」


「なら大人しく寝てるか?」


「う…わ、わかったわよ!」




恭也に軽く押さえつけられただけなのに身動きできない…


思ったより体調が悪いみたい…


…大人しくするしかないようね…




「…悪いわね。」


「だから気にするなって。」


「でも…」




こんな事してもらってるんだから…




「全く……いいか?悪いと思うなら最初から俺に相談しろ。隠そうとして無理するからそこまで悪化したんだ。」


「だ、だって…」


「それに、いつもの行動の方が俺に迷惑をかけてるだろ。」


「う…!?」




た、確かに…!


否定できない…!




「悪いと思うなら普段の行動を…」


「あ、あ〜…ね、熱測り終わったわよ?」


「…逃げたな?まぁいい。何℃だ?」


「え〜と…37℃よ。」


「…本当か?」


「本当よ!ウソなんかつかないわよ!」


「ならいいけど…」




…四捨五入したら38℃だけどね。


37℃台だからいいわよね?




「もう少しの間安静にしてたら大丈夫かな?とりあえず、明日は学校休めよ?」


「…仕方ないわね。」




これ以上悪化しちゃったらまた迷惑だもんね…


しょうがないわね…




「朝食と昼食は作っておいてやるよ。食欲が無くても無理して食え。…本当に無理な場合は栄養ドリンクでも飲んでくれ。」


「…わかったわ。」




栄養ドリンクは好きじゃないんだけど…


いざとなったら飲んだって事にして捨てちゃおっと。




「他に要望は?」


「…特に無いわ。」


「そうか。なら明日は黙って寝てろよ。」


「…うん。」







…………。







「………ねぇ、恭也……」


「…ん?どうした?」













「…………ありがとう…」






…いつもよりはるかに小さな声…


でも、今の私にはこれ以上の声は出せない…


多分恭也には聞こえてないと思う…


でも、それで十分…


こんなの、いつもの私なら絶対に言わない言葉なんだから…






「えっと…?今なんて言った?」


「…何でもないわよ。それよりお腹が空いたわ。まだできないの?」


「あ、あぁ…あと少しかな?もう少しガマンしててくれ。」


「わかったわ。」






…こんな時ぐらい素直になってもよかったんだけど…


でも、やっぱりダメね……



……………。



…いつか……


いつか素直になれたら……


その時は自分の気持ちをちゃんと伝えよう…










…恭也への想いも一緒に…
















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【数日後…】



「あーーーー!!俺の弁当が空っぽに!?」




いつの間に!?


こんな事をするのって…!




「悠希!またお前が犯人か!?」


「…ごちそうさま。おいしかったわよ。」




この野郎…!


風邪をひいてた時はおとなしかったのに、完治した途端にこれかよ…




「…はぁ…。お前を責めても弁当は戻って来ないもんな。仕方ない、購買にでも行くか…」




…って言っても、あそこは戦場だからな…


今から行って食料をゲットすることはできるんだろうか…?










「…恭也、ちょっと待ちなさい。」




…ん?


早く行かないと昼飯抜きになるのに…




「何だよ?早く行かないと……」



《…スッ》




へ…?


何これ…?


…………。


ま…まさか……!?



弁当箱…!?




「ゆ、悠希…!?」


「…よ、よく考えたら今日はお母さんが作ってくれた弁当の他に、自分で作った弁当も持ってきてたのよ!さ、さすがに全部は食べられないからアンタに一つ分けてあげるわよ!」


「え…?」


「ち、ちゃんとお母さんの言うとおりに作ったから食べれないモノじゃないわよ!…ちょっと見た目は悪いけど…」


「えっと…?もらって…いいのか?」


「いいって言ってるじゃない!それともいらないの!?」


「あ…いや…。もらっておくよ。ありが……」


「れ、礼なんかいらないわよ!余っただけなんだから!言っておくけど、次は無いわよ!?」


「あ、あぁ…」




…………。



これって…この前のお礼のつもりか?



…………。




…本当、素直じゃないよな。


最初から素直に言えばいいのに。




…ま、そこが悠希らしいんだけどな。












============



「…どうなのよ?」


「ん…?」


「味よ、味!どんな感じって聞いてるの!」


「あぁ、おいしいよ。この前の調理実習とは比べものにならないな。」


「あ、当たり前よ!これが私の本当の実力なんだから!」




…よかった…


なんとかうまくできたみたい…


お母さんに何回も止められてなかったら、また倒れられたかもしれないけど…


…………。


いつか1人で作れるようにならないといけないわね…






「………悠希…」


「…何よ?」


「ありがとうな。」




〜〜〜〜!!!?


な…な…!!?




「な、何言ってんのよ!?礼はいらないって言ったでしょ!?」


「お前がいらなくても俺は言いたいんだよ。」


「そ、そんなの…!」




礼を言わなくちゃいけないのは私の方なのに……!


それなのにこのバカは…!




「…?どうした…?」


「何でもないわよ!このバカ!!喋ってるヒマがあったら早く食べなさいよ!」


「あ、あぁ…」




全く……












……………。




………ありがとう…恭也…




いつか…


いつか絶対に私の気持ちは伝えるから……




それまでは……




「…お?この玉子焼きおいしいな。」


「だ、黙って食べなさいよ…!」






…それまではこのままでいさせてね?

遅くなりましたが、リクエスト作品です。     悠希の恋愛は前から考えていたんですが、文章にすると上手く書けませんね…             とりあえず、今回はこの辺で。          感想・評価・意見・要望・質問・助言など、お待ちしています!!

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