第86話〜悪夢の調理実習(後編)
「…さて、お前らはどれくらい料理できるんだ?」
あまり期待はしないけど…
最低でも一人くらいは料理できたらいいんだけどなぁ…
『全く♪』×3
「女の子の為なら何でも作れるぜ!!」
…あ、やっぱりダメだった。
「…悠希?お前、料理できるって言ってなかったっけ?」
「目玉焼きくらいなら作れるわよ。」
「あ、それなら俺もできる。」
お前らなぁ…
「ボクはカップめんなら作れるよ♪」
もっとダメなヤツがいた!?
マシなのって大地だけじゃん!?
この班、大丈夫か!?
「…思ったより最悪な班ッスね。」
「…スイレンには一番上手いヤツと組ませて、すごく簡単な料理を作らせるか…」
もう一度説明しておくが、料理はこの8人の中からさらに2人一組に分け、それぞれの組が一品作らなくてはいけない。
つまり、合計で4品になるって事だ。
そして、作ったモノは班のみんなで食べなくてはいけない…
そう…
例え、それがどんなにマズくても…だ。
「……一番上手い人って千秋君…?」
「まぁ、よっぽど自信があるみたいだからそうだろうな。」
「…え゛!?」
…何だその反応?
ほめられてるんだから喜べよ。
「い、いや…千秋はそんなに上手くないッスよ!」
…あ、そういう事か。
「千秋…スイレンと組みたくない気持ちはみんな同じだ!しかし、誰かが犠牲にならなくちゃいけないんだ!」
「それってボクに失礼じゃない!?」
そう思うなら、目玉焼きくらい作れるようになれ!
「で、でも…!」
「……大丈夫…辛い目にあうのは恭也君も一緒だから…」
…はい?
どういう事?
「澪…?それってどういう意味だ?」
「……恭也君は悠希さんと組むんでしょ…?」
「え゛!!?」
「…何よその反応?」
「い、いや!何でもありません!」
待て待て待て!?
何で俺が悠希と組む事になってんだよ!?
「澪!?なぜ俺が悠希と組む事になるんだ!?理由を説明してくれ!」
「……悠希さんの暴走を止められるのは恭也君だけ…」
いやいやいや!!?
俺も止めれないから!!
「……残りは何とかなりそうな人たちだから、くじで決めても大丈夫だよね…」
「え…ちょ…!?マジで俺は悠希と!?」
「…恭也?私と一緒になるのがイヤなの?」
「…!?い、いやいや!悠希と一緒になれるなんて嬉しくて!」
「…まぁ、いいわ。ちゃんと作り方教えなさいよ。」
「はい!!」
一応やる気はあるみたいだけど…
…大丈夫かな?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
…その後の話し合いにより、ペアと担当料理が決定した。
…残りの4人はくじで決まったんだけどな…
料理に関しては、何となくシンプルそうな料理を選んだ…はず。
ちなみに、ペアと担当料理は……
・スイレン&千秋⇒サラダ(+ドレッシング)
・恭也&悠希⇒オムライス
・大地&クラスメートA⇒中華スープ
・赤樹&澪⇒デザート(プチケーキ)
…だ。
料理の相性とかはあまり気にしないでくれ。
…それより……
「…ったく、何で俺がお前なんかと組まなくちゃいけねぇんだよ…」
「……それはこっちのセリフ…最悪な気分…」
「最悪ならさっさと保健室にでも行け。そして二度と俺の前に現れるな。」
「……そういう意味で解釈するなんて、やっぱりバカなんだ……」
「…マジで消してやろうか?」
「……手品師でもない限りムリ…」
「テメェ…!」
まさに一触即発!?
このペア、大丈夫なのか!?
そもそも、くじで決めたのが間違いだろ!?
「…クラスメートA、お前の組が一番マトモなんだからおいしいモノを作ってくれよ?」
「マトモ…?あれもマトモなのか?」
クラスメートAが指差した場所には落ち込んだ様子の大地が…
「…澪ちゃんと一緒の組になりたかった…」
…………。
「…訂正しよう。とんでもないハプニングが起こりにくい組だから頑張ってくれ。」
「…まぁ頑張るよ。そっちの組も頑張ってくれよ?」
…とりあえず、『食べ物』というジャンルに入るモノを作れるように頑張るよ…
【調理開始!】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【スイレン・千秋組】
《千秋視点》
作るモノ:サラダ(ドレッシング付き)
「…それじゃ、スイレンは野菜を切って盛り付けてくれッス。千秋はドレッシングを作るッスから。」
さすがにただ切って盛り付けるだけのサラダは簡単すぎるッスからね。
ドレッシングも手作りなら文句ないッスよね。
「え〜!?ボクもドレッシング作りたい!」
「…作り方知ってるッスか?」
「適当に調味料を混ぜたらできるんじゃないの?」
…スイレンには絶対に作らせたらダメッスね。
「作り方を知らないならダメッスよ。」
「…ケチ。」
味覚を破壊されるくらいならケチって呼ばれる方がまだいいッスよ。
「とりあえず、野菜を軽く洗ってから適当に切って盛り付けてくれッス。それだけならスイレンにもできるッスよね?」
「バカにしないでよ!それくらい楽勝だよ!」
…その言葉が真実なら楽なんスけどね。
時々、スイレンの様子を見ながら……
「…っていきなり何やろうとしてるんスか!?」
「ん?何って…まずは野菜を洗うんでしょ?」
「野菜を洗うのに、食器用洗剤は必要ないッスよ!?」
「あ、そうか。食器用じゃなくて、普通の石鹸を使わないと…」
「水洗いでいいッスから!!」
…これは片時も目が離せないかもしれないッスね。
「…洗い終わったら、キャベツを千切りに…」
「わかった。キャベツをみじん切りに…」
「千切りって言ったばかりじゃないッスか!?」
「冗談だってば♪」
「…キャベツとレタスを間違えてるのも冗談ッスか?」
「え!?キャベツとレタスって同じ野菜じゃないの!?」
…ギブアップしてもいいッスか?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【恭也・悠希組】
《恭也視点》
作るモノ:オムライス
…サラダ組は大丈夫なのか?
早くも千秋が戦意喪失してるけど…
……………。
と、とりあえず!
俺たちも調理を開始するか!
メインとなるものを作るんだから、失敗は『なるべく』無いようにしないと!
まずは材料を……
「恭也、材料と調味料は持ってきておいたわよ。」
「お、サンキュー。…………え!!?」
「なんで驚いてるのよ?」
「い、いや…」
まさか悠希が自発的に行動するなんて…!
「いくら私でも材料くらいは知ってるわよ。あまりバカにしないで。」
「す、すまん…」
「それより、せっかく料理を覚えるチャンスなんだからしっかり教えなさいよ?」
「あ、あぁ…」
意外と優秀!?
しかもやる気あり!
これは予想より遥かにいい結果になりそう!
「…でも、お前が料理を覚える事に積極的なのは意外だな?」
「…それってどういう意味よ?」
「い、いや…その…お前のイメージに合ってないというか…」
「う、うるさいわね!勘違いしないように言っておくけど、私が料理を覚えたいのは『自分でおいしい料理を作れるようになりたい』ってだけで、決して『女の子らしい所を見せたい』とか『誰かに手作り料理を食べさせてあげたい』なんて思ってないんだからね!わかった!?」
…なるほど、本音がよくわかったよ。
だからやる気があるのか。
「…一応聞いておくけど、料理ができるようになったら誰に食べさせてあげたいんだ?」
「だ、だから違うって言ってるじゃない!」
「いや、そうじゃなくて…。ただの質問だから気軽に答えてくれ。」
「そ、そんな……言えないわよ…」
…ボソッ
(…『恭也に食べさせたい』なんて……)
「…ん?今なんて……?」
「〜〜〜〜〜!!?な、何でもないわよ!!」
「…?」
まぁいいか。
とりあえずやる気はあるみたいだし、さっさと調理開始するか。
「…ところで、お前が持ってきたのは本当にオムライスの材料か?」
「…?当たり前じゃない。」
まぁ、だいたいは合ってるんだが…
「…『タバスコ』、『一味唐辛子』、『豆板醤』、『キムチの素』……これらは一体何に使うんだ?」
「オムライスは赤いじゃない。」
「あれはケチャップだ!!」
「色が同じならいいじゃない。」
「お前は激辛のオムライスを食いたいのか!?」
「甘いものを混ぜればちょうどよくなるんじゃない?」
「いいから黙ってケチャップ持って来い!!」
「…誰に命令してるのよ?」
「ゴメンナサイ!!私が自分で持ってきます!!」
やっぱり悠希と組まされない方がよかった!
教わる態度じゃないし、自分の意見は曲げないもん!
しかも、思考がありえない!!
今後、アイツには料理させたらダメだ!
とりあえず!
今日は命がけで悠希の行動を見張らないと!
せめて意識が残るような料理を…!
それが俺の任務だ!!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【澪・赤樹組】
《澪視点》
作るモノ:デザート(プチケーキ)
…やっぱりあの2人は問題児みたい…
一緒の組にならなくてよかった…
「…おい、他の組の様子なんて見てなくていいからさっさと作れ。」
…こっちの組も最悪だけどね。
「……人に指示しないで自分でやったら…?」
「俺はさっきからやってる。やってないのはお前だ。」
あ、ホントだ…
もうこんなに作業が進んでるなんて…
意外…
「……料理得意なの…?」
「いや、料理はそこそこだ。」
「……ならお菓子作りは得意なの…?」
「…まぁな。」
…へぇ……
「……似合わない…超がつくぐらい似合わない…」
「うるせぇ!!」
「……ついでに言うなら、エプロン姿も似合わない…笑っちゃうくらい似合わない…」
「うるせぇって言ってんだろうが!!黙って作ってろ!!」
お菓子作りが得意なんて…
不良のくせに…
…………。
……でも…
「……お菓子作れるなら、今度クッキー焼いてきて…」
「あ?何でだよ?」
「……食べてみたいから…」
「何で俺がお前なんかに……」
「……お願い…」
「…ちっ、金は取るからな。」
「……それでもいいよ…」
「……『不良がクッキー作ってきた』なんて面白い話題になりそうだし…」
「ざけんな!!絶対に作って来ねぇからな!」
「……残念…」
まぁ、元から期待はしてないけど。
…でも、最初は本当に作ってきてくれそうだったよね…
意外と優しいんだ…
千秋君が慕う理由が何となくわかったかも…
…私はこの人の事大嫌いだけどね。
「いいからさっさと手伝え!」
…そろそろ命令形にムカついてきたかも…
「……命令形は好きじゃない…ちゃんと言い直して…」
「…あ?」
「……聞こえなかったの…?…耳腐ってるの…?…それとも、理解するだけの能力も無い…?」
「この…!黙って聞いてたら調子に乗りやがって…!」
「……『黙って』?…あまり黙ってるようには見えなかったけど…?」
「…ケンカ売ってんのか?」
「……解釈はご自由に…買うとしたらお金払ってね…」
「…上等!!入院費くらいは払ってやるよ!!」
入院させるつもり…?
入院費も安くないのに……
あ、そういう問題じゃないよね…
…それにしても、本当に単純な人…
もう少し遊ばせてもらおうっと…
…他の人には迷惑かもしれないけど、いいよね…?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【大地・C.A組】
《C.A視点》
作るモノ:中華スープ
…………。
俺、とんでもない班に入っちゃったかも…
あっちの組は今にもケンカしそうな雰囲気だし、他の2つの組はハプニングが連発してるし…
「…澪ちゃんかスイレンちゃんと一緒だったらよかったのに…」
…パートナーはさっきからこんな調子だし…
「な、なぁ?俺たちもそろそろ作り始めないか?」
「…やる気でねぇ…」
や、やる気って…
「…スープなんか簡単にできるじゃん…お前1人で作ってくれよ…」
「ペアになった意味ないじゃん!?」
ま、まずい…!
このままじゃ本当に作らないで終わってしまうかもしれない…!
それはそれでいいかもしれないけど…
でもそうなったら怒られるような…
どうしよう…?
……………。
…こうなったら奥の手を!
「…な、なぁ?」
「…何だよ?」
「周りの様子を見てみた所、マトモな組は無いみたいなんだよ。…そこで、俺たちの組がウマい料理を作ったらどうなると思う?きっと女の子もお前の事を……」
大空の性格は知っている!
(いや、知らないヤツはいないだろう。)
こう言えばきっと…!
「………。」
「お、大空…?」
沈黙…?
ダメだったのか…?
…それなら次は………
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーー!!!!」
「うわぁっ!!!?」
な、何だよ!!?
かなりビックリしたんだけど!?
ほら、周りのみんながこっちを見てるじゃないか!
「っしゃあ!!やる気出てきたぜ!!確かにその通りだ!!女の子の為にも最高の料理を作ってやるぜ!!」
…噂通り、単純なヤツだな。
まさか本当に上手くいくとは……
「俺に任せておけ!世界一ウマい料理を作ってやるぜ!」
…いや、作るのはスープだけでいいんだけど…
とりあえず、やる気を出してくれてよかった…
後は完成を待つだけ…
…って、1人でやろうとするなよ!?
俺も手伝わないとダメなんだって!!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【完成&食事タイム】
…疲れた。
まさか一品の料理を作るだけでこんなに疲れるとは…
「…おつかれッス…」
「…お前もな…」
隣には千秋もグッタリとした様子でイスに座っている…
…珍しく被害者側だからな…
でも、俺は日常茶飯事だぞ?
「…一応聞いておくッスけど、味見はしたッスか?」
「…してない。っていうか、したくない。」
「…それってどういう意味ッスか?」
「…途中から悠希が味付けし始めた。」
「あ、終わったッスね。」
まさにその通りだよ…
ちょっと目を離した隙に勝手にやってるんだもん…
諦めるしかないだろ…
「…そっちはどうなんだ?」
「サラダはまぁまぁッスね。…ドレッシングは二種類あるッス。」
「二種類…?…ま、まさか!?」
「そのまさかッスよ。片方はスイレンが作ったものッス。」
ロシアンルーレット!?
ハズレを引いたら死ぬんじゃない!?
「マシなのはスープとプチケーキくらいッスね。」
「…むしろ、こっちがメインなんじゃないかって思えるよな。」
澪と赤樹はチームワークが心配だったけど、なんとか作れたみたいだし、スープは大地の異様な頑張りのおかげでウマそうにできている。
…お前らがオムライス作った方がよかった気がするんだけど?
「…よし、キレイに並べられたわね。」
「それじゃ早速食べちゃお〜♪」
…お前らは気楽でいいな。
自分たちが作ったモノがどんな味なのか知らないからか?
…よし、お前らは毒見役に決定!
「…お前ら、腹減ったろ?先に食ってもいいぞ。俺たちもすぐに食い始めるから。」
「そう?それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうわね。」
「いただきま〜す♪」
悠希とスイレンが最初に食べようとしたのはオムライス…
危険物の内の一つだ…
《パクッ》
さぁ…反応は…!?
「…うん、まぁまぁね。」
「そう?ボクはおいしいと思うけど?」
…どうやら大丈夫のようだな。
さすがに変なモノを混ぜてはいないのか…
…自分も食べるモノなんだから当然か。
「…大丈夫みたいッスね。」
「そうだな…。俺たちも食い始めるか?」
「そうッスね。」
…一応、アイツらの味覚が狂ってないか確認しないとな。
まずはオムライス…
《パクッ》
…………。
…うん、本当に大丈夫みたいだな…
悠希が勝手に行動していた時は焦ったけど、これなら…………
「…ごはぁっ!!?」
「大地!?」
なっ…!?
何が起こったんだ!?
普通に食事していたはずなのにいきなり倒れるなんて…!?
「大地!しっかりしろ!何を食ってそんな状態に!?」
「…キミ、食べ物が原因って決めつけないでよ。」
いや、だって他に思い当たる原因が無いもん。
「……オ……オムライスに…………」
オムライス!?
でも、俺が食っても特に問題は…
…まさか、ちゃんと混ぜてなかった?
異物が混じってるのと混ざってないのがあるのか!?
「悠希!?お前、オムライスに何を入れた!?」
「赤みが足りなかったから…」
最初に持ってきた激辛調味料か!?
そんなもん入れんな!
「……恭也君、あーん…」
「毒見させようとするな!拒否するに決まってるだろ!!」
「……じゃ千秋君…」
「千秋もイヤッスよ!!自分のを食べるのも怖いんスから!」
「…そこのお前、毒見しろ。」
「えぇ!?何で俺が!?」
たった一品でパニックになるなんて…
とりあえず、俺は当たりだったみたいでよかった…
「……私のと交換しない…?」
「だからヤダって!!毒見させるなら大地に…」
「ぐふっ!!?」
「今度はクラスメートAかよ!?」
お前もハズレのオムライスか!?
「…おい?コイツ、サラダ食って倒れたぞ?」
サラダ…?
クラスメートAのサラダを見てみると、そのサラダにはドレッシングが……
…間違いなくスイレンが作ったドレッシングだな。
「クラスメートA!しっかりしろ!せめてどのドレッシングを使ったか教えてから気絶してくれ!!」
「…………………。」
「クラスメートAーーーーーーーーーー!!!!」
くそ…!
また犠牲者が…!
せめて手掛かりさえ残してくれれば…!
「……ドレッシングは二種類…見た目は完全に同じ…見分けるのはほぼ不可能…」
「…あれだけの破壊力があるのに見た目を同じにできるのってすごいよな。」
「え?もしかしてボク才能ある?」
…毒殺の才能ならな。
「…なぁ、サラダに何もかけないで食べるのはダメなのか?」
「……サラダはドレッシング付きって条件だから…」
やっぱりダメか…
「このスープおいしいね♪」
「そうね。大地が作ったとは思えないわね。」
毒殺犯ども!!
呑気にスープ飲んでんじゃねぇ!!
お前らのせいでこっちはパニックなんだぞ!?
「…あれ?兄貴、サラダは…?」
「…食った。」
なにぃ!?
お前、いつの間に…ってあれ?
皿がずいぶんキレイだけど…
ドレッシング使った?
「…ドレッシングはどうした?」
「…一滴だけでもいいだろ。」
その手があったか!!
ズルいと思うが、今回は文句言わない!
俺も同じ方法で…!!
「あ、手が滑った♪」
《ドボドボドボ…》
「ギャァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!?」
ちょ…スイレン!!?
何してんのお前!?
「お前わざとだろ!?何でこんな事を!?」
「まぁまぁ♪赤樹みたいな卑怯なマネなんかされたら面白くないじゃん?確率は2分の1…生きるか死ぬか…まさにロシアンルーレット!!」
「ふざけんな!!殺傷力を自覚してんなら自分で食え!」
「もちろんボクも食べるよ?キミにかけたのとは違うドレッシングをね♪」
「…へ?」
言った瞬間、スイレンは本当に自分のサラダにドレッシングをかけ始めた…
「どっちのサラダを食べる?キミに選ばせてあげるよ。」
「お前…分かってるのか?自分が被害にあうかもしれないんだぞ?」
「大丈夫だよ♪キミの運の無さに期待してるから♪」
…あ。
そう言われると生存確率が一気に低くなる気がする…
「……スイレンさんの勝ちに三百円…」
「…同じく、百円ッス。」
「…五百円。」
「全く…これじゃ賭けにならないじゃない。私もスイレンに千円だけど。」
勝手に賭けんな!
てか、俺の味方が1人もいない!?
「…えぇい!こうなりゃヤケだ!俺はこっちのサラダだ!」
「じゃボクはこっちだね♪『せーの』で食べてよ?」
「わかった…!」
「「せーの……」」
《パクッ》
「…………。」
「…………。」
「…うっ…!?」
手に持っていた箸が落ちる…
顔がどんどん青ざめていく…
そして……
《バタンッ!》
ついに気を失って倒れてしまった…
……スイレンが♪
「うぉぉぉ!!やった!生き残れた!!」
「……珍しい…」
「あり得ないわね…」
俺も信じられない!!
もしかしたら神様からのご褒美…!?
とにかく、信じれば願いは叶うんだ!!
嬉しい!
今までで一番嬉しい!
「……おめでとう…商品として、これを…」
「サンキュー♪」
澪がくれたのは、プチケーキ。
本当は8個作る予定だったが、材料が余ったから1個余分にできたらしい。
「…つまんない結果になっちゃったわね。」
「ハハハ♪たまにはいい思いをしてもいいじゃないか♪」
《…パクッ》
「…ごふっ!?」
なっ…!?
これは…!?
「……こんな事もあろうかと、ちゃんとトラップは作っておいた…」
「さすが澪ね。抜かりないわ。」
ま、まさか…こんなトラップがあったとは……
油断…し……た………
「これで被害者は4人ね。」
「…お前ら、目的は何だよ?」
「目的?そんなの無いわよ。強いて言うなら面白ければいいのよ。」
「最悪だな…」
「…一応聞いておくッスけど、もうトラップは無いッスよね?」
「……多分…」
「超不安ッス!!」
「あのなぁ…この女は俺と組んでたんだ。変な事してたら俺が止めてる。」
「で、でも兄貴が見てない時に…」
「俺が気づかないとでも思うか?大丈夫に決まってるだろ。」
《パクッ》
「………ぐっ!!?」
「兄貴!?」
「……私に不可能は無い…」
「…澪って何気に最強?」
「……そんなことは無い…」
「兄貴ぃーーーーー!!?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【調理実習結果】
オムライス⇒一部に激辛物混入。被害者一名。
サラダ⇒片方のドレッシングが有毒。被害者二名。
スープ⇒異常なし。
プチケーキ⇒一部に異物混入。被害者二名。
被害者計五名。
生存者計三名。
…調理実習の結果じゃねぇ!!